275.黒字と赤字、どこが違う⑧
2016年9月3日
第8回 黒字経営と赤字経営の違い
これまで優良企業(黒字企業の上位10%)と赤字企業の違いを、財政状況、損益状況、経営分析から見てきました。
今回はその最終回として、これまで7回に分けて見てきましたその違いについて、まとめてみたいと思います。
詳しくお知りになりたい場合は、該当する過去のコラムを参照してください。
1 財政状況の違い
財政状況とは、どこから事業資金を調達し、何に運用しているのかということです。
(1)事業資金調達の違い
事業資金調達に関しては次の2点が優良と赤字では違います。
①優良企業は自己資本を主な資金源としている
自己資本とは、資本金と内部留保である繰越利益の二つです。
資本金はともかく、繰越利益の源泉は毎期の黒字経営です。
経営環境は優良企業も赤字企業も同じです。また優良企業の経営者だけが特に能力的に優れているとも思われません。
また優良企業だけに優れた社員が最初から集まっているとも思われません。では何なのでしょうか?
おそらく事業に対する想い(経営理念)と経営に対するひたむきさではないかと思われます。
ということは、特別な能力ではありませんから、私たち全員に同じようにチャンスはあると思われます。
そして黒字経営を続け、内部留保である繰越利益を蓄積しているということは、税金を納め続けているということです。
つまり、過度な節税は優良企業への道を狭めるということです。
②優良企業は固定負債が少ない
固定負債とは、金融機関からの借入金です。金融機関の借入金には金利が発生します。売上利益率が低い企業が多い中で、
たとえ低金利時代とはいえ、なかなか負担することは厳しい時代です。いかに、借入をしない経営をするかがポイントです。
③優良企業は営業負債も少ない
流動負債は1年以内に支払わなくてはならない負債をいいますが、そのほとんどは営業活動で発生する負債です。
したがって、営業負債ともいうわけですが、優良企業は赤字企業に比べて少ない状況です。
おそらく、未払費用や預り金が少ないのだと思われますが、月々の経費で無駄を削減することがポイントです。
(2)資金運用の違い
①優良企業は手元資金を豊富に持っている
中小企業は上場企業でも大企業でもないわけですから、手元資金を多く持つことが大事です。ここが経営の要諦です。
店頭公開や上場を目指すなら別ですが、一般の中小企業は手元資金を多く持つことが経営の安全性を高めます。
②余計な在庫は持たない
優良企業と赤字企業の資金運用の違いのひとつは棚卸資産です。圧倒的に優良企業は在庫が少ないことが挙げられます。
在庫を少なくできれば、運転資金も少なくなります。また不良在庫という無駄もなくなります。
当然、仕入も少なくなり、収益性も向上します。
③固定資産も少ない
優良企業は赤字企業に比べると、固定資産が少ないことも大きな特徴です。
固定資産が少ない分、手元資金が豊富になります。
さらに固定資産が少なければ、自己資本だけで購入することも可能となり、銀行借入も少なくなります。
おそらく、積極的に固定資産を少なくするというよりは、固定資産投資に際して設備投資計画をしっかり立案しているのだと
思われます。赤字企業や放漫経営にありがちな「補助金が出るから設備投資をする」なんていう後先逆の考え方はされないと
思われます。
2 損益状況の違い
損益状況に関しては次のような違いがあると思われます。
①売上原価、特に製造原価率が低い
売上原価は仕入原価と製造原価から成ります。
仕入原価割合に関しては大きな違いは見られませんが、製造原価率に関しては大きな違いがあります。
製造原価は材料費・労務費・外注加工費・その他製造経費に分けられますが、チェックする必要があります。
②一人当たり売上高の違い
生産性に関しては一人当たり売上高に大きな違いがあります。
これは優良企業の従業員がたくさん売っているというよりも、優良企業ほど付加価値が高いということです。
小売でいえば、おもてなしや販売の工夫などによって、少々他店より高くてもお客様が多く集まるということだと思います。
一人で売れる販売量には大きな差は出ませんが、付加価値には大きな差が出ます。
③一人当たり人件費が高い
現代はお金だけで働く時代ではありません。されど、高い士気の重要なファクターではあります。
優良と赤字では、月間で一人当たりの人件費に15万円ほどの違いがあります。これは大きな要因です。
いまや「社員を雇用している」という意識から「働いていただいている」という意識が大切です。
人を大事にし、士気を上げ、そして生産性があがれば、きちんと分配するというような組織風土が重要だと思われます。
ぜひ、自社の財務諸表をご覧になり、自社の問題点を把握され、改善されれば如何でしょうか。
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