277.中小企業の経営承継②
2016年9月19日
Ⅱ 経営承継の方法とその問題点
前回は、中小企業経営者の高齢化は「後継者難」にあるのではなく、後継させることができない「後継難」にあるのではないかと
指摘した。今回はそのような中で経営承継の方法とその問題点を考えてみる。
1.経営承継の方法
経営承継にはどのような方法があるのだろうか。普通に考えると、次のような方法が考えられる。
まず第1に考えることは、親族に承継するということだ。次にそれが無理であれば、親族以外の社員に承継することだ。
さらにはよく新聞等にも出ている、第三者への譲渡・M&Aも考えられる。また可能性は低いが株式を公開することも考えられる。
そして最後は、継承ではなくなるが、諦めて会社を清算するということも考えられる。
では、これらそれぞれにどのような問題があるのだろうか。
2.それぞれの問題点
(1)親族に経営承継する場合の問題点
一番の問題点は「親族が後継社長になる能力があるのか」ということである。
成熟社会となったいま、二世経営者には、創業者以上の経営能力と資質が求められる。
また時代が早く変わる中では、第2創業とでも呼べる、創造力も必要になる。
ソフトバンクやユニクロなど事業が成功している多くの大企業でも創業者が一旦退きながら創業者が復活している例が数多くある。
中には、大塚家具のように創業者と二世が争うこともある。
これらはすべて、この問題を表している。
(2)親族以外の社員に経営承継する場合の問題点
社員に継承する場合は「社員に後継社長になれる能力があるのか」ということである。
なれる能力とは、親族後継者と同様に経営能力・資質・創造力が挙げられるが、加えて親族以外の場合は、会社を買い取る資金力や
会社の負債に対する担保力、個人保証に対する決意など、ある程度の財力・担保力も必要となる。
(3)第三者へ譲渡(M&A)する場合の問題点
この場合の問題点は、一部の中小企業を除き、普通の中小企業を買い取ってくれる事業者が現れるのかということである。
普通の中小企業は資産も技術もノウハウもさほどないのが実情である。そんな会社を買い取ってくる事例は現実的には少ない。
(4)株式を公開する場合の問題点
これは考え方としては成り立つが、多くの中小創業者にとってはM&Aよりも「夢のまた夢」、夢物語に近い。
日本の法人企業のうち、株式公開している企業は、わずか0.13%という数値がよく表している。
(5)会社を清算する場合の問題点
会社を清算するにも、社員の解雇、退職金、再就職など、そのハードルは高い。また精算費用もバカにならない。
さらには、多くの場合、清算しようとすると借金だけが残ってしまうというのが実情だ。
したがって、休廃業・解散が多くなる。
こうして見てみると、いずれにせよ、その根底には、経営承継のためには『財務の健全化』がその大前提になることがわかる。
次回はそんな中小企業の経営実態を具体的に考えてみる。
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