209.覚えなくとも読める財表-12

2015年2月24日

第11回 覚えなくとも読める財務諸表 -損益の読み方- その2

2.損益計算書の読み方
前回は、6つの営業成績について説明しました。今回はその読み方です。

(1)当期純利益

当期純利益は借入金返済の原資であり、繰越利益剰余金の積み増し原資です。
繰越利益剰余金はいずれ必要なときの「投資原資」となるものです。従って、繰越利益剰余金は最低でも資本金の5%程度は毎年、積み増したいところです。資本金が300万円であるならば、15万円程度の金額です。
「1年間もかけてたった15万円程度でよいの?」と思われる方も多いと思いますが、それでいいとはいえませんが、最低限度、この程度は積み増ししましょうということです。
しかしながら一方現在は、多くの中小企業において、この程度の積み増しもできていないことが現実なのです。こうなると景気云々というよりも、経営者の力量に問題があるように思われます。だからこそいま、中小企業の経営者に対して、大きな意識転換が求められているのです。会計を駆使すれば、そのような経営技術は身に付きます。

そこで当期純利益の読み方ですが『借入金返済額+資本金の5%』程度の当期純利益は確保できる状況にあるか、ということです。
事業である以上、この程度の当期純利益を確保するように“する”ことが経営者としての手腕です。

 

(2)税引前当期純利益

税引前当期純利益は税金を納付する前の当期純利益ですから、当期純利益に法人税等を加えた利益になります。
いま、法人税率は見直しが協議されていますが、現行ではだいたい法人税等実効税率(利益に対する法人税等の割合)は最大で35%前後ですので、当期純利益を65%で割れば、税引前当期純利益となります。

そこで税引前当期純利益の読み方は、ざっくり言えば『(借入金返済額+資本金の5%)の倍』ということです。

 

(3)経常利益

経常利益とは、事業の経常的な利益という意味であることは前回ご説明しました。具体的には受取利息といってもほとんどありませんから、実質は営業利益から支払利息を差し引いたものです。この経常利益がマイナスであれば、均等割の税金さえ支払うことはできず、まして借入金返済もできません。したがって手元の現預金から均等割や借入金返済金を支払うことになりますので、必ず資金繰りは厳しくなります。従って、経常利益は黒字になるように、何としてでも経営しなければならないのです。

そこで経常利益の読み方は、売上高に対して最低でも10%以上あるかどうかということです。売上の1割程度は利益として残す経営をすることが経営者の職務です。

 

(4)営業利益

営業利益とは営業ベースの利益ですから、当然のこととして、黒字でなくてはなりません。考えもしてください、赤字の商売をしてどうするのですか!?ぐらい強い気持ちをもって経営に臨む必要があります。営業利益を黒字にするには販売費と一般管理費を売上総利益以下にさせる必要があります。その気になれば、減らせる経費はいろいろあります。特に一般管理費の中には多くあるはずです。たとえば、保険料・・いま困っているのに、将来のことを考えてどうするのでしょうか?このように考え方を変えれば減らせる経費はあるはずです。もし、絞りきっても黒字見込みが立たないのであれば、売上総利益と売上高を増やすことに取り組むしかありません。

そこで営業利益の読み方は、経常利益と同様、売上高に対して少なくとも10%以上はあるかどうかということです。支払利息が多い場合はそれを計算に入れることも大事です。営業利益を売上の1割程度確保することは事業者として当たり前のことです。

 

(5)売上総利益

売上総利益を増やすには3つの考え方があります。
一つは原価率を下げること。原価率を下げるとは無駄な仕入れをしないということです。つまり在庫管理と発注管理をしっかりするということです。原価率が下がれば、粗利益率が増えますから、同じ売上高であっても売上総利益は増えることになります。
もう一つは同じ原価率であっても売上高を増やすということです。売上高を増やすためにはいまの市場にさらに浸透させる、市場を拡げる、さらには日本だけなく海外も開拓するなどのことが考えられます。
最後の一つは付加価値をあげる、売価を上げるということです。付加価値というと難しく考えがちですが、セット販売やアフターフォローや考えられることはいろいろあります。この考え方で一番大事なことは「まずやってみる」ということです。多くの場合はやりもしてないのに、勝手にできないと思いがちです。伸びている会社は違います。実行力があります。

この売上総利益の読み方は、業種業態によって大きな差がありますから、基本的には社内の前年等と比べて評価する必要があります。TKC会計事務所であれば同業他社比較もしてくれます。

 

(6)売上高

最後に売上高です。事業を営む以上、究極的には売上高は伸び続けなければなりません。物価は基本的に上昇しますし、人件費も増やさなければなりません。売上高を増やすためにはさきほども説明したように、①現市場をさらに浸透させる考え方、②新規製品・商品を開発する考え方、③新しい地域・市場を開拓する考え方、があります。そのような中でいま重要なことは差別化です。差別化の原点は企業ポリシー、経営に対する考え方です。それをお客さまに伝えることです。その意味ではウェブサイトが重要であり、有効です。ただし、ただ作ればよいといういい加減なウェブサイトではなく、市場に対して真剣に問いかけるウェブサイトです。
宣伝になってしまいますが、当社インプルーブ研究所ではそのようなウェブサイトを制作します。

この売上高の読み方は二つです。
一つは、少なくとも総資本の倍の売上高を目指すことです。総資本が5千万円なら年商1億円、総資本が1億円なら年商億円ということです。倍が最低ラインです。総資本が少なければ少ないほど3倍、4倍と目指せねばなりません。
もう一つは計画との比較です。必要経常利益から逆算した売上目標を立て、それと比較・検討・対策を考えていきます。

 

 

いまや黒字経営は必須です。
初心に戻れば、そう思われていたはずです。ならば初心に返って、もう一度、黒字経営を実現しませんか。