316.中小マーケティング 対象の選定
2017年6月21日
第5回 対象の選定 -攻める対象を考える-
■これまでの「中小企業のマーケティング」コラムの流れ
第1回(No.310) マーケティングは、中小・小規模事業であるほど、重要な経営課題であることを確認しました。
第2回(No.311) 収益拡大は、既存客→商品→新規顧客の順番で考えることを学びました。
第3回(No.314) 自社が提供する商品やサービスについての強み化(バリュー・プロポジション)の考え方を学びました。
第4回(No.315) その強み化を「戦略キャンパス」という手法で検証する方法を学びました。
そして、第5回の今回は、攻めるべき対象の考え方「対象の選定」について説明します。
1 事業ドメインを考えてみる
日常の中ではどうしても固定的な観念の中で考えがちになってしまいます。攻めるべきターゲット選定についても同様です。
そこで、その視野を拡げるためにも「事業ドメイン」を再考してみることをお勧めします。
事業ドメインとは、事業領域のことです。
アメリカの鉄道会社が自社を鉄道業と捉えたために、その後に来る自動車や飛行機などの輸送手段に敗れたことは有名な話です。
同じようなことをされてませんか? 「うちは蕎麦屋だ」「うちは金物屋だ」「うちは婦人服屋だ」などなど
先日もこんな話がありました・・。
ご遺体を運ぶ「搬送業」から事業を始め、やがて自然と「葬儀」も行うようになり、さらに葬儀に係わる仕出しや引き出物など
あらゆるサービスができる「トータル葬祭業」となり、最終的には墓石や生花やあるいは相続なども対応できる「トータル・エン
ディング・サポート業」を目指したいというお話でした。
このように事業ドメインが明確になってくると、どこを攻めればよいのか、具体的に考えられるようになります。
そのためには、近い将来も含めた「事業ドメイン」を考えることは重要です。
2 川下と川上に分けて考えてみる
そのうえで、自社を真ん中において、川下と川上に分けて考えてみると、具体的なターゲットが見えてきます。
川上とは、仕事をもらえる先です。
川下とは、仕事を提供する先です。
さきほどの葬祭業であれば、川上は、病院や警察あるいは自治体や農協、斎場などなどが考えられます。
川下は、街の葬儀店や石材店、生花店、中古車販売店、寺院、教会などなどが考えれます。
それまでの増収策といえば、直接、市場にアクセスするということで、ほとんどが骨折り損だけになってしまう個別訪問やチラシの
配布などしか思い浮かばなかったものが、随分、幅が広げられることに気付かされます。
さらに、個人ではないので、電話帳などを見れば、所在地や電話番号もわかり、場合によってはアポイント訪問も可能となります。
ただ、忘れてならないことは「その後ろにはコンシューマ(顧客)の存在がある」ということです。
(1)プル戦略
川上に対しては、そのことを意識しながらの提案をすることになります。いわゆる「プル戦略」です。
プル戦略とは「引っ張ってくる」というイメージですが、
商品やサービスを売り込むのではなく、川上事業のコンシューマ(顧客等)にとって、買いたいと思わせる仕掛けの提案です。
(2)プッシュ戦略
一方、川下に対しては、そのことを意識しながらメリットを紹介することになります。いわゆる「プッシュ戦略」です。
プッシュ戦略とは「押して押して押しまくる」というイメージですが、
プル戦略とは違い、川下企業のコンシューマ(消費者)にとっての具体的なメリットを示し、WIN-WINのアライアンスを結ぶ
戦略です。
3 事業ドメインを考える3つの視点
最後に、事業ドメインを考える3つの視点を紹介しましょう。
それは、「What」、「Whom」、「How」の3つです。
(1)What(なにを)
“What” とは、提供する製品や商品あるいはサービス自体を考えるということです。
(2)Whom(だれに)
“Whom”とは、ターゲットにする顧客をできるだけ、具体的に、絞り込む、ということです。
たとえば、単に「女性」・・、というだけではなく、その年代や状況そして趣向なども考えようということです。
具体的には「30代」の「独身」の「キャリア志向」の女性というような感じです。
それによって、“What”も“How”も、より一層明確に考えられることになります。
(3)How(どのように)
“How”とは、提供方法や独自の技術を考えることです。
ターゲットにする顧客層によって、同じ商品であっても、品揃えやディスプレイ・価格帯など、変わってきます。
これらを図示すると下図のようになります。
なお、事業ドメインと経営理念のあいだには、厳格な整合性があることが重要です。
現在は漠然と商売・仕事をしていれば売れる時代ではありません。それが高度成長後の現代、成熟社会です。
ぜひ、自社が提供できる価値とお客さんが望んでいる潜在的価値を考えて、さらなる発展を目指しましょう。
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