291.2017年の経営テーマ

2016年12月26日

■2017年度の経営テーマは『高付加価値化』

海外市場はともかく、国内市場は少子高齢化による人口減少で、市場規模は徐々に縮小する方向へ進んでいます。

つい最近も厚労省から2016年の人口動態調査の推計が発表されましたが、

16年の出生数は1899年の統計開始以来、初めて100万人割り込む見込みだそうです。

そこで今回は「経営の高付加価値化」の重要性について考えてみます。

 

1.経営の高付加価値化とは

  経営の高付加価値化とは付加価値を上げるという意味ですが、経営学的には控除法や積上げ法という難しい定義があります。

  しかし簡単に言えば、売上総利益を高める、あるいは営業利益を高めるいうことに他なりません。

  売上総利益は「売上高-売上原価」で求められますので、同じ売上高であれば売上原価を減らすか、操業度を高めて売上自体を

  増やすか、ということが考えられます。

  営業利益は「売上総利益ー販売費及び一般管理費」で求められますので、

  いまほどの売上総利益を増やすか、販売費及び一般管理費を減らせば営業利益を増やすことができます。

  つまり、「経営の高付加価値化」には3つの道があることになります。

  第一法 売上高を高める

  第二法 売上原価を減らす

  第三法 販売費及び一般管理費を減らす

 

2.経営の高付加価値化をもたらす主体者は誰なのか

  では、経営の高付加価値化をもたらす主体者は誰なのでしょうか。

(1)売上高を高めるのは誰か

  製造業であれば操業度を高めるという側面がありますので、機械とも考えられます。

  しかし、機械をうまく操るのもヒトであれば、その他の業種においては売上高を増やすのはヒトです。

  つまり、売上高を高めるのは、そのほとんどが従業員であり、社員です。

(2)売上原価を減らすのは誰か

  売上原価を減らす、あるいは効率良く使用するには、在庫調整や仕入れ調整をする必要があります。

  では、その調整や管理、あるいは意思決定は誰が行うのでしょうか。

  ツールとしてコンピュータなどの機器やソフトウェアはもちろん必要ですが、

  それを活用して調整や管理、意思決定するのはヒトです。 やはり、従業員であり社員となります。

(3)販売費及び一般管理費を減らすのは誰か

  販売費及び一般管理費を削減すれば、その分だけ営業利益を高めることができます。

  それらの経費を管理し、減らすのは誰でしょうか。 やはり、ヒトであり、従業員あるいは社員です。

 

  つまり、長々と書きましたが、経営の高付加価値化をもたらすのは、機械や製品も確かに一部の要因として認められますが、

  そのほとんどの部分はヒト、従業員であり社員によってもたらされるということです。

  したがって、これからはますます「ヒト」の力が、経営にとって重要になります。

 

3.これからの事業は第4次産業化していく

  まず、産業の推移のおさらいをしてみましょう。

(1)日本の産業推移

  第一次産業とは、農林業、漁業、鉱業などです。主に土や海など、自然から得る産業です。

  終戦直後、経済界を引っ張って来た産業です。

  第二次産業とは、第一次産業で生産した原材料を加工する産業のことです。

  麦から小麦粉やパンを、木材から家を、魚から練り物など、鉄鉱石から銑鉄を、鉄から自動車を、製造する産業群です。

  つまり、製造業や建築業・工業などはすべて第二次産業となり、主に機械設備を用いる産業のことです。

  「もはや戦後ではない」と言われた昭和30年代から隆盛を誇って来た産業です。

  第三次産業とは、第一次にも第二次にも入らない産業を指し、主にサービス業のことをいいます。

  小売業や運送業、飲食業、宿泊業や教育・介護・医療・金融・保険など、形ににならないものを扱う産業です。

  つまり、第三次産業は「人」が中心の産業です。

  高度成長期後から徐々に産業の中心を占め、現在では全産業の75%の従業員が従事していると言われます。

   ちなみに、貧困国は食べていくことが中心となりますので、第一次産業が中心になります。

  そしてお金が貯まり出すと、その資金で工場などを建て、第二次産業へ移行していきます。

  さらにモノが溢れだすと、モノ以外のことにお金を使うようになり、生活の充実や長生きなどに資する第三次産業が

  拡大していきます。

  現在の日本はそれも卒業しつつあり、まさに成熟社会へと移行しようとしているところでしょうか。

(2)第4次産業の誕生

  成熟社会にある日本や先進諸国では、さらに安心・安全・豊かさなどを求め、情報産業や医療産業、教育サービス業、

  健康産業などの知識集約産業へ移行しています。

  これらは従来、第3次産業に分類されていたものですが、それぞれが異なった産業として発展したり融合したりして、

  まったく違った産業に発展して行っているので、新しく提唱され始めた分類の概念が第4次産業です。

  それを強く後押ししているのが、コンピュータテクノロジーであり、ITやロボット、AI、IoTなどテクノロジーです。

  それともう一つ、それらをバックボーンにした「おもてなし」、つまりヒトによるサービスです。

 

4.今後の付加価値化には「ヒト」が鍵となる

  このように産業の推移を見てみると、今後はテクノロジー(技術・製品)だけでは差別化の決定打とはならず、

  最終的にはヒトによるサービスが差別化の決定打となってくることがわかります。

  そういう背景の中で、いまのライフ・ワークバランスの推進や正規非正規の格差是正、同一労働同一賃金などの議論を

  眺めてみると、あらためてその重要性がよくわかります。

   高付加価値化を実現するのはやはり「ヒト」なのです。

  そのため、高人件費化に伴う高固定費化を予測すれば、「経営の高付加価値化」を重要性があらためて理解できるかと

  思いますが、いかがお考えですか。