258.景気に負けない経営管理-7

2016年5月8日

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事業とは、資金調達をしながら事業への投資など資金運用を繰り返し、成長させていくものです。
その資金調達と資金運用状況を示しているのが、「月次試算表」と会計期間の最終報告である「決算書」の『貸借対照表』です。

では、その「資産運用」と「資金調達」の状況は、どのように判断すればよいのでしょうか?
多くの企業は、毎月、貸借対照表を作成しながらも、その見方を会計事務所をはじめ、誰からも教えられていないので、
ただ手もとに置いているだけという場合が多いようです。
そこには貸借対照表の見方を知っている会計事務所職員が少ないという意外な事実があります。

そこで、皆さんにその主な資産と資金の実務的な判断の仕方について、わかりやすく解説します。

毎月の貸借対照表を読みこなし、自社の資産・資金状況に問題がないのかを確認され、必要な対策行っていけば、
必ず、景気などに負けない『強い事業経営』ができます。

ぜひ、『経営技術のスキル』を磨いていきましょう。 

 

■景気に負けない経営管理 第7回「借入金の判断」 後半

今回は「借入金の判断」後半、自社の「借入金」状況を判断するモノサシについて、解説します。

 

2 自社の「借入金」状況を判断するモノサシ① 『売上高』

毎月の「売上高」は会社にとって毎月の収入といえます。
したがって「借入金」と毎月の「平均売上高」を比べることは意味があります。
それによって、自社が借入金依存体質なのか、そうではないのか、おおよその判断ができるからです。

借入金の総額が、だいたい売上高3カ月分程度以内であれば「依存症ではない」と判断できます。
これが3カ月分を超え、6カ月分程度になると、「やや問題」となります。つまり『要注意』です。
さらに1年程度分になると「完全な依存症」、それを大きく超えていると早急的な治療が必要です。

なお、このような考え方を専門的には「借入金対月商倍率」と呼んでいます。これには次のような根拠があります。

だいたい商売をする以上、本来、どの程度の利益を出すべきなのでしょうか?
欲をいえば切りがありませんし、現実を振り返れば難しいかもわかりません。
しかし、本来的にはどのような商売をされていようとも、売上の「10%」程度の利益を残さないと、万が一の場合の対応や
新たに必要となる設備投資も利益の中で行えません。
したがって、標準的には利益率は「売上高の10%」と言われるわけです。

この10%が借入金返済の原資となります。
この10%には納税資金にもなるわけですが、そのようなことも踏まえれば、返済原資として考えられるのは、最大でもその半分の5%と考えられます。
仮に、毎月売上の5%を借入金返済に充てたと考えると、年間で60%となります。
一方、平均の借入金返済期間は5年程度ですから、60%に5年間を掛けると300%となりますから、
元の借入金は売上高の3カ月分となります。
もし7年間にわたる返済期間だとすれば、420%で売上高4カ月分あまりとなります。

したがって、適正な借入金額は売上高3ヵ月分程度になるということです。

 

3 自社の「借入金」状況を判断するモノサシ② 『営業利益』

二つ目のモノサシは「年間営業利益」が借入金の返済原資の最大額と捉えて、次のように考える方法です。
  「借入金残高」÷「年間営業利益」=返済期間××年
別に営業利益が「経常利益」であっても構いませんし、よく書籍に書かれている営業利益に減価償却を加えた「償却前営業利益」
あっても、考え方は同じです。
借入金返済は損益の中でしているのではなく、損益の外、つまりB/Sの中で返済していることを認識しましょう。

では、どのぐらいであれば良いのでしょうか?
金融機関の融資審査の尺度でいえば、借入金の額は10年分の利益以内ということです(ただし、大甘の判断基準です)。

なぜ、10年間なのでしょうか?
それは10年以上先のことは、企業自体が存在しているかどうか自体がわからないということらしいですが、
その意味からいえば「求められた返済期間が10年以内であれば良い」と理解するのではなく、「10年以内が最長の許容限界」と理解されるべきです。
通常は最長の融資返済期間である「利益7年分以上の借入金」があれば、直ちに改善すると考えられたほうが良いと思います。

このような考え方を専門的には「債務償還年数」と大変難しそうな名称で呼んでいます。

 

 自社の「借入金」状況を判断するモノサシ③ 『預金残高』 

三つ目のこモノサシは「預金残高」です。
多額の借入金があるのに「預金はゼロ」では困りますよね。ごく日常的な判断基準です。

問題は「では、どの程度あれば適切で、どの程度」以下であれば問題なのか」ということです。
これも通常の生活感覚で考えれば判断できますが、その感覚には人それぞれによって違いがありますように、非常に慎重な経営者とあまりそうではない経営者では若干の幅があるようです。
また、借入金の使用目的で資金の使い方も違います。例えば、設備投資目的であれば購入するときに一度に減ります。また賞与資金なども賞与支給時に一度に減ります。それが日常の運転資金目的であれば、それほど一度には減らない筈です。

しかし、いずれの場合にせよ、最低でも借入額の1割程度の預金は持っておきたいものです。1000万円借りたなら、最低100万円程度ということです。これは実は3回分程度の返済額となります。
借入時から月日が経つに連れ、それが3割程度、5割程度と増えて行きます。

このことを知っておけば、経営上、大切なことを学ぶことができます。
それは借入額は最低必要額ではなく、プラス1割から2割程度水増しして「融資申し込みをする」ということです。
そうすれば投資効果が思い通りに運ばなくても、猶予を持てることとなります。

このような考え方を専門的には「預金対借入金比率」と呼んでいます。 

 

 このように、財務諸表から「借入金」を読みこなすと、自社の借入金額の適正度や問題点、あるいは融資申し込み金額算定などに役立ちます。

 

 

会計をきちんと行うことは重要なことですが、さらに重要なことは「経営に活かす」ことです。
そうすることによって経理事務を経営管理業務にまで昇華させることができます。
この先行き不透明で変化が早い現在の時代は「そのようなモノサシでマネジメントしなければならない時代である」ということを
経営者の皆さんが認識されることです。現在は事業にしっかりマネジメントすることが求められている時代です。
財務諸表で自社の経営状況を管理されると、驚くほどしっかりした事業となります。ぜひ一度トライしてみてください。