208.覚えなくとも読める財表-11

2015年2月14日

第10回 覚えなくとも読める財務諸表 -損益の読み方- その1

今回は損益の読み方です。
損益とは、会社の営業成績ことですが、『損益計算書』で見ます。
さて、損益計算書のどこを見ていますか? 売上高ですか、それとも利益ですか。
ポイントは下から読む、「営業成績の結論から見る」ということです。

 

1.損益計算書は6つの成績を表している
損益計算書は、あなたの会社の営業成績を6つの観点から表示しています。結論順に説明すると次のとおりです。

(1)当期純利益
これは税金を納付したあとの最終の利益です。但し、注意したいことは「ここから借入金の返済をする」ということです。
借入金返済はこの当期純利益からします。従って返済金以上の当期純利益を確保できなければ資金繰りは悪化するということです。
たとえば年間120万円の借入金を返済する会社は120万円以上の当期純利益がないと、会社の資金である現預金を増やすことはできません。当期純利益の累計額である純資産の『繰越利益剰余金』を増やすことができていなければ、会社の仕事は上手く行っているとは言えません。繰越利益剰余金は会社の営業履歴です
創業時は別にしても、事業が5年、10年と経っているのであれば、最低でも毎年、資本金の5%程度の繰越利益剰余金を積み増しできるように経営しなければなりません(経・営・を・す・る・のです)。原点に返って考えてみてください・・。
誰しも、事業を立ち上げたときは、事業で損をしようとは思わず「儲けよう」と思って起業しているわけです。
ですから、経営者たるもの、もう少し当期純利益あるいは繰越利益剰余金に関心を持つ必要があります
また、当期純利益を残すためには適正な納税をしないと残りません。その意味では、過度な”節税”は禁物です。
企業の社会的使命は雇用と納税にある」と心得て、立派な事業にして行きましょう!
なお、当期純利益が少ないということは、その前の『税引前当期純利益』が少ないということになります。

(2)税引前当期純利益
税引前とは、税金を納付する前の当期純利益という意味です。
税引前当期純利益は経常利益に事業以外で生じた利益と損失を加減して算出します。したがって、税引前当期純利益が少ないということは、臨時的な損失(会計では特別損失と呼んでいます)があったか、その前の『経常利益』が少ないということになります。

(3)経常利益
経常利益とは、事業の経常的な利益という意味です。したがって、通常、事業ではこれぐらいの利益は出るという指標となります。
しかし、経常利益は常に経営に工夫を重ねて行かないと減少する傾向があります(当たり前ですが)。その意味では常に経営に工夫を重ねていくことが重要であり、それが経営者の最大の役目です。しかし意外と工夫を重ねている経営者は少なく、いままで通りの経営を積み重ねている経営者が多いのが実情です(ぜひ、このコラムを読まれた皆さん、工夫に富んだ経営をやりましょう!)。
経常利益は営業利益に営業外で生じた収益と費用(主に受取利息・支払利息です)を加減して算出します。経常利益が少ないということは営業以外の費用が多く生じたか、そうでなければその前の営業利益が少ないということです。
支払利息を減らすためには、借入金の返済計画の変更を金融機関に依頼する(このことをリスケといいます)ことが考えられます。それ以外にはその前の営業利益を増やすしかありません。 目指すべき経常利益額は売上高の10%です。
なお、リスケをするためには自社でその後の見通しを立てることが大事です。それによって金融機関も納得して「協力しましょう」ということになります。一般的にリスケにあたっては会計事務所はあまり当てになりませんが、しかし一部のTKC会計事務所ではリスケに強い(金融機関の信頼も厚い)会計事務所もあります。

(4)営業利益
営業利益とは、営業ベースの利益です。この営業ベースの利益に関しては業種格差はありません。あくまでも各企業の努力・工夫の賜物で、多くにも少なくにもなります。それは世の中を見ればわかりますよね。同じ業種だからすべてが赤字ではありません。設けている会社もあれば、そうでない会社もあります。すべては努力と工夫、特に中小企業の場合は経営者の手腕次第です。
この営業利益は、売上総利益(粗利)から経費(販売費と管理費)を差し引きして算出します。営業利益が少ないあるいは赤字ということは経費が多いということです。特に管理費を中心に削減しなければなりません(順番は管理費の削減、販売費の削減という順です。そのために会計はわざわざ経費を販売費と管理費に分けているのですよ、ご存知でした!?)。大企業はそのためにすごく努力をしています。私たちはその意味では甘いところがありますので、大いに見習いたいところです。
それをそれでも足りない場合は売上総利益を増やすことを考えます(売上総利益は会社の努力で増やせるのです!)。

(5)売上総利益
売上総利益とは売上から原価を差し引きした利益です。粗利とも言います。営業利益や経常利益は赤字になっている会社が多くありますが、この粗利が赤字になっている会社はありません。単純に言えば100円で仕入れ、90円で売るような会社はないからです。
この粗利の利益率は業種業態によって大きな差がありますから、自社の商売における粗利益率を掴む必要があります。そして少しでも粗利を増やす工夫をする必要があります。
基本的な考え方は、数量で粗利を確保するのか、利益率で粗利を確保するのか、ということです。現在は市場は縮小化していますので、基本は粗利益率を少しでも上げる方向で工夫することが基本です。もう少し詳しく言えば、粗利益率を上げつつ、販売価格を下げるというバランスです。必ず、その解答はあります。
たとえば、インターネットも活用した直売比率を増やす努力をするとか、海外にも目を向けるとか、商品の位置付けを変えるとか、いろいろそれぞれの事業の身近な領域であるはずです。

(6)売上高
最後が売上高です。売上高は前月と比べて減った増えた、あるいは前年と比べて減った増えた、と一喜一憂されている経営者が多いようですが、一番大切なことは、計画と比べてどうかということです。計画とは経営者の仮説です。このような状況になるからこの程度は売れる、あるいはこうするためにはこのくらい売れなければ困るという仮説です。
現在は非常に先行き不透明な、かつ展開スピードが速い時代です。そういうと同意される経営者は多いのですが、いざ、事業となるとこのような状況です。前月、前年で見るということは、暗やみを行灯で照らしながら歩くようなものです。今は変化のスピードが速いのです。ですからもっと先を見ながら歩く必要があります。それがあなたの仮説、計画です。
ぜひ、売上高は計画で確認しましょう。そして常に、不足する分は早急に取り戻すという経営姿勢です。このことをPDCA経営といいます。計画を立て、やってみて、見比べて、対策を重ねるという経営です。

 

具体的な読み方については、次回にご説明します。