210.覚えなくとも読める財表-13

2015年3月2日

第12回 覚えなくとも読める財務諸表 -消費税の読み方-

この「覚えなくとも読める財務諸表」も最後となります。最後は『消費税』です。
現在、消費税率は昨年(平成26年4月)より8%、それが2年後の29年4月からは10%に引き上げられる予定です。その後も財政等の状況から引き続き、引き上げられることが予想されます。
消費税はご承知のとおり、顧客から預った消費税から仕入れ等で支払った消費税を差し引きし、その差額を納税する仕組となっています。例えば、売上高1億円、仕入れ等が6千万円であった企業であれば、預った消費税は800万円、支払った消費税は480万円となりますから、差額の320万円を消費税として納付することになります。
会計では預った消費税のことを「仮受消費税」あるいは「預り消費税」などといいます。
支払った消費税のことを「仮払消費税」あるいは「支払い消費税」などといいます。

 

消費税といえば、すぐ転嫁できる・できないということがクローズアップされますが、これからの本当の大問題は『納付資金』です。
例えば、先ほどの、年商1億円・仕入れ等6千万円の例で説明しますと、納付額は次のように変わっていきます。
 消費税率 8%のとき 消費税納付額320万円 =仮受消費税 800万円-仮払消費税  480万円
 消費税率10%のとき 消費税納付額400万円 =仮受消費税1000万円-仮払消費税  600万円
 消費税率15%のとき 消費税納付額600万円 =仮受消費税1500万円-仮払消費税  900万円
 消費税率20%のとき 消費税納付額800万円 =仮受消費税2000万円-仮払消費税 1200万円

 

一方、7割を越す中小企業では赤字という状況であり、すべての中小企業の平均営業利益は50万円ともいわれています。
つまり、理論的には50万円の儲けから消費税を納付することになりますので、消費税を納付することはできません。
あまり知られてはいないようですが、すでに納税延滞の中でも消費税が一番多いのです。国税滞納額の内、約半分が消費税といわれています。
ということは、仮受した消費税をきちんと別管理をしておかないと消費税を納付することが不可能になってきます。
これだけ消費税率が高くなってくると、消費税倒産』が大量に出てくる可能性があります。
期中において資金繰りがラクになったと感じていたら、それは預っていた顧客からの消費税だったという笑うに笑えない現実が起こります。
そこで、最後に消費税に関する管理の仕方をご紹介します。

 

1.経理処理は「税抜き経理」をする
いまあなたの会社はどのように経理されていますか?
例えば「売上高」、1000円の商品を販売した場合、本体1000円・消費税80円で、売上1080円となりますが、
これを   現金    1080円  / 売上高   1080円   (これを税込経理といいます)とはせずに、
      現金    1080円  / 売上高   1000円
                    仮受消費税  80円   (これを税抜経理といいます)にするということです。
仕入れや経費も同じです。
      商品仕入   500円  / 現金     540円
      仮払消費税  40円                にするということです。
こうすれば、資産(資金の運用)に『仮払消費税』が表示され、いくら消費税を支払っているのか、常に把握できます。
一方、負債(資金の源泉)には『仮受消費税が』表示され、いくら消費税を預っているのかも、常に把握できます。
その差額 仮受諸費税-仮払消費税 がおおよその消費税の納付額となります

 

2.「消費税納付」預金を設ける
「納税預金」という言葉をお聞きになったことはありませんか。これは法人税を支払うために設ける積立預金口座のことを言うわけですが、それと同じように、消費税の納付に困らないように通常の預金口座とは分けて『消費税納付預金』を設けます。
基本的には、差異ほどの差額(仮受消費税-仮払消費税)程度の残高があればよいことになります。

 

 

消費税率が3%、5%の時代はここまでする必要はなかったかもわかりませんが(これが”固定観念”です)、
8%となり、これから10%、15%の時代を迎えようとしている現代では、”これまでと同じ”という訳にはいきません。

会計は決算・申告のためではなく、会社の日々の管理・マネジメントのために必要なことを少しでも理解いただければ、幸いです。