256.景気に負けない経営管理-5

2016年4月27日

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事業とは、自社の事業に投資を繰り返して、成長を成し遂げていくものです。
その投資の内容を表しているのが、月次試算表と決算書の貸借対照表の「資産」です。

では、その資産の状況はどのように判断すればよいのでしょうか?
多くの企業は、毎月、貸借対照表を作成しながらも、その見方を会計事務所からも教えられていないので、ただ手もとに置いているだけという場合が多いようです。そこには貸借対照表の見方を知っている会計事務所職員が少ないという実情があります。

そこで、その主な資産の判断の仕方についてわかりやすく説明して行きます。

ぜひ、毎月の貸借対照表を読みこなしながら、自社の資産状況に問題がないのかチェックをし、景気などに負けない事業経営をしていきましょう。

 

■景気に負けない経営管理 第5回「買入債務の判断」

1 買入債務とは

「買入債務」とは、仕入に付随して発生する債務です。つまり、支払手形と買掛金の総称です。
そのほかに「仕入債務」とか「支払債務」と呼ぶ場合もありますが、同じ意味です。
この買入債務でまず認識したいことは「支払手形」は使わないということです。
一見、手形を使用するとさらに支払期日が延ばせるので、有利なように思われる方も多いようですが、
支払手形は支払期限待ったナシです。期日に支払いができなければ、即、銀行取引停止です。
まあそんなギリギリの支払はされないのでしょうが、油断は禁物です。
逆に言えば、手形が落ちない心配をすることがないのであれば、手形を使う必要はありません。
そう考えると、意外と支払期日を延ばすために支払手形を利用されている企業が多いという言い方もできます。
であればなおさら、支払手形の利用はNGです。

「買入債務」は無利子で仕入先から資金調達をしているとも理解できますので、支払期限は長ければ長いほど良いという考え方も
あるようです。長いということは「買入債務」の額が多いということです。
しかしそんな経営をしていれば、いずれ仕入先より「この会社は支払が悪い」という風評が立って、回り回って、得意先などの顧客市場からも『信用』を無くします。したがって物事には限度というものがあります。

では、これら自社の「買入債務」の状況をどう判断すれば良いのでしょうか?

 

2 買入債務の状況を判断するモノサシ 『売上高』

自社の買入債務の額を判断するモノサシは、やはり「売上高」です。
細かく見たいのであれば、「商品仕入+材料費」となります。

前者は売上高の何カ月分あるいは何日分に相当する仕入債務があるかということです。
売上高には原価に粗利益が乗っているわけですから、通常はだいたい0.5ヵ月分あるいは15日分程度が妥当ということになります。
それ以上あれば、仕入れのし過ぎか、あるいは支払状況に問題があるのかもわかりません。

後者は仕入代金の何カ月分あるいは何日分に相当する仕入債務があるかということになります。
「商品仕入+材料費」は売上高とは違い、正味の仕入代金とも言えますから、通常はだいたい1ヵ月分あるいは30日分程度が妥当ということになります。それ以上あれば、明らかに仕入れのし過ぎか、あるいは支払状況に問題があります。

具体的には『買入債務÷平均月商』または『買入債務÷平均月次(商品仕入+材料費)』で計算することができます。
*日数で計算したい場合は、分母を1日当たりの額にすれば計算できます。

このような考え方のことを専門的には「買入債務回転率」、日数の場合は『買入債務回転期間』と呼んでいます。
さらに後者の「商品仕入+材料費」で計算する場合は、前者と区別し『支払基準買入債務回転率・支払基準買入債務回転期間』
あるいは『正味買入債務回転率・正味買入債務回転期間』などといいます。

もしこれが悪ければ、その処方箋として、根本的に仕入を見直す必要があります。

 

3 買入債務を判断するモノサシ2 『営業債権』

二つ目のモノサシは運転資金的な視点から見るモノサシです。
買入債務とは運転資金的にみると販売活動で『調達している資金』といえます。
その逆の資金、販売活動で『運用している資金』が、売上債権と棚卸資産です。
そこでこの2つを比べるという発想が生まれます。

 

販売活動で運用している資金「売上債権+棚卸資産」 - 販売活動で調達している資金『買入債務』 = 過不足『運転資金』

 

この計算結果がプラスであると、運用している資金のほうが多いので、運転資金は不足ということになります。
その不足分は手元の現金・預金で補わなければなりません。
もし手元現預金がないのであれば運転資金を金融機関から借り入れるということになります。

逆にこの計算結果がマイナスであれば、調達している資金のほうが多いので、運転資金として余っているということになります。

「あれ?ちょっとややこしい・・」と思われるかもしれません。確か、買入債務は多すぎてはいけないようなことでは・・という
ことですね。無用な買入債務はいけません。なぜならそれは過大仕入だからです。
しかし、そうではなく、もし仕入先が「支払は半年先でいいよ」なんて言ってくれた場合は、無利息の資金を物という形で調達しているのと同じことになりますから、大変運転資金がラクになります。
ただし、そんな夢の話はありませんので、この問題は『売上債権』の早期回収です。売上債権が早期回収、たとえば数日後の回収であれば、運用している資金は少なくなりますので、『運転資金』は少なくて済みます。

この不足している運転資金のことを『要調達運転資金』と呼んでいます。
これを年商で割ると、売上高に対する運転資金調達割合が計算でき、自社の売上100に対する要調達運転資金が掴めます。
このことを『運転資金要調達率』といいます。

もちろん、この運転資金要調達率が低ければ低いほど、企業経営としてしてはラクになります。

 

このように、財務諸表から「買入債務」を読みこなすと、自社の仕入活動の適正度や問題点、あるいは販売活動の問題点・課題などがわかります。 

 

 

重要なことは、モノサシはどれであってもよいわけですが、この先行き不透明で変化が早い、いまの時代は「そのようなモノサシでマネジメントしなければならない時代である」ということを経営者の皆さんが認識されることです。
現在は事業にしっかりマネジメントすることが求められている時代です。
財務諸表で自社の経営状況を管理されると、驚くほどしっかりした事業となります。ぜひ一度トライしてみてください。