306.簿記の基本 戦略経営(2)
2017年4月7日
第14回 簿記の基本「戦略的な経営に資する経理とは(2)」
前回はまとめとして、
①仕訳の組み合わせ ②資金使途目的別に預金口座を開設する ③預金残高のチェックの仕方 を紹介しました。
今回は売上、売掛、たな卸についてまとめます。
1 売掛金と売上高の仕訳
(1)得意先別に仕訳する
戦略的な経理とするためには、売掛金と売上高は「売掛金/売上高」と1本で仕訳するのではなく、
「売掛金+得意先/売上高+得意先」のように得意先単位で仕訳します。
そうすることで、得意先別の売上高と得意先別の売掛金残高管理ができるようになり、
得意先ごとの売上動向や得意先ごとの売掛金回収状況などが掴めます。
(2)消費税抜きの経理処理をする
× 売掛金 ¥税込金額 / 売上高 ¥税込金額
◎ 売掛金+得意先 ¥税込金額 / 売上高+得意先 ¥税抜金額
/ 仮受消費税 ¥消費税金額
税抜経理をすると、売掛金管理は税込金額で、売上高は税抜きの正味売上高で管理できるようになります。
税込経理では現在でも常に8%上乗せした売上高管理になってしまっています。
平成31(2019)年10月からは10%になります。 もう税込経理では経営管理はできません。
2 売掛金の回収リスク仕訳「貸倒引当金」を計上する
売掛金は100%回収できるとは限りません。いうまでもなく、多くの企業が倒産の危険性にさらされています。
そこで売掛金100%を前提にした資金管理しないように、そのリスクを織り込んだ資金管理をする必要があります。
その経理処理が「貸倒引当金」の仕訳です。
※詳しくは、302.簿記の基本 貸倒れの仕訳を参照してください。
3 たな卸資産の仕訳
(1)たな卸の仕訳を入れないと売上総利益が計算できない
正確に言えば少し違いますが、「粗利」とも呼ばれることがある売上総利益は「売上高ー売上原価」で計算します。
ですから売上原価が計算できないと、売上総利益は計算できません。
その売上原価を計算するためには、毎月「たな卸資産」を仕訳する必要があります。
売上原価の計算 = 期首(月初)たな卸高 +期中(月中)仕入高 -期末(月末)たな卸高
(2)たな卸計上の要領
①期首月1日に、期末のたな卸資産を「期首たな卸高」へ振り替える。
②期首月末日には、「月末たな卸高」を計上する。
③期首第2ヶ月目から期末月の1日には、前月末のたな卸資産を「月初たな卸高」へ振り替える。
④期首第2ヶ月目から期末月の末日には、「月末たな卸高」を計上する。
*期末月の月末たな卸高は期末たな卸高となります。
※詳しくは、296.簿記の基本 たな卸の仕訳を参照してください。
このようにすることで、得意先別の売上動向や売掛金の回収状況、そして毎月の正しい月次損益を把握することが
できるようになります。 「戦略的な経営」に資する経理にするためにも、ぜひ理解しましょう。