300.簿記の基本 売上の仕訳
2017年2月26日
第8回 簿記の基本「売上の仕訳」を知ろう
売上は、企業にとって活動資金の源泉(みなもと)です。
基本の仕訳は『売掛金/売上高』であることは誰でもが知っていることですが、
今回はもう少し詳しく会計処理することで「経営に役立たせる方法」を考えます。
1.(消費)税込みにはしないで税抜きにする
売上には必ず消費税が含まれています。
本来の売上高と消費税を分けないで会計処理する方法を『税込経理』といいます。
分けて会計処理をする方法を『税抜経理』といいます。
消費税の税率は3%から始まり、5%、そして8%となりました。
平成31年10月からは10%に上げるごとが予定されており、その後も上がることが予想されています。
多くの中小企業では税込経理が多いようですが、これだけ消費税率が上がってくると、
消費税の納税額も増えてきますので、日頃から税抜経理を行い、納付額を管理する必要があります。
また税込経理では売上高が着膨れ状態になりますから、一見、売上が増えているように見え、
経営判断を誤ることも起こりえます。
したがって、会計処理は必ず『税抜経理』でやらねばいけないと、肝に銘じましょう。
2.基本となる売上の経理処理
《基本となる売上計上の仕訳》
売掛金 / 売上高 ¥本体の売上高
売掛金 / 預り(又は仮受)消費税 ¥消費税
*まず本体価格(税別)の売上を計上し、別途消費税を計上します。相手科目はいずれも『売掛金』となります。
たとえば、本体10,000円、消費税800円のモノを売ったとすると次のとおりです。
売掛金 / 売上高 ¥10,000
売掛金 / 預り(又は仮受)消費税 ¥800
となり、本来の売上高はいくらで、いくら消費税を預かっているのかが、わかるようになります。
消費税の納付額は「預かった消費税-仮に支払った消費税」という差額になりますので、
常にこの差額だけ消費税納付時の「必要資金」になります。
したがって、たとえば「納税預金」を開設し、そこに消費税納付額相当の預金をしておけば、スムーズな納税ができます。
いま、消費税を納付していない企業が数多くあると言われていますが、納税をなめてはいけません。
納税は企業の務めであり、もっとも基本的な企業の社会貢献です。
納税していない企業には、いずれキツイしっぺ返しを受けます。
3.経営に役立つ売上の経営処理
上記の経理処理は基本ではありますが、どうせ自社で経理処理をするならば、もう少し経営に役立つ処理をしたいものです。
そこで、
①売上高を2つに分ける
②売掛金は取引先別に分ける
ことを提案します。
・売上高を2つに分けるとは、「既存売上高」と「新規売上高」に分けます。
企業は売上が増えていかないといずれは衰退・破綻します。その意味では、常に新規売上高がないといけないということです。
たとえば、固定した取引先を軸にリピートしたモノを売っている形態の企業であれば、
新しい取引先の売上高あるいは既存の取引先でも新しいモノの売上高を「新規売上高」に集計しようということです。
不特定多数の顧客に販売している小売業であれば、これまでの商品売上は「既存売上高」に計上し、
新規商品の売上高は「新規売上高」に集計しようということです。
このようにすることで、既存の売上が増えているか減っているかもわかり、新規の売上の増え具合も分かるようになります。
・売掛金を取引先別に分けるとは、売掛金一本に計上しないで、取引先ごとに分けて計上しようということです。
そうすることによって、取引先別の売上高状況や売掛金残高も把握できるようになり、
販売戦略や売掛金管理に役立つようになります。
・できるのであれば、売上高もそれぞれ取引先別に計上することが理想的です。
すると会計処理はどうなるのか? 上記の例で確認しましょう。
売掛金+取引先 / 既存又は新規売上高+取引先 ¥10,000
売掛金+取引先 / 預り又は仮受消費税 ¥800
この売掛金はどこの取引先か、売上は既存か新規か、この売上はどこの取引先か、たったこの3つが加わるだけです。
消費税は変わりません。
これで売掛金管理も、消費税の納税額管理も、売上の状況もすべてが明確にわかるようになります。
いままではこれらをどんぶり、あるいは経営者の勘で勘定していたわけです。 それがハッキリと把握できるようになります。
現代は成熟社会ですから、いままでのような粗い管理では中小企業も生き残っていけません。
いま会計処理はパソコンでするわけですから、ほとんど労力的には負担増にはならずに、会計情報が生き生きしてくると
思いませんか!?