299.簿記の基本 給与の仕訳
2017年2月18日
第7回 簿記の基本「給与の仕訳」を知ろう
人件費は、社会保険の加入問題や賃金値上げの問題あるいは働き方改革による残業の問題など、
中小企業にとってこれからますます大きな経営課題となり、費用的にも大きな負担となって来ます。
そこで今回は、そんな人件費に関する「給与の仕訳」について勉強します。
1.毎月の給与支払処理
毎月の給与支払額は、支給総額から預かった本人負担分の健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料と
本人が支払う源泉税・住民税の預り金額を差し引いた金額となります。
したがって、仕訳は次のようになります。
《費用の計上》 《資産の減少および負債の計上》
給与 / 預金又は現金 ¥給与支払額 *本人に支給する差引後の給料です
給与 / 預り金(健康保険料) ¥本人負担分 *本人が支払うべき社会保険料です
給与 / 預り金(厚生年金保険料) ¥本人負担分 *(同上)
給与 / 預り金(雇用保険料) ¥本人負担分 *(同上)
給与 / 預り金(源泉所得税) ¥本人納付分 *本人が納めるべき所得税です
給与 / 預り金(住民税) ¥本人納付分 *本人が納めるべき住民税です
これらの金額を合計すると、本人の給与総支給額と一致することになります。
2.社会保険料の納付
社会保険料は、給与から預かった本人負担分と会社負担分を合わせて、会社が納付します。
会社負担分は法律に定められた厚生費ですから、「法定福利費」に分類します。
《負債の減少および費用の計上》 《資産の減少》
預り金(健康保険料) / 預金又は現金 ¥本人負担分 *預かっていた社会保険料の支払です
預り金(厚生年金保険料) / 預金又は現金 ¥本人負担分 *(同上)
法定福利費(健康保険料) / 預金又は現金 ¥会社負担分 *会社が負担する社会保険料の支払です
法定福利費(厚生年金保険料) / 預金又は現金 ¥会社負担分 *(同上)
法定福利費(児童手当拠出金) / 預金又は現金 ¥会社負担分 *(同上)
これで預かった健康保険料と厚生年金保険料はゼロクリアされ、会社負担分に計上されます。
預かっている雇用保険料については、毎年6月の労働局への納付時に前年の精算を行い、同時に本年度納付の仕訳をします。
3.社会保険料と労働保険料の負担区分
ここで参考までに社会保険料と労働保険料の負担について確認しておきましょう。
(1)社会保険料 本人負担 / 会社負担
①健康保険料 労使で折半します。 半分 半分
②厚生年金保険料 同じく、労使で折半です。 半分 半分
③児童手当拠出金 全額、会社負担です。 なし 全額
(2)労働保険料
①労災保険料 全額、会社負担です。 なし 全額
②雇用保険料 本人1000分の4負担、会社1000分の7負担です。 4/1000 7/1000
③一般拠出金 全額、会社負担です。 なし 全額
なお、役員は労働保険の対象外ですから、労働保険料は不要です。
こうやってみると、結構、会社にとって社会保険料等の負担が大きいことがわかります。
いま現在、社会保険に加入していない中小企業が多いと言われていますが、これから全加入が徹底されますし、
保険料もまだまだ増えることが予想されます。
中小企業も立派な職場ですから、保険料が負担となるとしても、従業員さんのことを考えれば加入は当然のことです。
4.源泉所得税と住民税の納付
本人から預かっていた源泉所得税と住民税は、会社が本人になり代わって納付します。
《負債の減少》 《資産の減少》
預り金(源泉所得税) / 預金又は現金 ¥本人納付分 *預かっていた源泉所得税の支払です
預り金(住民税) / 預金又は現金 ¥本人納付分 *預かっていた住民税の支払です
今後は否が応でも、人件費は給与の昇給や社会保険料の負担増などで、増加していくことが見込まれます。
経営マネジメントとしては、小規模であればあるほど影響が大きくなりますので、人件費をしっかり把握しなければなりません。
そして同時に労働分配率(付加価値に占める総人件費の割合)の管理を行い、
労働分配率は極力あがらないようにしながらも(つまり付加価値を増やすということ)、給与支給額(給与)は増える
というようにしたいものです。
それが真の「会社の生産性向上」です。 こうやって会計でいろいろ考えてみると、会計って面白いものだと思いませんか。