230.経営技術「キャズム理論」
2015年10月18日
■キャズム理論 -普及過程ごとに攻め方は変わる
『キャズズ理論』とは、少々聞き慣れない言葉かもしれません。
しかし自社の製品やサービスを普及させるには大変興味深い理論ですので、知っておいて損はない考え方です。
1.キャズム理論とは
キャズム理論は1991年、アメリカの経営コンサルタントであるジェフリー・ムーアが提唱した「製品普及に関する
考え方」です。当時、パソコンやOSなどのハイテク製品がなかなか一般コンシューマまで普及せず、その原因と対策として理論構築されました。
2.消費者の5分類
ムーアはコンシューマである消費者を次の5つに分類しました。
(1)イノベーター(革新的採用者)
ともかく新しいものをいの一番で欲しがる消費者層のことです。
新しいiPhonやOSの販売開始日に早朝から列を成して並んでいる人々の風景がよく見られますが、
あの方たちを指します。この客層は「2.5%」いると言われています。
(2)アーリーアダプター(初期採用者)
先駆者的利用者(イノベーター)の様子や反応を見てから、判断して購入を検討する人々です。
この客層は「13.5%」いると言われています。
(3)アーリーマジョリティ(初期多数派)
アーリーマジョリティとは、第2陣的利用者であり、消費者の「34%」を占めると言われています。
ここまでが比較的積極的な消費者層です。この3つを合わせると「50%」となります。
(4)レイトマジョリティ(後期多数派)
周りの普及状況などを見て、追随してくる保守的な消費者層です。
この客層も「34%」いると言われています。
(5)ラガード(採用遅滞者)
最後の客層は、世間の流行にはあまり関心がなく、なかなか採用しない消費者層です。
この客層は「16%」を占めると考えられています。
さて、この中で最も重要な客層は『アーリーアダプター』です。なぜなら、普及の先導的役割となるからです。
ですから、まず普通消費者との橋渡しをしてくれる、この早期接続者を掴むことが最も大事なこととなります。
そして、一般市場に普及させるには、このアーリーアダプターから『アーリーマジョリティ』へ移行させることが
重要ですが、そのあいだに大きく深い溝があると言われています。その溝を『キャズム』と呼びます。
普及しない要因はこの『キャズム』を越えられないからだとムーアは言います。
その原因は、企業がアーリーマジョリティの特性を理解しないからだと指摘しています。
ともかくこの5つの客層『イノベーター・アーリーアダプター・アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ・ラガード』という
概念を理解し、自社の商品等の普及戦略を考えると、思わぬ新しいアイデアが思い浮かぶかもしれません。ぜひ、理解しましょう。
3.キャズムを越える方法
第1に最初の実質的な客層であるアーリーマジョリティの「実利的な評価に応える」ことです。
ただしポイントは、アーリーマジョリティ全体を相手にしないということです。
したがって、第2に「全力を1ヶ所に集中する」ことが挙げられます。
1ヶ所とは、ある特定のアーリーマジョリティに向けて、完全な製品を作り上げることです。そのためには
①(小さくてもいいから)手がかりを早く掴むこと
②特定のアーリーマジョリティ市場を掴んだなら、それを標準品として広く普及させること です。
そして第3は、他のアーリーマジョリティを順次掴んでいくために、そのアーリーマジョリティに合わせて
「カスタマイズしていく」ことです。言い換えれば、『付加価値』をつけていくことです。
今回のキャズム理論をまとめると、まず客層を絞り、そこに対して傾注して期待に応えられる製品やサービスを提供し、
それを基に他の客層にも応えられる製品・サービスにカスタマイズしていくということになろうかと思います。
私たちはともすれば、総花的に事業を進めがちです。
「御社はいったいどこに的を絞って商売をしているのですか?」と問われると答えに窮ずる場合が多くありませんか。
キャズム理論はそんな考え方を是正することを勧めているように思われます。