304.簿記の基本 引当金の仕訳
2017年3月29日
第12回 簿記の基本「引当金の仕訳」を知ろう
12回のテーマは「引当金」です。
引当金という会計用語は聞いたことがある方は多いかと思いますが、しかしその意味となるとご存知でない方も多いようです。
そこでまずは「引当金」の意味から勉強しましょう。
1 引当金とは
引当金とは、将来発生すると思われる損失や費用などの支出に備えて、前もって準備する見積金額のことです。
その金額が合理的に見積もることができれば、費用もしくは損失として引当金にします。
一般的には「合理的に見積もる」ことに注意が行きがちですが、
大切なことは「引当金とは将来発生するトラブルや支出に備えた金額である」ということです。
そんな引当金科目としては『貸倒引当金』『賞与引当金』『退職給付引当金』などが挙げられますが、
経営に役立つ会計にするためにもそれぞれの会社の実情に応じた引当金を考えてもよいのではないのでしょうか。
2 賞与引当金の仕訳
賞与は通常、夏と冬の2回、支給しますが、その性格はそれぞれ半年間の業績給的な意味合いとして支給します。
したがって、賞与は6月と12月に支給するとしても、費用的には月々発生しているとも考えられます。
そこで正確な月次損益計算をするために、『賞与引当金』を設定し、概算の賞与額を計上します。
(1)月次の賞与引当金の計上
賞与 / 賞与引当金
[解説]例えば、夏の賞与総支給額として600万円を予定しているのであれば、100万円を賞与引当金として計上します。
この仕訳で、費用として『賞与』が100万円計上され、まだ支払ってはいませんから流動負債に『賞与引当金』として
他人資本による資金調達として計上されます。
(2)賞与支給月
①まずこれまで概算計上している賞与額を戻します
賞与引当金 / 賞与
[解説]これまで概算計上してきた賞与と賞与引当金を一旦、ゼロクリアします。
②実際の賞与支給額をあらためて計上します
賞与 / 預金又は現金
/ 預り金
[解説]振込んだ賞与金額は「賞与/預金又は現金」で計上し、預り社会保険料及び源泉税は「賞与/預り金」で処理します。
これで正式な賞与総額が『賞与』に計上されることになります。
退職給付引当金の仕訳も同じ要領です。ただし、退職給付引当金は退職金の積立ですから、固定負債に表示されます。
貸倒引当金については、No.302の経営会計コラムを参照ください。
3 引当金に関して経営上大事なこと
(1)引当金は将来の資金支出
最初に「引当金とは将来発生すると思われる損失や費用などの支出に備えて、前もって準備する見積金額」と説明しました。
そして「大切なことは将来発生するトラブルや支出に備えた金額である」と紹介しました。
つまり、経営上で大事なことは「引当金とは、将来の資金支出を予測した金額である」ということです。
『貸倒引当金』であれば、それだけ売掛金入金が減る可能性を示しています。
『賞与引当金』や『退職給付引当金』は、そのときが来れば支出しなければならない金額を示しています。
このように引当金は「いずれ必要となるキャッシュ」を現しています。
(2)引当金と同額以上の預金額を確保する
ということは、引当金とはその金額だけのキャッシュを持つように経営しなければならないということを示しているのです。
『納税準備預金』という言葉がありますが、それと同様に『引当支払準備預金』とでも呼ぶべきキャッシュを準備しておく
マネジメントが大事ということです。
「ともかく会計処理さえすれば良い」と思われ、そこまで頭が回らない経営者を多く見られますが、
会計は、会社の真の姿を現すとともに、何度も言いますが会社経営を強くするためのツールなのです。
そのことをよく理解すれば、会計処理の価値は経営にとって非常に高いものとなります。
このような会計をすると、毎月の試算表で資金繰り管理も行えるようになり、経理事務は経営管理業務に発展します。
このような考え方の会計処理を『管理会計』と呼びますが、
現代は会計を算盤ではなくパソコンという情報処理機器で行っているわけですから、ぜひ、ここまで高めたいものです。
また、このような会計処理をされると、あなたの会社をいっそう強い会社にできるようになります。 これは真実です。