303.簿記の基本 リースの仕訳
2017年3月18日
第11回 簿記の基本「リースの仕訳」を知ろう
多くの会社ではいろいろなモノをリースで利用されているかと思います。
さて、そこでリースの会計処理はどうされていますか?
単純に「リース料/現預金」という仕訳だけでは、正しい財務状況を読めなくなる場合もあります。
会計は何度も申しあげているとおり、自社の経営状況を正しく把握し、経営を管理するためのものです。
そのスタンスから見れば、大きな問題を隠すことにもなりますので、正しい財務状態を表す「リースの仕訳」を勉強しましょう。
1 リースとは
まず、最初に「リース」そのものについて学びましょう。
(1)リースには3通りある
リースと一口に言いますが、その契約形態によって、3種類のリース取引があります。
それぞれのリース取引によって、会計処理の仕方が違いますので、このことをまず理解する必要があります。
(2)所有権移転ファイナンス・リース
一つ目は「所有権移転ファイナンス・リース」です。
この契約はリース会社からおカネを借りて、そのおカネで機械を購入し、機械を使いながら借りたおカネを利子をつけて
返済する契約です。
「リース」という名前はついていますが、ほとんど購入しているのと変わりません。
途中解約はできず、機械が故障すれば自分で修理代を負担し、リース期間が終了すれば自分のものになります。
(3)所有権移転外ファイナンス・リース
二つ目は「所有権移転外ファイナンス・リース」です。
この契約は所有権移転ファイナンス・リースとほとんど同じですが、リース期間終了後の取り扱いだけが違います。
つまり、リース期間が終了しても自分のものにはなりません。
使い続けるためには、再リース料を支払うか、あるいは自分のものにするために買い取り費用などが必要になります。
日本におけるリースは、ほとんどの場合、この「所有権移転外ファイナンス・リース」です。
(4)オペレーティング・リース
三つ目は「オペレーティング・リース」です。
この契約はリース会社から借りているだけの契約です。
ですから、故障した場合にはリース会社が負担して修理できますし、機械を保有している実態もなければ、おカネを借りている
実態もありません。リース期間が終了すれば、借りている機械は返却しなければなりません。
この実態に即して会計処理をしなくては、会計を通じて正しい自社の財務状態が把握できなくなります。
2 リースの仕訳
(1)所有権移転および所有権移転外ファイナンス・リースの場合
事例:キャッシュで購入した場合の価格 500万円
リースをしたときの支払総額 600万円(12万円×50回)
【取得したとき】
資産科目:リース資産 5,000,000 / 負債科目:リース債務 5,000,000
[解説]リース資産は購入した時と同じ価格で計上し、リース債務はリース総額ではないことに注意!
この仕訳で借金をして、設備投資をしていることが財務諸表に反映されます。
【リース料を支払ったとき】
負債科目:リース債務 100,000 / 資産科目:現金又は預金 120,000
費用科目:支払利息 20,000
[解説]リース料12万円は、元金部分はリース債務に、利息部分は支払利息に分けます!
費用科目:減価償却費 100,000 / 資産科目:減価償却累計額 100,000
[解説]できれば、減価償却費も毎月計上しましょう!
【決算のとき】
資産科目:減価償却累計額 1,200,000 / 費用科目:減価償却費 1,200,000
[解説]一度、概算の減価償却費をゼロクリアします!
費用科目:減価償却費 1,200,000 / 資産科目:リース資産 1,200,000
[解説]機械を購入した場合と同じ方法で正式な年間の減価償却費を計算して、再度、減価償却費をするとともに、
リース資産を減算します!
(2)オペレーティング・リースの場合
事例:キャッシュで購入した場合の価格 500万円
リースをしたときの支払総額 600万円(12万円×50回)
【取得したとき】
資産の取得も借入もありませんから、仕訳は必要ありません。
【リース料を支払ったとき】
費用科目:リース料 120,000 / 資産科目:現金又は預金 120,000
[解説]単純に借りているだけですから、リース料に対して元金部分も利息部分もありません!
自分の資産でもありませんから、減価償却費も発生しません!
【決算のとき】
仕訳は必要ありません。
このように実態に即した会計処理をすると、作成されてくる毎月の試算表も本当の会社の状況を表すようになります。
これに経営者として「会計識字力」を鍛えれば、自社の経営課題や問題点が読み取れるようになり、強い会社としての運営が
可能となって来ます。ですから、「会計は会社を強くする」というわけです。