217.会計は会社を良くできる-7
2015年4月25日
第7回 管理会計への挑戦 -部門別採算管理-
前回は予算管理について説明しました。今回は部門別です。
1.部門はどんな企業にもある
『部門別』というと、ある程度の規模でないと「関係がない」と思い込まれている経営者が多いようです。これはとんでもない誤解です。ある意味では小規模な会社ほど部門別管理をする必要があります。何故なら小さな会社ほど、さまざまな経営環境の影響をもろに受ける可能性が高いからです。
また多くの経営者は部門別といっても、当社には部門はないと思われている場合が多いかと思います。それが大きな誤解なのです。
自社を振り返ってみてください・・。多くの事業は、何とか利益をあげるためにいろいろな収益源を持っています。
たとえば飲食業の場合は、メインメニューからつまみなどのサイドメニュー、さらには飲み物などがあります。これらはメインメニューだけでは収益力が足りないと思い、サブメニュー・飲料などの収益源をこしらえているわけです。この場合は部門が3つあると捉えられます。
また最近多いサイクルショップの場合であれば、子供向けの自転車や母親向けの自転車、あるいはスポーツ車、一般車、さらにはアクセサリー類などを販売しています。この場合であれば5つの部門があるとも考えられます。
このように事業はいろいろな収益源をミックスさせて収益を確保しようとしています。
部門別といえば、セクション別とか支店別とか店舗別だけと考えがちですが、収益を確保するために運営されている収益源別に管理することも部門別管理です。当社ではそのような発想をしていただくために、あえて「部門別管理」とは言わず『部門別採算管理』という言い方をしています。
では、その部門別採算管理の考え方をご紹介します。
2.部門の捉え方がカギ
まず大切なことは自社にとって部門をどう捉えるかです。すでに説明したように収益源を部門と捉え、それぞれの採算を明らかにすることが目的です。そうすれば、事業分野の見直しなどに資する管理会計となります。
3.部門別計算は「個別化できるデータ」だけで計算する
個別化できるデータとは、あらかじめ部門ごとに分けて計上できるデータのことをいいます。売上高はほとんどが部門ごとに計上できるので問題はあまりないと思われますが、原価や経費科目になると難しくなってきます。事前に個別計上できる方法を検討し、できないもの(たとえば役員報酬など)は共通部門にプールします。そして共通部門にプールした勘定は各個別部門に分けること、すなわち『配賦』はさせません。
ここが重要です。
多くの企業では教本に書かれている関係から、「配賦しなければならない」と強迫観念にも似た気持ちで、売上高構成比や人数あるいは面積などで強制的に配賦する場合が多く見られます。しかしそのようなことをするため、返って素の採算管理ができなくなり、恣意的な部門別管理になるのです。共通部門は共通部門のままにしておくというのが最良のルールです。
もしそうすることで共通部門ばかり経費が溜まるのであれば、徐々に個別部門計上のルールを決めて個別計上できるように精度をあげていけばよいだけのことです。
4.部門別採算管理を徐々にレベルを上げていく
(1)第1段階は売上高と売上原価だけを部門別に分ける
最初からあまり難しいことは考えず、素直に部門別にできるところから部門別計上します。すなわち、売上高と売上原価科目だけを部門別に計上するということからスタートします。これだけでも部門別に粗利益管理ができることになります。
(2)第2段階は経費科目を部門別に分ける
第2段階は経費科目を部門別に分け始め、部門ごとの「営業利益」が把握できるように努めます。しかし、いきなりすべての経費科目を分けると力まずに、分けられるところから始めれば良いかと思います。そして徐々に分けられなかった経費についても妥当な分け方を考え、部門別に分けて計上するようにし、どうしても妥当な分け方がない経費科目は共通部門に残したままにします。
(3)第3段階は部門別予算管理を実行する
次は部門別採算管理と部門別目標とをドッキングさせ、部門別予算管理を実行します。ここまで来るとかなりの高度な部門別管理となります。
(4)最終段階は部門別業績責任会計制度の導入
最後は部門別管理と業績管理制度のドッキングです。ここでは難しくなりますので説明はしませんが、達成利益や貢献利益などの概念を設け、業績責任会計制度を構築します。
ここまでできれば経営環境の変化に強い経営ができるようになります。なぜならいままでと違い、数段早く環境の変化が感知でき、早くから対応を取ることが可能になるからです。このように会計は本来、営業と財政状況の羅針盤的な働きをしますので、「会社をよくできる」と言われる所以です。みなさん、どうせ経理をするならば、ぜひ、会計をもっと有効的に活用しましょう。