266.役立つ会計④試算表の評価
2016年7月3日
今回の経営に役立つ会計は『月次試算表の評価』です。
前回の決算書は事業の1年間の成績表であり、中期的(中期的とは3年から5年間ぐらい)な課題を見出すものです。
したがって、当期決算と3年前および5年前の決算などと見比べて、流れを掴みながら課題を見つけることが大切でした。
ところが今回の月次試算表は現在進行中の成績表ですから、2・3ヵ月先から6カ月程度の短期的な課題と解決策を考えるべき
経営資料といえます。
したがって、前年実績と計画値(予算)とを見比べて、いまの課題を知ることが大切です。
今回はそんな月次試算表の評価の仕方である『月次試算表の評価』について説明しましょう。
月次試算表の評価とは
決算書は終えた事業年度の成績表であり、位置づけはこの一年間を振り返り、中期的な課題を見出すための資料でした。
従って、必然的に決算書と毎月の月次試算表をは見方が異なってきます。
いまの課題を知る① 自社の利益の状況を評価する
まず、月次試算表で見るべきところは「きちんと儲かっているか?」ということです。
企業の儲けとは、売上総利益・営業利益・経常利益・税引き前当期純利益・当期純利益の5段階があり、加えてその前提としての
売上高があります。 その中でより重要なものは、売上総利益と営業利益、そして売上高です。
では、それらをどう見ればよいのでしょうか?
一番良いのは「予算」と比べることです。予算がなければ「前年実績」ということになりますが、しかしここでは「予算」にこだわりたいと思います。もし、「予算」がないのであれば、今すぐ作りましょう。
予算の作り方はいろいろあります。「とてもうちの規模じゃ予算どころではないよ!」と思われているかもわかりませんが、
もし「うちの規模じゃ・・」と思われているなら、なおさら作りましょう! そんな状況の企業ほど「予算」は重要なのです。
初歩的な予算の作り方は簡単です。たった3つのことを決めれば、予算は作れます。
1 まず来年の希望売上高を考えましょう。いくら位、必要ですか? 直感で構いません、たとえば、8000万円としましょう。
2 次に粗利を考えてましょう。パーセントで考えたのであれば、それで構いません。40%であれば、3200万円ですね。
3 最後に営業利益を考えましょう。売上の3%なら、240万円となります。
これだけで出来上がりです。
売上高 8000万円 平均月商666万円
売上総利益 3200万円 月平均 266万円
売上原価 4800万円 月平均 400万円 ←8000万-3200万
営業利益 240万円 月平均 20万円
販管費 4560万円 月平均 380万円 ←4800万-240万
この原価は大丈夫ですか? この販管費で人件費も大丈夫ですか? この営業利益で支払利息は払えますか?
この予算で借入金も返済できますか?
これらを自問自答されて大丈夫と思われたのなら、これで予算は出来上がりです。もし無理があれば調整してください。
これだけで、最も簡単な予算作成は終わりです。
もう少し詳しく作成したい項目があるのであれば、内訳としてその項目だけを考えればよいだけです。
月割は12分の1でペースがわかりますから、それでOKです。どうしても月々の予算をこだわりたい場合は月次展開を考えます。
しかし、これだけでも立派な❝経営者としての意思決定❞ですから、それと月次試算表の売上高、売上総利益、営業利益と比べる
ことで現状の評価ができ、具体的に目標を持った対策を練ることができます。
いまの課題を見出す② 手元資金を評価する
次に見るべきは、「現預金残高」です。
むずかしい見方は必要ありません。 基本は前月より増えているか、期首より増えているか、ということです。
増えていれば、ひとまず安心です。
減っていれば、今後の動向を確認する必要があります。
また一つのインジケータ(指標)として「手元流動性比率」があります。
手元流動性比率(ヶ月)= 現預金 ÷ 平均月商
最低目標として「まずは月商1ヶ月分の現預金を持つ」ということから始めましょう。それが達成できれば2カ月分、3カ月分・・と増やしましょう。中小企業は上場企業ではありませんので、現預金を多く持つ経営が経営の強さであります。
いまの課題を見出す③ 売上債権は回収できているか
事業資金の源流は「売上高」です。売上高は流れていくうちに売上債権(売掛金・受取手形)に変わり、やがて現預金になって運転資金となり、仕入代金の支払いや給与の支給、その他経費の支払、社会保険料や預り源泉税の納付、そして法人税等の納付と借入金の返済などに回り、残りが内部留保として現預金として溜まります。
この順序でいえば、まず営業ベースで利益を出すことが大事です。ですから、最初にチェックしました。
それとその利益を絵に描いた餅にならないように、現預金化しなくてはなりません。
それを「売上債権回転期間」というインジケータ(指標)で見ます。
売上債権回転期間(日)= 売上債権 ÷ 平均日商
業種によってこの回転期間は違いますが、一般的なメーターは「30日」です。
つまり、1か月後に売上代金をお支払いいただくということです。健全な経営をされている企業で、この売上債権回転期間が長いとか、放置されている企業は1社もありません。つまり、工夫次第でそうできるということを現実は示しています。
「取引先の関係でそうもできない」というお声はよく聞きますが、それは工夫・交渉が足りないのではないのでしょうか?
いまの課題を見出す④ 棚卸資産を評価する
最後のチェック事項は在庫、棚卸資産です。
棚卸資産は「決算」をよく見せるためのお化粧品であったり、また不良在庫の温床でもあり、資金を食い潰す資産でもあります。
従って、毎月の在庫状況を目で確認するとともに、数値的にも確認することが大事です。
それを「棚卸資産回転期間」というインジケータ(指標)で見ます。
棚卸資産回転期間(日)= 売上債権 ÷ 平均日商
これこそ業種によって違いますが、生鮮を除く一般的な基準値は「14日」程度でしょうか。
昔とは違い、現在は流通も発達しましたので、それほど企業で在庫は持つ必要はないはずです。在庫を必要最小限に減らすと、仕入も不良在庫も減ります。つまり、会社のぜい肉が減ることになります。
健全な経営をされている企業の多くは、実地棚卸を実行され、在庫の圧縮に力を入れています。
この4点はどの企業にとっても欠くことができない、月次試算表のチェックポイントです。
その他にも自社にとって重要な紅毛はあると思いますが、それらを加えて月次検討会をすれば、会社は見違えるほど良くなります。
毎月月初は月次試算表から現状の問題点を探り、短期の課題を見つけましょう。 必ず、貴社は強い会社に成れます。
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