236.会計学-2「会計法規則」
2015年11月28日
『会計学』第2回目は3種類の法規則に基づく会計を説明します。
Ⅱ 会計法規則
1.会社法による会計
(1)債権者を保護する
企業は「個人企業」と「会社」に分けられます。会社には合名・合資・合同・株式と、従来からの有限の5種類があります(有限会社はもう新規に設立することはできません)。多くの場合は、事業者自らが自己資金を出資し、事業者自らが経営を行う個人企業としてスタートします。
企業はその形態に関わらず、すべて「商人」として把握され、「会計帳簿」と「貸借対照表」の作成義務があります。中でも株式会社については、「会社法」が企業の所有権を表わす「株式制度」と、出資者である株主の「有限責任制度」について規制しています。但し、債権者の権利保護のために配当制限が設けられています。
(2)株主を保護する
株主を保護する観点から、経営業務の執行を担当する一部の株主と他の株主の間で下記のように分化が進みました(このことを「所有と経営の分離」といいます)。
株主総会(最高の意思決定機関) →(選任)→ 監査役(監督機関)
↓ *監査役は取締役会と代表取締役を監査します。
(選任)
↓
取締役会(業務執行の決定機関)
↓
(選任)
↓
代表取締役(会社を代表する業務執行期間)
※2003年以降、監査役に代わって取締役会内部に指名・報酬・監査の3委員会を設ける「指名委員会等設置会社」が選択できるようになりました。
※2015年には、監査役に代えて3名以上でその過半数が社外取締役によって構成される「監査等委員会設置会社」という第3の制度も導入されました。
経営者は株主から資金を預かった受託者ですので、それを誠実に管理し、株主の最大利益に合致させる責任を負う義務があります。そのことを「受託責任」といいます。その受託責任の報告が会計報告であり、経営者が株主に対して会計報告を行うべき責任を「会計責任」といいます。
会計の役割は資金調達(負債・純資産)と運用(総資産)の現状およびそれを利用して行った経営成績(損益計算書)を株主へ伝達することです。そのことを「利害調整機能」といいます。
2.金融商品取引法による会計
財務会計は、証券市場の発達により、経営者・株主・債権者などを始めとする経済社会に対して、経済の発達とともに公的機能を持つようになりました。金融商品取引法に基づく会計はこの機能を果たすものです。
3.税法による税務会計
個人企業の利益は事業主の所得と合算され、所得税法に基づいて、事業主に所得税がかかります。
一方、法人企業は法人税法に基づいて、法人税が会社に対して直接的に課されます。
このように、所得税も法人税も「課税所得」に対して所定の税率を乗じて計算しますが、この課税所得を算定するための会計が「税務会計」です。課税所得は次の計算式によって求められます。
課税所得 = 当期純利益 + 税法特有の加算項目 - 税法特有の減算項目
*「当期純利益と課税所得は違う」ことを理解しましょう。
今回のキーワード
個人企業と会社の違い
商人としての会計帳簿と貸借対照表の作成義務
所有と経営の分離
受託責任と会計責任
会計の役割(総資産、負債・純資産、損益計算書の報告義務)
課税所得