329.380万中小企業のT/B⑧
2017年9月17日
第8回 B/S総資本「買入債務」の読み方・見方
今回から、話は「総資本」へ移ります。
総資本とは、事業で集めている(調達している)資金の出どころ(調達先)でしたね。
調達先で分類して、総資本は「他人資本」と「自己資本」に分けられました。(確認してくださいね)
他人資本は「負債」とも呼び、返済する期間の長さで「流動負債」と「固定負債」に分けられています。
自己資本とは「純資産」とも呼ばれ、その中身は「資本金」と損益で貯めた「繰越利益」です。
そういうことを念頭に置いて読んでください・・・。
その第1回は、流動負債のひとつ、「買入債務」です。
買入債務とは、仕入の際に発生する債務です。仕入債務とも呼びますが、具体的には支払手形と買掛金のことです。
この買入債務には一般的に2つの特性があります。
ひとつは、支払は売上回収に先立って発生するということです。
あるものを60円で仕入し100円で売った場合、売った100円から支払うことはできない というです。
60円、手元の資金から支払い、その後に100円が入ってくるということです。
この60円のことを「運転資金要調達高」といいます。 これは大切なことですから覚えておきましょう。
もうひとつは、売上が増えれば増えるほど、仕入も多くなるということです。
これは当たり前のことのようですが、このことは売上高が増えれば増えるほど、同時に、さきほどの「運転資金要調達高」が
大きくなるということを示しています。 これも大切なことで、覚えておきましょう。
このふたつを前提に買入債務の見方を考えます。
1 買入債務に対する支払能力をチェックする
さきほども言ったとおり、現金商売を除き、仕入れた商品の売上で仕入代金を支払うことはできません。
普通の事業は飲食業や小売業の場合を除き、ほとんどが掛け売りなので、売上代金で仕入代金を支払うことはできません。
では、どこから支払うのでしょうか? そうです、手元資金で支払うこととなります。
したがって、手元資金と買入債務を比べることで、その資金繰り状況が判断できます。
買入債務支払能力 = 手元資金 ÷ 買入債務
=(現金+預金)÷(支払手形+買掛金)
100%以上あれば、支払能力「アリ」ですが、手元資金を使うこと(使途)は他にもありますので、少なくとも200%以上の
手元資金は持っておきたいところです。
2 運転資金要調達高をチェックする
では、もう一歩進めて、必要な売買活動のための運転資金要調達高をチェックすることができないものなのでしょうか。
それは次の見方でできます。
(売買活動)運転資金要調達高 = 売上資産 - 買入負債
=(受取手形+売掛金+棚卸資産)-(支払手形+買掛金)
この金額が自社においての「売買活動のために必要な運転資金要調達高」となります。
これをもとに、さきほどの考え方で運転資金要調達高支払能力がチェックできます。
運転資金要調達高支払能力 = 手元資金 ÷ 運転資金要調達高
これが100%以上あれば、まず安心ですが、安定した売買活動するためには、やはり200%以上の手元資金は
持っておきたいところです。
3 運転資金要調達高を予測する
では、さらにもう一歩進めて、必要な売買活動のための運転資金要調達高を予測することができないものなのでしょうか。
それも次の見方で可能です。
(売買活動)運転資金要調達高予測 = 運転資金要調達高 ÷ 年商
この比率が、売上に必要な「運転資金要調達率」となります。
つまり、百分比率ですから、このパーセントが自社においての100円売り上げを増やすために必要な運転資金となります。
例えば、この比率が20%であった場合、いまのモデルでは100万円売上が増えると、20万円の運転資金が必要となります。
できれば、この「運転資金要調達率」は一般的には10%台には押さえたいところですが、
粗利の高い事業・売上単価の高い事業ほど高くなりますので、そのような事業をしている場合は多くの手元資金が必要となります。
このように、買入債務について読めるようになりますと、運転資金に関する資金繰りは問題解決の方向へ動き出します。
なぜなら、私たちは現状が認識さえできれば、それを避けるような行動するように出来ているからです。
また、それぞれの判断基準は、一般的な考え方としてはご紹介したとおりですが、
実務における判断基準は、同じ業種業態でもそれぞれ状況が違いますので、各社の経験と状況で判断することになります。
いわゆるそれが「経営者のマネジメント力」であり、「経営技術」といわれるものです。
このように月次試算表を日々の経営に活かすことによって、「黒字経営」と「強い会社」つくりが可能となることが
徐々におわかりいただけるようになって来たかと思います。
現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば事業が継続できる時代ではありません。
それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。
ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。
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