261.景気に負けない損益管理
2016年5月31日
前回まで景気の変化に負けない財政管理を「景気に負けない経営管理」として説明してきましたが、
今回は損益管理について説明しましょう。
損益は、これまで勉強してきましたように
1.売上の状況 2.原価の状況 3.経費の状況 4.営業外の状況 5.臨時的損益の状況 6.法人税等の状況 と
6つに分けて表示されてます。
それに対して、売上高と5つの利益で事業の業績状況を説明しています。
■ 5つの利益とは
(1)売上高から原価を差し引きした『売上総利益』
粗利益とも呼びますが、事業の可処分所得みたいなものです。この範疇で経費等を抑えないと赤字経営になってしまいます。
こう考えると理屈上は、黒字経営を続けることはカンタンです。身の丈経営を心掛ければ良いだけのことです。
しかし、これが人にはなかなかできないのです。
(2)売上総利益から経費を差し引きした『営業利益』
営業利益とは、文字とおり商売ベースでの利益です。商売は黒字ですることが当たり前ですから、この営業利益は必ず黒字で
なければならないというのが、事業の常識です。この常識がなかなか守れていない事業が多い現代は、ある意味異常です。
経営する者の責任として、もっと黒字化を真剣に捉え、黒字化の努力をすべきです。
(3)営業利益から営業外の収益と費用を±した『経常利益』
経常利益とは、文字とおり事業が経常的に産出できる利益という意味です。
営業外の損益とは基本的に金利です。
(4)経常利益から臨時的損益を±した『税引き前当期純利益』
臨時的損益とは固定資産の売却益や売却損あるいは保険の解約返戻金など、一時的に発生する損益のことです。
(5)税引き前当期純利益から法人税を差し引きした『当期純利益』
当期純利益とは最終利益です。これが事業にとって繰り越せる利益となり、将来に対する投資資金などの自己資本となります。
では、その中でも「景気に負けない損益管理」項目とそのモノサシとは・・
1.売上高
まず何と言っても重要な管理項目は『売上高』です。売上高は事業にとって「資金」のおおもとです。原価や経費は基本的に物価スライドや人件費のアップなどによって、必ず増加していきます。したがって、売上高もその意味では年々増加させていかなくてはなりません。つまり、前年と計画をモノサシとして、状況を把握する必要があります。
そのためには会計システムとして「前年同期」「前年同月」「累計予算」「単月予算」と比較できる必要があります。
また、次年度を迎えるにあたって、たとえ一人事業でも「予算」を作る必要があります。客観視することで、経営のコントロールであるマネジメントができるようになります。マネジメントする姿勢は「景気に負けない経営」の必須条件です。
2.売上総利益(粗利益)
次に重要な項目は『売上総利益』です。冒頭にも申し上げたとおり、売上総利益は事業にとって「可処分所得」です。可処分所得が増えれば、生活は余裕ができてラクになります。事業も同じです。売上総利益はコントロールして増やしていかなくてはなりません。ここがポイントです。売上総利益は同じ売上高でもコントロールすれば増やすことができるということです。
また売上総利益は金額でコントロールすることです。経済成長が高かったころは「粗利益率」で管理することが重要と言われていましたが、成熟社会の現代は「粗利益額」です。利益率が高くなっても利益額が減ってしまえば元もこともありません。
それだけ現代は低成長の時代になっているということです。これは当たり前のことです、いつまでも高度成長が永遠に続くことはありえませんからね。
3.営業利益(本業利益)
最後に『営業利益』です。何といっても本業で稼ぐことは当たり前です。営業利益は売上総利益から経費を差し引きして算出されますが、経費は大きく分けて「人件費」と「それ以外の経費」に分けられます。
いまの時代は当分間、「人件費」は増え続けるという時代です。人を増やさなくとも、昇給の問題もありますが、何よりも社会保険料が増加していきます。したがって、営業利益を大きくするには「その以外の経費」を抑えるということが必要です。しかし、「それ以外の経費」はゼロにはできませんから、常に「売上総利益を高める経営」が重要となります。
以上、損益管理の要諦は「売上高」「売上総利益」「営業利益」の3点ですが、経営状況を良くしていくためには取り掛かる順番も重要です。
営業利益の改善は内部の問題ですから、一番即効性があり、取り掛かりやすい課題です。ですから優先順位は1位です。
売上総利益の改善は内部の問題と仕入の問題ですから、これも比較的取り掛かりやすい課題です。ですから優先優位は2位です。
売上高の改善はお客様に購入していただかないと成果は出ませんので、これは非常に難解な改題です。ですから優先順位は3位となります。
しかし、売上高の改善は販売量を増やすということでもありますが、もう一つは販売単価を高めるということでもあります。
但し、販売単価を高めるということは値上げするという単純なことではありません。付加価値を高めるということを決して忘れないことが大切です。