263.役立つ会計①明細管理会計

2016年6月12日

経営に役立つ会計とは「管理会計」と呼ばれ、一般的には予算管理会計や部門別損益管理会計などのことを指します。
しかし、一番肝心な管理会計とは『内訳明細管理会計』『資金繰り予測会計』です。

今回は『内訳明細管理会計』について説明しましょう。

 

内訳明細管理会計とは

 通常、会計と言えば、勘定科目別に集計し、それらを貸借対照表と損益計算書に組み替えます。つまり、決算書と同じ形式で、月次試算表も作成しています。
税務申告用に提出する決算書はそれで構わないわけですが、しかし社内的に活用しようとする会計資料としては、それでは情報が統合され過ぎていますので、経営資料としては役に立ちません。

 

 そこでこの『内訳明細管理会計』の登場です。

一般的に会計事務所に依頼していても、そのような試算表は提供してくれません。なぜなら会計事務所の指導目的は、いくら経営を支援しますと謳っていても、常に決算と申告書にあるからです。
また会計ソフトを購入し自社で会計をしている場合でも、会計ソフトの基本設計はやはり決算申告なので同じです。機能としては内訳明細管理ができたとしても、あまりそのようことに誘導はしていません。
したがって、ほとんどの会社は、決算書に準じた科目体系で毎月の試算表を作成しているのが実情です。

 しかしそれでは先ほども申し上げたように、あまりにも情報が統合され過ぎているので日々の経営には参考になりません。
したがって会計がないがしろにされ、ほとんどの会社が「勘と経験」で経営しているのが実態です。

 たとえば、売上高を例に考えてみましょう。
試算表が早く作成されていても、先月末の売上高がわかり、せいぜい昨年同月と比べて増えているのか、減っているのか、がわかる程度です。しかしそれも作成が遅れていれば、3・4カ月前の売上高しかわかりませんので、いまさらわかっても何の役にも立ちません。さらにひどければ、月次試算表を作成すらしなくなります。

 これが『内訳明細管理会計』であれば、商品明細別の売上高がわかったり、得意先明細別の売上高がわかるようになります。
そうすると、今年の商品ごとの売れ具合がハッキリわかりますので、商品別の戦略に活かせることになります。得意先別であれば、得意先ごとの取引状況がわかりますので、営業戦略も立てやすくなります。
そのほか、売掛金も得意先別の残高がわかるようになりますので、売掛金の回収状況も個別にわかります。在庫なども同様です。
また費用も明細別にわかりますので、何がまだ節減可能なのかハッキリわかります。

 このように『内訳明細管理会計』では経営状況を統制(コントロール)できますので、より黒字経営を達成できるようになります。

 

 但し、そのような会計にするためには条件があります。

 一つは、会計データの入力を迅速にすることです。
毎日でなくてもよいかと思いますが、せめて毎週末には会計データの入力を終えたいところです。そうすると週初めには、いま紹介したような情報が入手できるようになります。

 もう一つは、会計データの入力数が増えることに対応するということです。
必要な情報を得るには、それに応じたデータを入力しなければなりません。例えば得意先別の売上高を得るのであれば、売上データは得意先ごとに入力する必要があります。費用を明細で知りたければ、費用関係の入力はその明細で入力しなければなりません。
したがって、これまでの入力数と比べますと2~3倍程度にはなります。しかし入力数が増えるということは、それだけ自社の経営管理力が向上していることを表していますので、それを励みにぜひチャレンジしてみてください。

 最後の条件は、普段着の会計を月次においては行うということです。
会計は最終的には税務署や金融機関に提出することになりますから、私たちも出かけるときにはそれなりに身なりを整えるとの同様に、決算と申告の際には多少見栄えを良くして提出します。ある意味、これはもっともなことです。
しかし、日常に戻った場合には素に戻さなくてはなりません。そうでないと常に読み直して理解しなくてはならなくなります。
会計では決算申告において整えることを「期末整理」とか「決算整理」と呼んでいます。それを決算月でしたなら、翌期首月に入ったなら「期首戻し処理」(言ってみれば、普段着への着替えです)をしなくてはなりません。ところが会計事務所に依頼していても会計事務所は全くそのような処理や指導はしません。なぜなら会計事務所が説明する会計は決算・申告することが目的だからです。また自社でパソコン会計をされていてもそのような必要性が説明されていませんので同様です。

 

 このような会計処理をされるようになれば、本リポートで主張している「会計業務は事務業務ではなく『経営管理業務』である」ということもおわかりいただけることと思います。

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