276.中小企業の経営承継①

2016年9月13日

Ⅰ 中小企業の経営承継の実情

 

1.中小企業は2030年に消滅してしまう?

今年6月6日の日本経済新聞にショッキングな見出しの記事が掲載された。見出しは『中小企業 2030年消滅?』だ。

それによると、1995年中小企業経営者の中心年齢は47歳であったが、20年後の2015年中小企業経営者の中心年齢は66歳となり

20年間そのまま中小企業経営者の中心年齢は推移しているという内容だ。

このままでは14年後の2030年には中小企業経営者の中心年齢は80歳となり、消滅してしまうという論理だ。

乱暴な論理ではあるが、中小企業において経営承継ができていない側面を表している。

企業の99%以上が中小企業であり、そこで働く人は全労働人口の7割を占める。

このままでは日本経済の土台が揺らぎかねない状況となってしまう。 実情はどうなのだろう?

 

2.倒産は減っていない?

一方、企業の倒産件数は減っているという。昨年の倒産件数は8,812件であり、これは1990年以来の低水準という。

そして本年度上期もこの傾向は続いており、アベノミクスの成果だと安倍政権は言っている。

本当だろうか?

この倒産件数というのが曲者で、倒産はあくまで法的に整理された件数のみである。このほかに現実的には法的整理ができなかった

休廃業や解散などがある。この件数は倒産件数には含まれない。

そこで昨年どれだけ休廃業・解散があったかと言えば、実に法的整理案件の3倍以上、26,699件もあったと言われる。

この件数は2000年と比較して6割増となり、倒産に休廃業・解散を含めれば、昨年も35,511件減っていることになる。

もちろん、新規開業率は相変わらず低く、日本の企業件数も日本の人口と同様減少しており、少子高齢化となっている。

 

3.原因は?

では、その原因は何なのだろうか?

企業が倒産、休廃業、解散に追い込まれる原因は、借入金に対する過度な依存だ。

現在の赤字企業割合は7割と言われ、赤字であればもちろんのこと借入金を返済することはできない。

昨年倒産した企業の自己資本比率は△5.6%と言われ、資産より負債が多い状況、債務超過ということだ。

その債務超過に陥って遂に倒産に至る遠因は、2013年の中小企業金融円滑法終了後の金融機関の返済猶予措置にある。

本来であればそこまで傷口を大きくしないで法的整理もできたかもしれないのに、金融機関が金融庁の指導の下、比較的簡単に返済

猶予に応じてくれたから、甘い期待でズルズルと延命し、結局は状況を変えられず力尽きたという感じだ。

 

こうして見てみると、中小企業経営者の高齢化は「後継者難」にあるのではなく、後継することができない「後継難」にあるのではないかと推測できる。 次回はそんな中で経営承継の方法とそれぞれの問題点を考えてみる。

 

 

 

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