7.管理会計の活かし方
2009年7月11日
管理会計資料の活かし方とは
会計資料は足し算・引き算によって作成されています。したがって作成された資料(貸借対照表・損益計算書)をいくら見ても、各科目残高と利益金額ぐらいしか分かりません。
そこで貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を加工して、経営に活かせる資料を作成しなければなりません。それらの資料を総称して「管理会計資料」と呼びます。次に主な管理会計資料を紹介します。
対比
「対比」とは金額を比べることです。金額を何と比べるのか、次のようなものが上げられます。
(1)前年同月比較:当年の単月と前年同月の単月との比較
(2)前年同期比較:当年期首から当月までの累計と前年同期の累計との比較
(3)前年同日比較:当年の何月何日現在の実績と前年の同日値との比較
(4)同業他社比較:当社と同じ業種との比較。さらにその中で黒字企業だけを抽出した黒字企業比較や赤字企業比較などもある
(6)移動合計比較:現在から1年間遡った累計値とその前の1年間との比較
構成比
「構成比」とはある数値を100%として、その構成割合を表示したものです。
例えば・・
BSであれば、総資本(総資本)を100として構成比を出せば、純資産合計の構成比は「自己資本比率」になります。また長期借入金をみれば、調達資金でどのくらい間接金融に頼っているのかなどが分かります。
PLであれば、売上高を100として構成比をみれば、粗利益率や営業利益率をはじめ、各経費比率もわかります。それによって売上100円に対しての利益や経費割合が掴めるようになります。
経営実績一覧表
BS・PLの横並び一覧表。月次帳表では気づくことができなかった、業績の推移や傾向が分かります。
決算書一覧表
10年間ほどの決算書の一覧表。時系列に管理することによって自社の問題点が浮き彫りとなります。会社の財政や業績状況は突然おかしくなりません。必ず変化には「予兆」があります。スポット的な見方では気づかない「後悔、先に立たず」を防ぐことができます。
財務分析
再三言いますが、BS・PLはいくら見つめても金額は分かるが、それ以上のことは分かりません。数値を比較することによって、BS・PLは様々な自社の状況を語り出してくれます。その比較することを「財務分析」とか「経営分析」といいます。財務分析には予め決められた算式(公式)で求められる財務分析値が100種類ほどありますが、それらに縛られることはありません。自社の問題を浮かびあがらせる計算式があれば、それも立派な財務分析です。例えば、生産性を図る財務分析として「一人当たり売上高(売上÷従事員数)」がありますが、ある生産ラインをもって製造・販売している会社であれば、それよりも「A製品売上高÷A製品生産ライン資産高」を管理した方が遥かに重要となる場合もあります。
損益予算管理
これはPLに予算欄を設け、予算と実績を把握し、目標達成のために統制する資料です。これを作成するためには、経営計画又は売上高・経費予算、次期利益計画を作成しなければなりません。しかし、それほど堅苦しく考えず、日頃考えている範囲から作成すればよいと思います。例えば、売上高・・来年は6,000万円ぐらい目指したいと考えているのであれば、そこからスタートすればいいわけそれで良いわけです。じゃ、粗利はいくらですか?うーん、40%ぐらい・・。では利益は?100万円は残したい。で、出来上がりです。来期の予算は売上高6,000万円、原価3,600万円、売上総利益2,400万円、経費2,300万円、経常利益100万円。これに人件費の予定があれば、経費が人件費とその他経費に分けられます。では、月次は?すべて12分の1にすればいいのです。季節性や実績を参考に月次展開しても覚えていませんよね。でも12分の1にすれば、売上高は月々500万円と暗記ができ、日々売上が把握できれば管理力として発揮できます。いま350万円だから、もうひと頑張りだとか。私たちは上場企業でも大企業でもありません。ますはそんなところからスタートすれば、いいのではないのでしょうか。
資金管理
PLは発生ベースの計算書であって、現金ベースの計算書ではありません。つまり、利益(儲け)=現金ではないということです。売上は、受注-納品-請求-入金という流れで資金化されます。不確かな現在、資金ベースでの管理は必須です。資金管理は、現預金収支計算書としてPL・BSから作成するものです。
部門別損益管理
PLは会社全体の経営成績表です。部門別はそれをセグメントして、部門別にPLを作ることです。多くの会社では「うちはそんな規模の会社じゃないから部門別なんて不要だよ」と言われますが、果たしてそうですか。確かに部門別に管理するほど人はいないし、営業所もないかもわかりません。しかし、どんなご商売であっても利益の源泉はいくつか必ずあります。たとえば、いまや業界自体がなくなるかどうかの米穀業界・・。廃業は凄まじいものがあります。しかしよくお米屋さんを見ると、お米だけを売っているわけではありません。乾物をおいたり、荷物の取次ぎをしたり、また調味料をおいたりと、生き残るために懸命に頑張っておられます。その一つひとつが利益の源泉です。それを部門別に管理することによって、採算管理となり、結果、業態変更の意思決定をしたり、ウェイトを変化させたりできるわけです。ですから意外と多くの会社で部門別は実行できますし、また有益な管理会計資料となります。
インプルーブ研究所に参加されている会計事務所では、このような管理会計指導を巡回監査という業務を通じて皆さまの企業経営をサポートされています。
ご意見・ご質問・ご感想等ははお問い合わせメールにて、お願いします。