318.中小マーケティング 戦略の磨き方
2017年6月30日
第7回 戦略の磨き方 -同業者との違いを際立たせた戦略にする方法-
■これまでの「中小企業のマーケティング」コラム
第1回(No.310) 「マーケティング」は中小・小規模事業であるほど重要な経営課題
第2回(No.311) 収益拡大は「既存客→商品→新規顧客」の順番で考える
第3回(No.314) 自社が提供する商品やサービスについての「強み(バリュー・プロポジション)」の考え方
第4回(No.315) 強みを「戦略キャンパス」という手法で確認検証する
第5回(No.316) 攻めるべき対象「ターゲット選定」の考え方
第6回(No.317) 戦略を考えるヒント「6つのパス」の見つけ方
第7回の今回は「自社の戦略を同業者との違いを際立たせた戦略にするための方法」がテーマです。
戦略をいろいろ考えてはみても、独自性のある戦略を立てることはなかなか難しいものです。
まして、マーケット(お客さま)にもそれがわかるような「違いのある戦略」に仕立てることは難ししいものがあります。
しかしマーケティングは、そんな課題にもヒントを与えてくれます。
1 4つのアクション(行動)
4つのアクション、行動とは「取り除く」「減らす」「増やす」「つけ加える」の4つです。
取り除くと減らす、増やすとつけ加える、言葉としてはよく似ていますが、その概念は全く違います。
このことをまずは押さえてください。
(1)「取り除く・減らす・増やす・つけ加える」の概念
減らす・増やすとは、提供している商品・サービス・製品に対する自社の変革です。
これまでいろいろな経緯があってこのようなモノやサービスを提供しているけれど、もっとシンプル化すべきことはないのか、
あるいは逆にもっとすべきことはないのかという見直しです。
それに対して、取り除く・つけ加えるとは、業界に対するチャレンジ(挑戦)です。
業界としてこのようなモノやサービスが常識となっているけれど、本当に必要なのか、あるいはもっと加えるべきことがあるのでは
ないかと疑って、業界の慣習にチャレンジするということです。
では、それぞれについて詳しく説明しましょう。
(2)取り除く TORI NOZOKU
取り除くとは、業界で「そういうものなんだ」と思い込んでいるもので、実際は顧客に使われていない機能や期待されていない
サービスを取りやめたり、見直したりするということです。
たとえば携帯電話では、富士通が高齢者向けや子供向けに対して不要と思われる機能を取り外し、その分、安い価格で、
かつ使い勝手のいい携帯電話を提供しています。
また理髪のQBハウスでは、理髪店であれば当たり前の髭剃りや洗髪などをやめて、水回りの要らない高回転率の理髪店モデルを
作り上げています。それによって、駅構内や駅前の小スペースでも開店できることを可能にし、また副次的効果として
女性マーケットも切り拓いています。
会計事務所ではきちんと記帳ができる企業に対しては、一般企業のように手間をかけて仕訳確認をする必要がありませんから、
その分、低料金の顧問料を実現し、顧問先指導の動機付けとしても活用しています。かつ、それによって生じた時間で
新たな付加価値業務を実現し、新しい収益源にしようとしています。
☆このように、取り除くとは、まず、業界人としてあなたが当たり前と思い込んでいる従来のサービスや機能を振り返り、
本当にお客さまはこれを必要だと思っているのか、ということを見直すことから始めます。
ポイントは、次の2点です。
①ほとんど必要ない場合は、思い切って削ぎ落とす。これが「他ではやっているから」などと考え、なかなかできないんですね。
②個別・例外的なものはオプションとする。ただし、それを安易に増やし過ぎると、QBハウスのようなドラスチックな展開は
できなくなりますので、厳選する必要があります。
(3)減らす HERASU
減らすとは、同業者に負けないがために、これまで製品やサービスに余計な要素を盛り込んでいないか、見直すということです。
先ほどの「取り除く」は業界の慣習的な問題点でしたが、「減らす」とは同業者との競争を意識するあまりに、
自社で知らず知らずのうちに過剰になってしまった、自社だけの問題点です。そこに違いがあります。
たとえば、いま電気洗濯機や電気炊飯器は、メーカーが競い合って付けた高機能高価格製品が売れ筋ととなっています。
しかし、本来は各目的だけに機能を絞り込めば、そこだけに機能を特化させた低価格製品が実現できます。
将来不安のためにお金のひもが緩まない現在は、そのステージに移りつつあります。
また会計事務所では顧問料を下げたくないばかりに、顧問料の中で経営計画の策定や決算報告会などを行なうところがあります。
そのため、そのようなニーズがない企業までに無理矢理にやるようになったため、多くの企業では付き合わされて有難迷惑となり、
一方、会計事務所では時間だけが取られ生産性が落ちるいう、笑うに笑えない状況にもなっています。
☆このように、減らすとは、知らず知らずのうちについてしまった脂肪を取り去る作業です。
このポイントは、対象(ターゲット)を明確にすることです。顧客を総花的に捉えると、高コストになったり、ニーズに合わない
ものを無理意地することになります。対象を明確にすれば余計なものを減らせることになります。
(4)増やす FUYASU
増やすとは、減らすと逆で、同業者と比べて大胆に増やすべきことを見直す、見つけるということです。
「同業者と同じことをやっていれば安心」と考えるのではなく、減らしたことを原資にして、
他社ではやっていないことをつけ加えてみるということです。
先ほどの富士通は、機能を取り除いた代わりに、ボタンを大きくし、操作をしやすくしました。
QBハウスは、洗髪をやめた代わりに、エアウォッシャーシステムを採用しました。
またクシをお客さま一人に使用すれば交換し、それを帰り際のプレゼントにしました。
会計事務所は、仕訳の確認時間が短くなった分、経営者と事業について話し合う時間にしました。
☆このように、増やすとは、減らすしたコストや時間を原資に、新たなサービスに再投資するということです。
このポイントは、お客さまに見える・わかるということです。
ボタンもエアウォッシャーも話もすべてお客さまに見える・わかるものです。
(5)つけ加える TUKE KUWAERU
つけ加えるとは、取り除くとは逆で、業界ではこれまで提供しないことが常識であったが、
しかし本当につけ加えるべきことはないのか検討するということです。
業界の常識とは、昔からの慣習の積み重ねであり、決して、いまの顧客ニーズを捉えているとは言えません。
たとえば、お米を入れるだけで、自動的に水量を計測してくれる電気炊飯器はできないのでしょうか?
たとえば、タオルと洋服を一緒に洗っても、糸くずがつかない電気洗濯機はできないのでしょうか?
たとえば、赤字企業が多い中で、黒字経営のためのアドバイスをしてくれる会計事務所はないのでしょうか?
☆このように、付け加えるとは、業界革新にも似た現代の常識を疑い、不可能を可能に、可能までにできなくとも一歩でも二歩でも
可能に近づける発想をし、実行するということです。
このポイントは、ユーザーシーズや近未来を捉えるということです。
いまコンビニでは中食できるスペースを設けているところが増えています。また喫煙ルームを設けているところも増えています。
さらには、都心であっても広い駐車スペースを確保している店舗も増えています。
これらはすべてシーズや近未来を捉えた結果です。そこに気付くことで私たちに様々なヒントを与えてくれると思います。
この4つのアクション(行動)という考え方は、私たちの事業の価値革新を促してくれます。
考え方を「真似る」ことが、自社を新しい発想に導いてくれます。
こんなふうにしなくとてもとは考えず、まずトライしてみましょう!
その精神が、きっと皆さんの事業を大きく変えてくれると思います。
-------------------------------------------------
インプルーブ研究所は、ITウェブサイトとマーケティングおよび経営会計で貴社の発展に尽力します
-------------------------------------------------