233.経営技術「プロフェッショナルマネジャ」

2015年11月12日

■プロフェッショナル・マネージャ -経営者は自分を犠牲にする覚悟があるのか
 著者のハロルド・ジェニーンは、1960年代当時のアメリカ国際電話電信会社ITTで58四半期連続増益を記録した辣腕経営者。
経営に対して強い信念と卓越した実績をもっているジェニーンの経営者に対する強烈なメッセージがちりばめられている「プロフェッショナル・マネージャ」は、経営者にとって必読の書ともいわれている。

 

1.経営は芸術・センスであり科学や理論ではない
 少し誤解を与える表現かもわかりませんが、上記は「経営は経営者の感性・信念に負うところが大きく、決して方程式やマニュアルでは経営はできない」ということです。このことはよく「企業は経営者の器以上に大きくならない」といわれますが、相通じるものがあります。

 たとえば、1970年代入ると「日本的経営」が世界から称賛されるようになりましたが、それは後付けでそういわれるようになっただけで、当時の日本企業は日本の文化や時代的背景の中で懸命に努力していたにすぎないとジェニーンは看破します。だから日本的経営論なんてものはなく、個人の自由と機会の平等という伝統があるアメリカ企業が真似てもうまく行くはずがないと言っています。

 

つまり、見よう見まねでは経営はできず、経営とは環境や他人・社員のせいにはせずに経営者自身が責任をもって判断し、率先垂範していくものだということでしょうか。

 

2.経営は成果がすべて
 『プロフェッショナル・マネージャ』の原題は「Managing」です。経営とは成果をもたらすことであり、マネージャとは成果を叩き出させられる人であると言います。

 たとえば、書籍は初めから読み出し、終わりへと進みますが、経営はその逆だと言います。つまり、終わりから始めて、そこへ到達するために、できる限りのことをすれば、最大の成果が挙げられるということです。もし狙う成果が得られなければ、できる限りに挙げた施策に問題があったわけなので、その施策の変更を重ねればよいということです。

 

少し、乱暴な言い方のように聞こえますが、まさしくPDCAマネジメントのことをいっています。

 

3.経営者は超リアリストであるべき
 超リアリストとは、いいかれば、現場主義・実務主義ということです。経営者は会社の奥で引きこもり、参謀本部のごとく机上でものごとを判断・指示・批判をしているのではなく、常に現場へ出て、わかりやすい指示・判断をするべきだといいます。

 たとえば、流行り言葉のような「起業家精神が大切だ」とか、「今こそイノベーションが重要だ」などの浮ついたかけ声を戒めています。

 

他社で成功した事例でも、自分たちの会社・自分たちの仕事の中に落とし込まないと現実の成果にはつながりません。

 

4.人間が主役
 最後にジェニーンは「人こそが主役である」と温かい情感を示しています。ここが人を動かす情熱となる要です。ただ単なるリアリストでは人を動かせる経営者にはなれません。強い信念と厚い情感があってこそ、人が動く情熱になるのだと思います。

 そこで次のような「経営についての個人的なすすめ」を挙げています。
①本来の自分でないことは振り回すな                 ☛自分を出せ
②事実と同じくらい重要なのは事実を伝える人間である         ☛正直な人間を排斥するな
③組織の優秀な人間はマネージャからの質問を待ち受けている      ☛幹部になる人間には度量が重要
④経営上の核心を突く質問を嫌がるのはインチキな人間に決まっている  ☛耳の痛い話も謙虚に聞け
⑤現場におけるきわどい判断はマネージャがすべきである        ☛任せると丸投げをはき違えるな

 

このように逆から理解するとジェニーンの言わんとするところがよく理解でいます。

 

 

この『プロフェッショナル・マネージャ』は「孤独」といわれる企業経営者に勇気と活気を与えてくれる経営書です。
小規模な中小企業であればあるほど、経営者の重要性は増してきます。
社長さんの経営道を社員の皆さんに伝えて「いい会社」作っていきましょう。