333.380万中小企業のT/B⑫
2017年10月15日
第12回 B/S総資本「純資産」の読み方・見方
1 純資産の概要
純資産とは、会計上は「総資産と負債の差額(純資産=総資産ー負債)」です。
だから、皆さんがよくお聞きになる『総資産=負債+純資産』という等式が必ず成り立ちます。
そんな純資産の中身は、一般的には、設立時の「資本金」と損益で貯めて来た「繰越利益」です。
なお、繰越利益は正しくは繰越利益剰余金といいますが、そういうことが会計を難しいそうにさせています。
ですから、ここでは繰越利益と呼ぶことにします。
2 法人企業の実状
国税庁の発表によれば、ここ3年間の状況は次のとおりです。
利益計上法人 欠損法人 合計法人数 欠損割合
平成25年度 823,136社 1,762,596社 2,585,732社 68.2%
平成26年度 876,402社 1,729,372社 2,605,774社 66.4%
平成27年度 939,577社 1,690,859社 2,630,436社 64.3%
欠損法人とは、所得金額が損失またはゼロ、あるいは黒字でも繰越欠損の方が大きかった法人を云います。
その欠損割合は平成21年、22年の72.8%をピークに下がっては来ましたが、それでも法人企業の3分の2が欠損企業とは異常な
状況です。これを試算表で見れば、繰越利益はマイナスで、設立当初の資本金の額さえ純資産が無い状況です。
本来、会社を起こす人は儲けるために会社を起こすわけです。なのに100社中64社までが、その創業当初より自己資金を少なく
している状況です。
これでは「起業」に夢が持てません。起業が増えない筈です。起業が増えない社会は経済が活性化しません。
ぜひ、経営者のみなさま、この現状を打開しましょう!
しかし、この実状には2つの背景があると言われています。
ひとつは経営環境や景気と言われるものです。
経営環境の変化に対応していけない、あるいは景気が良くないので赤字経営を続けている企業が多くあるということです。
もう一つは節税とか公私混同と言われるものです。
どうしても税金を安くしたいということで、過度の節税対策を行って、事業の所得を減らしプラスマイナスゼロぐらいの所得に
しようという企業もあります。しかしこの場合は繰越利益は貯まりませんので、設備投資などをする際には金融機関から融資を
受けるか、あるいは役員借入金として会社に資金を入れるかのどちらかとなります。
従って、役員借入金等のある会社は「会社の信用度が下がる」と言われる所以となっています。
3 債務超過
欠損金がさらに増えていくと、やがて「債務超過」と言われる状況に陥ってしまいます。
欠損法人とは純資産が資本金より少なくなっている状況ですが、債務超過とは欠損金が資本金を超えてしまっている状況です。
つまり、負債(債務)の方が資産を上回っている状況になります。
債務を借金、資産を財産と言い換えれば、財産よりも借金の方が多い状況です。
この状態では、事業を整理するには、経営者が個人財産を投げ出す必要があります。
従って、債務超過は経営者としては絶対避けなければなりません。
4 純資産の読み方・見方
以上のことを基本知識として、月次試算表から純資産に関する状況を読みましょう。
(1)自己資本割合をチェックする
安定した経営を行うためには、自己資本内で設備投資も行い、売買活動も行うということになります。これが石橋経営です。
ですから、事業で費やしている資金はなるべく自己資本が多いことが望ましいということになります。
自己資本割合 = 自己資本 ÷ 総資本又は総資産
一般的に、中小・小規模企業は自己資本割合が低いことが多いのですが、だから低くても仕方がないということにはなりません。
中小・小規模企業は弱い立場なのですから、だからこそ、この「自己資本割合」はできれば50%を超えるようにしたいものです。
このことを専門的には『自己資本比率』と呼んでいます。
(2)起業した事業の成長状況をチェックする
中小企業のそのほとんどはオーナー企業です。その意味では実質的な成長状況を掴みたいものです。その指標がこれです。
事業の成長状況 = 繰越利益 ÷ 資本金
事業の規模は売上高や総資産などで測りますが、事業の成長度というのはある意味、投資の見方と同じです。
当初の投資金額が資本金です。この資本金が事業を通じて何倍になっているのかということです。
判断はそれぞれの経営者の当初目論見によりますから、一般的にどうのこうのとは言えませんが、
しかし、5年程度で倍々にはしていきたいところです。
このことを専門的には『自己資本成長率』と呼んでいます。
(3)無借金経営度合をチェックする
安全な経営とは、債務に頼らない経営です。
大手では「無借金経営」を目指す企業が多くありますが、それは中小・小規模企業も同じことです。
それは次のように見ます。
無借金経営の実状 = 手元資金 ÷(短期借入金+長期借入金)
手元資金(現預金)が借入金以上あれば、実質的に無借金経営と言えます。
ですから100%以上が理想的ですが、そこまではなくとも50%程度に維持させたいところです。
このことを専門的には『実質無借金比率』と呼んでいます。
このように純資産を月次試算表から読めるようになると、経営の安全度が急速に高まり、安定した会社経営が実現できます。
もし、少しでもそのようなことを始められたあなたは、きっとあなたの会社をインプルーブ(良く)していけます。
さらに堅実に会社を経営していければ、会社は発展します。なぜなら会社の発展は堅実継続の結果だからです。
このように月次試算表を毎日の経営に活かすことで、黒字経営と強い会社つくりが可能となることがご理解いただけるように
なったかと思います。
現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば、事業が継続できる時代ではありません。
それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。
ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。
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