267.役立つ会計⑤四半期の評価
2016年7月12日
今回の経営に役立つ会計は『四半期の評価』です。
四半期とは3カ月ごとという意味ですが、事業経営にとっては節目の月と云えます。
毎月毎月業績検討の対策を講じ、四半期ごとに目標をクリアしていくという考え方は、健全な経営をするうえで重要な考え方です。
したがって、その評価の仕方も月次評価の短期的な見方と決算評価の中期的な見方とは違う視点も必要となります。
今回はそんな四半期の評価の仕方について説明しましょう。
四半期の評価とは
決算書は終えた事業年度の成績表であり、その位置づけは直近の一年間を振り返り、中期的な課題を見出すための資料でした。
また月次試算表は毎月の成績を計画書(予算)と比べ、基本的にその計画値へ持っていこうとコントロールしていくための資料です。
それに比べ、四半期の評価・検討は、毎月の視点に短期的視点と中期的視点をつなげていく視点を加えます。
四半期の視点① 投資資本に対する利益率を確認する
事業の目的は「利潤」です。事業に資金を投資して儲けることになります。
四半期または半期に一度ぐらいはその点を振り返ることも必要です。
では、それをどのように見ればよいのでしょうか?
それは営業利益と事業に投資している資金とを比べることによって確認できます。
但し、営業利益は年換算する必要があります。事業に投下している資金とは、負債(他人資本)と純資産(自己資本)の合計です。
総資本営業利益率(%)= 年換算した営業利益 ÷ (負債+純資産) ×100
事業としては、総資本営業利益率は20%程度を目指し経営したいものです。
大変高い目標ですが、この程度の目標を持って経営をしないと、営業利益で借入金の返済と内部利益を溜めることはできません。
四半期の視点② 借入金の状況を確認する
次に見たいことは「借入金」です。
借入金は毎月返済していますが、運転資金として増えている場合もあります。また返済のおおもとである売上高も増減しますので、四半期に一度ぐらいは客観的に確認したいものです。
それは借入金(短期+長期)を平均月商と比べることで確認できます。
借入金月商倍率(ヶ月分)= (短期借入金+長期借入金) ÷ 平均月商
一般的には借入金月商倍率は3ヶ月分程度に抑えたいものです。その根拠は単純です。それは企業の営業利益率にあります。
中小企業の平均営業利益率は0.3%です。優良企業でさえ7%と云われています。
仮に営業利益率5%として、その半分を借入金返済に充てるとすると、年間の借入返済可能額は平均月商の30%(=2.5%×12ヶ月)となります。
月商3ケ月分の借入金とは300%ですから、年間の借入金返済可能額30%で割ると、返済に10年もかかることになります。
つまり、もっと営業利益率が高ければ別ですが、通常企業の場合、返済から考えればの月商3ケ月分でも厳しいということが、よく理解できます。
四半期の視点③ 月次採算点を確認する
月次採算点とは「損益分岐点」のことです。
損益分岐点とは、売上がそれ以下であれば赤字、それ以上であれば黒字ということ表す、実際の売上高に対するパーセントです。
それを知って、当社の状況を認識するということです。その損益分岐点を正確に計算するためには書籍に書かれているように、面倒臭い費用の分類と難しい計算が必要となりますが、そもそも会計自体が100%正確であるわけでもないのですから、そこにそんなに神経を使っても無意味とも云えます。
そこで、ここでは実務的にざっくりと参考になる計算をご紹介します。
それは販管費を売上総利益率で割ることで求めることができます。
概算損益分岐点売上高(円)= 販売費及び一般管理費 ÷ 売上総利益率
概算損益分岐点比率 (%)= 概算損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 ×100
この比率が100%を超えているようであれば赤字です。超えていなければ黒字です。
いま中小企業の7割は100%を超えている状況で、その平均値は98.7%程度と云われています。つまりたった1.4%売上が減れば赤字転落になるということです。
出来れば、まずは90%前後、次の目標として80%前後をクリアさせたいものです。
なお、製造要素のある企業の場合は、次のような計算をすれば、より真の損益分岐点比率が計算できます。
概算損益分岐点売上高(円)=(販管費+労務費+外注費+製造経費)÷ 粗利益率 ×100
粗利益率(%)=(売上高-商品仕入高-材料費)÷ 売上高 ×100
徐々に気づかれていると思いますが、「月次試算表や決算書を読む」ということは、結局、財務分析や経営分析をするということになります。だからといって、「財務分析や経営分析を覚えましょう」と申し上げるつもりではありません。
実務で大事なことは、やたら計算式を覚えることではなく「何らかの科目の状況に潜む問題を知るためには何と比べるとそれが判明するのか」ということを考える力です。
現預金残高をじっと見つめていても何もわかりません。前月と比べて増えた・減ったと株価じゃないのですから、そんなことに一喜一憂しても仕方がありません。
過去からの推移を見て、また計画と比べて、さらに他の科目と比べることによって、いまの経営上の課題・問題を掴み、それによって改善の方法と改善目標を設定することです。
このコラムがそのような技術を身につけていただくことに少しでもお役に立てば望外の喜びです。貴社は必ず強い会社になります。
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