288.420万経営者のための会計8

2016年12月3日

セクション8 総資産の見方 -その4ー

 4 固定資産の見方

固定資産とは、会社の設備や車両、建物、土地などです。

固定資産は売上債権や棚卸資産のように資金化できない分、企業経営において、実は非常に大きな影響を持っています。

そんな固定資産はどのように見ればよいのでしょうか? 一緒に考えてみましょう。

 

(1)固定資産の目的

会社所有の車や建物・土地などを想定するとあまりピンと来ないかもわかりませんが、

固定資産購入の目的は、直接的・間接的な意味を含めて「売上を上げるための設備」と定義されます。

また売上債権や棚卸資産のように短期間で資金化されませんが、

減価償却という会計処理を通じて、長い年月をかけて運用されていくという特徴があります。

この二つが、固定資産を見る場合のポイントとなります。

 

(2)自社の固定資産生産性を確認する

一つ目の見方は、固定資産が売上を上げるためにどれだけ有効に活用されているのか、ということです。

そのことを「固定資産の生産性」と言います。

それには、売上高と固定資産を比べます。そのことを『固定資産回転率』と呼んでいます。

 固定資産回転率 = 年間売上高 - 固定資産

◆業種にもよりますが、一般的に、この数値が4回転を切るようでは設備過剰と言えます。

 自社の設備の稼働率などを確認してみる必要があります。場合によっては処分なども検討します。

◆年間で4回転が目標であれば、12で割ると月間では0.33回転が目標となりますので、月次チェックにも活用できます。

特に業歴が長い中小企業においては過剰設備の場合が多いので、思い切ってメスを入れる必要があるかもわかりません。

 

(3)自社の固定資産設備の資金の出どころを確認する

二つ目の見方は、固定資産設備のお金の出どころです。

固定資産は長く使いますので、金利の高い『短期借入金』を資金とするのではなく、できれば『自己資本』で、

自己資本だけで足りない場合はプラス長期借入金など『固定負債』を財源に購入したいところです。

そこで、固定資産の資金の出どころを見ます。そのことを『固定比率』と呼んでいます。

 固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本(純資産)

◆この数値が100%以下であれば、設備投資はすべて自己資金で賄っているということになります。

 極力、この数値が100%を超えない範疇で自社の設備投資を考えることが経営管理上の大きなポイントです。

この補完的な見方で、自己資本に固定負債を加えて見るという見方もあります。『固定長期適合率』と呼ばれています。

 固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本+固定負債)

◆この数値は100%以下に抑えることが経営管理上のポイントです。

 100%を超えている場合は、資金的に見て明らかに過剰設備です。

 

(4)設備投資する前に採算性を確認する

では、過剰な設備投資をしないためにはどうすればよいのでしょうか?

それは「設備投資をする前に、その採算性を確認する」ということです。

多くの中小企業では、売上を増やすために設備を増設したり、工場を建てたり、あるいはトラックを購入する行動が散見されます。

また人を増やすということもよく見られますが、それも同じことです。

たとえば、1000万円の設備投資するために、全額を7年返済・金利2%で金融機関から融資を受けたとします。

すると1年間で返済額だけで140万円余り、金利は20万円ほどになります。

◆そのためにはこの設備投資で、最低でも金利負担後で年間約200万円の利益が出せないと採算が合わないということです。

 内部留保のことを考えれば、それ以上の利益を出さなければなりません。

このような計画が立てられて始めて、設備投資するかどうか、検討できることになります。

それ以外は、ほとんどの場合が、経営状況をさらに悪化させる結果となります。

◆まして人の採用の場合はさらに慎重な検討が必要です。

 人は設備と違い、最初から思い通りの成果が出ると限りません。さらに設備と逆で、年々その費用(人件費)は増えて行きます。

 

これらが最初に「固定資産は、企業経営において実は非常に大きな影響を持っている」と言った理由です。

 

 

今回は自社の『固定資産』の見方を勉強しました。

その要点は

 1.固定資産の生産性を見る。『固定資産回転率』

 2.固定資産の資金の出どころを見る。『固定比率』および『固定長期適合率』

 3.設備投資の際には、採算性を確認する                     以上です。

 

次回は、損益の見方をご紹介します。 おたのしみに!

                                                   (次回へつづく)