260.強い中小企業の財務的条件

2016年5月25日

〔お知らせ〕当研究所は中小事業者経営を「良くする」ために、ITと会計・マーケティングの活用でご支援しています。
      ウェブサイトのホスティングサービスは、amazonサーバー(AWS)を
利用し、最新のIT環境下で行ってます。
      ●ホームページやインターネットショップなどの制作・ホスティングのみならず貴社の成果達成を目指しています。
      ●会計は経営を強化する観点から「管理会計」や「財務分析」によって具体的な改善活動を行っています。
      ●マーケティングは中小企業ができる実践的な手法にして経営工夫と発想転換を支援しています。
      
お問い合わせは コチラ から。

 

「景気に負けない経営管理」のまとめとして、強い中小企業の財務的条件について解説します。

これまで手元資金から純資産までのチェックの仕方を紹介してきましたが、それを総合的に組み合わせて説明すると
次のようになります。

 

1 強い会社の必要条件

  結局、事業の成果というものは「純資産」に集約されます。創業以来の結果です。
  純資産とは、スタート時の「資本金」と、以後の事業活動を通じて貯めた内部利益の「繰越利益」です。
  この二つを合わせて「自己資本」とも呼んでいるわけですが、その自己資本を伸ばしているのか、そうでないのか
  ということです。 強い会社は必ず、この自己資本を伸ばしています。

  それは純資産を(当初)資本金で割れば見ることができます。そのことを『自己資本成長率』と呼ぶことにします。
   自己資本成長率(倍)= 純資産 ÷ (当初)資本金

  強い会社は8年程度で倍々となるペースで、事業を育成しています。

 

2 強い会社の十分条件

  この『自己資本成長率』が順調に伸びていることが「強い中小企業」の絶対条件ですが、
  ただそれだけでは強い会社と判断できません。
  そのほかにいくつかの補足要件があります。そのことを十分条件と呼ぶことにします。
  十分条件にはいくつかあります。

(1)自己資本現預金割合

  まず、現預金が豊富なことです。
  しかし「豊富」といったところで、豊富さというのは抽象的恣意的な概念ですので、判断する尺度を統一する必要があります。
  それが「純資産」、つまり「自己資本」なのです。
  たとえば、いくら自己資本の割合が高いからよいといっても、手元資金がなければ経営は行き詰ってしまいます。

  そこで保有している現預金を自己資本で割れば、自己資本の何割程度を手元資金で持っているか客観的にわかります。
  それを『自己資本現預金割合』と呼ぶことにします。
   自己資本現預金割合(%)= 現預金 ÷ 自己資本 ×100

  強い会社は自己資本100%以上の現預金を持っています。

 

(2)実質無借金比率

  資金の調達には「自己資本」と「他人資本」があるということは勉強してきました。
  たとえば銀行借入をすれば手元資金が潤沢にあるように見えますが、資金繰りは決してラクとは言えません。
  そのような調達の繰り返しだけでは、資金が枯渇しては借入を繰り返すようになります。
  そして・・そうです、借金まみれの経営に陥ります。
  いま多くの中小企業はそのような状況であるともいわれています。

  そこで常に借入からの依存度を抑える経営を志向する必要があります。
  それは現預金を借入金で割れば判断することができます。それを『実質無借金比率』と呼ぶことにします。
   実質無借金比率(%)= 現預金 ÷ 借入金 ×100   

  強い会社はもちろん借入金もありますが、その借入金以上の現預金を持っています。

 

(3)総資本回転率

  「粗利益率」(売上総利益率)は業種特性によって大きく違いますので、一概にどの程度とはいえません。
  また「営業利益率」は業種の影響は受けなくなりますが、中小企業の場合は節税対策の影響を強く受けていることがあり、
  本来の利益率を表さない場合が多々あります。
  したがって、強い会社という意味では確かに「黒字経営」であるという共通点はありますが、しかし一律どの程度以上か
  とはいえません。

  そこで、強い会社の共通指標となるのが収益である「売上高」です。
  その売上高を事業に投下している総資本をどの程度活かしているかという観点から見ます。
  それは売上高を「総資本」で割ることで測れます。それを『総資本回転率』と呼んでいます。
   総資本回転率(回)= 売上高 ÷ 総資本

  強い会社は低くとも2回転以上、つまり投資資本の2倍以上の売上高をあげています。

 

(4)売上債権回転期間

  売上は資金の大元ではありますが、売り上げるだけでは資金にならないということはもう皆さんよくお分かりのとおりです。
  「売上債権」を回収しなければ、資金になりません。
  会社は基本的に先月の売掛金は今月回収して、今月はまた新たな売掛金が発生するという繰り返しを続けながら、
  営業活動で資金調達をしています。

  そこで常に売上債権の回収状況を管理する必要があります。
  それは売上債権を1日当たりの平均売上高で割れば、全体的な回収状況を把握することができます。
  それを『売上債権回転期間』と呼んでいます。

   売上債権回転期間(日)= 売上債権 ÷ (年商÷365日)

  強い会社は40日前後の回収期間を維持しています。

 

(5)固定資産回転率

  設備投資は何のためにするか?それは生産性を上げるためです。
  したがって設備の稼働状況を高めることが大切です。
  それを考えずに設備投資をしたり、あるいは無駄な設備投資をしているでは、強い会社にはなれません。

  そこで投資した設備をどの程度、有効に活用しているのかということが大事になります。
  そのことは売上高を「固定資産」で割ることで測れます。それを『固定資産回転率』と呼んでいます。
   固定資産回転率(回)= 売上高 ÷ 固定資産

  強い会社は最低でも4回転以上、つまり設備投資額の4倍以上の売上高をあげています。

 

(6)売上高営業利益率

  先ほど、中小企業は節税対策の影響を強く受けている場合があるので、本来的営業利益率を示さないという説明をしましたが、
  しかしそれでも本業ベース(営業利益)で黒字経営を続けることは、強い会社の基本要件です。

  そこで本業ベースで黒字を確保することは大変大事なことです。
  そのことは「営業利益」を売上高で割ることで測れます。それを『売上高営業利益率』と呼んでいます。
   売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 ×100

  中小企業の場合は節税対策の影響を受けますが、強い会社としてはそれでも10%程度の利益率は確保しています。

 

その他ほかにもいろいろ意見がありますが、これが絞り込んだ「骨太の強い会社」の必要条件であり十分条件です。
このことは逆から見れば、強い会社になるための指標という見方もできます。

ぜひ、これらの指標に対して自社の目標数値をセットし、しっかりとしたマネジメントを行い、強い会社になりましょう。