328.380万中小企業のT/B⑦
2017年9月8日
第7回 B/S総資産「固定資産」の読み方・見方
固定資産とは、事業のための投資資産です。
具体的には、建物・機械・車両・土地などや、営業権・投資有価証券などがあります。
それらを有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに分類し、それらを合わせて「固定資産」と呼んでいます。
固定資産は売上の増加に先立って増えていくものですが、それだけに、それら投資資金の出どころや稼働状況を確認することが、
経営管理上、大切です。
1 固定資産は資金の調達も大切だが、より返済と投資効果が大事
(1)固定資産投資する場合の勘違い
一般的に固定資産を購入する場合、それなりにお金が必要になりますので、どうしても資金調達に目先が行ってしまい、
資金調達さえできれば「ひと安心」というようなところがあります。
確かに、設備の入替え・工場の建設といった場合、資金調達は重要なことではありますが、
経営的に重要なことは「その投資を事業的にプラスにできること」「その投資成果から借入返済ができること」、この2つです。
①設備を入替えても売上が増えないのであれば、設備を入替えた意味がありません。
②工場を建てても売上が増えないのであれば、工場を建てた意味がありません。
③その設備投資から生じる利益で借入金返済ができなければ、手元の資金を切り崩して返済することになります。
つまり、これらのことは設備投資をして資金繰りが悪化することを意味しています。
(2)設備投資後の資金繰り悪化を防ぐには
-1.設備投資採算計画を立案する
資金繰り悪化という結果を招かないよう事前にその兆候を察知するためには、設備投資後の青写真を描いておくことが大切です。
事前に青写真を描いておくことで、当初の見込みと実際の違いを知ることができます。
では、その青写真とは何なのでしょうか? それが「設備投資採算計画」といわれるものです。
「設備投資採算計画」って大層な名称ですが、そんなに難しく考える必要はありません。
もし仮に、いろいろ調べて詳細に計画したり、あるいは誰かに指導を受けて正確な採算計画と作成したところで、
経営者であるあなたの腑に落ちていませんから、それは『抑止力』になりません。いわゆるそれは単なる「絵に描いた餅」です。
それよりも、あなたなりに考えた「設備投資採算計画」を作ることが大事なのです。(このことを覚えておきましょう!)
では、設備投資採算計画を作るにあたって必要なこととは、何でしょうか?
-2.設備投資採算計画を作るにあたって必要なこと
それは、次の7点です。
①設備投資によって生じさせる売上高はいくらなのか? ⇒つまり、期待する売上です。
②その売上総利益は? ⇒そのためには生じる売上高の売上原価を考える必要があります。
③生じる営業利益はいくらか? ⇒そのためには生じる売上高の販売費及び一般管理費を考える必要があります。
④経常利益はいくらになるのか? ⇒借入した支払金利を営業利益から差し引きします。
⑤純利益はいくらになるのか? ⇒必要な法人税等を予測して経常利益から差し引きします。
⑥資金収入はいくらになるのか? ⇒設備投資の減価償却費を純利益に加えれば、概算の資金収入です。
⑦設備投資による資金収支は? ⇒資金収入から借入金返済金を差し引きし、これが最終の資金収支(投資効果)です。
-3.設備投資の可否判断
このように考えて結論は、⑦がプラスになるように何度もシミュレーションします。
もし何度かシミュレーションした結果、どうしても⑦がプラスにならないとか、あるいはプラスにしたけれど明らかにムリがある
ならば、その場合は設備投資自体を中止にするか、設備投資の中身を吟味しなおすか、いずれかを決断する必要があります。
そこは経営者として、勇気をもって英断しなければなりません。
-4.よくある似た話
このようなことは設備投資に限らなくても、経営にはよく似た話がたくさんあります。
そしてあまり吟味をせず、実行した結果、ますます資金繰りが悪化し、経営が二進も三進も行かなったという話は多く聞きます。
たとえば・・、
①売上が伸びないから営業力を増やすために人を入れよう・・
人を入れただけでは売上は伸びません。また人件費は機械とは違い、年々その費用は増して行きます。
まして、採用とはその人の人生に対して責任を負うものでもあります。そんな安直にするものではないとも思います。
②売上が伸びないからインターネットに力を入れよう・・
店頭でも売上が伸びないのに、インターネットを利用したからといって、売上が伸びるはずがありません。
インターネットは魔法ではありません。うまい話は多く見聞できますが、冷静に考えましょう。
またホームページ制作やインターネットショップ制作でも、意外と高額な制作費や運営費を請求される場合もあります。
いくらきれいなウェブサイトを制作しても中身がなければ効果はありません。
③商売がうまく行っているので多店舗展開しよう・・
いくらそこで商売がうまく行っているからといっても、違う場所に出店するということは、いろいろな条件が変わってきます。
従って、必ずうまく行くとは限りません。
また目の届かないところで店や営業所を持つわけですから、管理方法(経営)も考えなくてはなりません。
2 固定資産のチェック方法
最初に「設備投資資金の出どころや稼働状況を確認することが、経営管理上、大切」と言いましたが、
固定資産のチェックはその2つの観点から行います。
(1)固定資産に対する資金の出どころをチェックする
資金の出どころは「総資本」を見ればわかりました。
固定資産は長く運用するものですから、その購入資金もできれば自己資本だけで賄いたいところです。
最悪でも長期借入金を加えて賄うべきで、間違っても高利な短期借入金やノンバンク系借入金などをあてがうものではありません。
この考え方が出来れば、固定資産に対する資金繰りチェックはできます。
①自己資金度チェック 固定資産÷純資産=X% ⇒一般的には自己資金で30%~50%は出したいところ
②適正度チェック 固定資産÷(純資産+長期借入金)=Y% ⇒絶対100%未満
③長期借入金チェック 長期借入金÷平均月商=Z% ⇒②が100%未満でもこれが300%を超えるようでは借り過ぎ
※X%のことを「固定比率」、Y%のことを「長期固定適合率」、Zヵ月のことを「長期借入金限度比率」といいます。
(2)固定資産の稼働状況をチェックする
固定資産、特に設備は生産するために投資した事業資産です。ということは、導入した以上はその稼働率は上げたいところです。
そのような考え方が出来れば、固定資産に対する稼働状況はチェックできます。
①稼働(利用)状況チェック 年間売上高÷固定資産=V回 ⇒一般的には4回転はさせたいところ
なお、より確かな設備の稼働状況をチェックしたい場合は固定資産を有形固定資産だけにすればより鮮明になります。
もっと言えば、固定資産を事業設備だけに絞り込むと、より鮮明な稼働状況がチェックできます。
※V回のことを「固定資産回転率」といいます。
如何でしょうか、固定資産もいろいろとその状況を確認する方法があることをお分かりいただけたでしょうか。
もちろん、その他にもさまざまな見方がありますので、ぜひ、自社の見方を編み出しましょう。
このように月次試算表を日々の経営に活かすことによって、「黒字経営」と「強い会社」つくりが可能となります。
もちろん、そのためには社長ご自身が創意工夫を図り、従業員を引っ張っていくことが必要です。
景気が悪い、優秀な社員がいない、言うことを聞かない等々、ときには愚痴をこぼしながらも経営者自身が変わることが重要です。
現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば事業が継続できる時代ではありません。
それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。
ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。
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