308.簿記の基本 戦略経営(4)

2017年4月21日

第16回 簿記の基本「戦略的な経営に資する経理とは(4)」

第3回のまとめは

 固定資産の ①リース(資産)の仕訳  ②減価償却の仕訳 でした。

第4回のまとめはいよいよ右側に移り、負債に関する戦略的な仕訳をまとめます。

 

1 買掛金と仕入高の仕訳

買掛金と仕入高の関係は、売掛金と売上高の関係と同じような関係にあり、それらは表裏の関係にあります。

したがって、売掛金と売上高の仕訳と同様に、仕入先別に仕訳することと税抜経理にすることが戦略的な仕訳方法です。

(1)仕入先別に仕訳する

  買掛金と仕入高は、「商品仕入高/買掛金」と1本で仕訳するのではなく、「商品仕入高+仕入先/買掛金+仕入先」と、

  仕入先単位で仕訳します。

  そうすることによって、仕入先別の仕入高と仕入先別の買掛金残高管理ができるようになり、仕入先ごとの仕入動向や

  仕入先ごとの買掛金支払状況が把握できます。

 

(2)消費税抜きの経理処理をする

  × 商品仕入高     ¥税込金額   / 買掛金     ¥税込金額

  ◎ 商品仕入高+仕入先 ¥税抜金額   / 買掛金+仕入先 ¥税込金額
    仮払消費税     ¥消費税金額

  このようにすると、買掛金管理は税込金額で、仕入高は税抜きの正味仕入高で管理できるようになります。

  税込経理では、いまでも常に8%を上乗せした仕入高管理になってしまいます。

  再来年の平成31(2019)年10月からは10%になります。こうなっては、もう税込経理では経営管理はできません。

  詳しくは、301.簿記の基本 仕入の仕訳を参照してください。

 

2 負債は『短期返済負債』と『長期返済負債』に正しく分ける

  そうすると何が経理からわかってくるのでしょうか・・

  そうです、このように経理をすると、資金に強い会社へと導いてくれます。

(1)短期返済負債とは

  短期返済負債とは、1年以内に返済しないといけない負債のことを云います。

  会計では『流動負債』といいます。

(2)長期返済負債とは

  長期返済負債とは、1年以上かけて返済する負債のことを云います。

  会計では『固定負債』といいます。

  したがって、固定負債には1年以内返済する部分が必ずあります。その部分は『流動負債』に計上する必要があります。

  たとえば、『長期借入金』が7年返済で840万円(10万円×12ヶ月×7年)あったとします。

  そうすると、1年以内に返済する部分120万円は流動負債の『1年以内返済長期借入金』という科目に振り替え、

  720万円だけが『長期借入金』となります。同じようなことが『未払金』や『役員借入金』の中にもあります。

(3)流動負債に振り替えることで何が違ってくるのか

  負債の合計は変わりませんが、しかし会社の支払能力など、会社の財政状況を読む際には大きく変わってきます。

  たとえば、支払能力を読みたい場合、当座資産と流動負債を比べて読みます。

  流動負債の額以上に当座資産があれば、流動負債を支払うだけの現預金・売上債権がありますので、

  まず「安心」と判断できます。

  しかしその流動負債の中に、1年以内に返済する長期借入金の額が含まれていなければ・・、

  経営判断を大きく読み間違う危険性もあります。

  借入金に関する詳しいことは、298.簿記の基本 借入金の仕訳を参照してください。

 

 

    

このように正しく仕訳することで、いつでも正しい会社の経営状況や営業状況を把握できるようになります。

「戦略的な経営」に資する経理にするためにも、ぜひ、経営に役立つ経理をしてください。