340.会計活用のエッセンス④

2017年12月3日

第4回 「手元資金」の読み方・見方

前回は「試算表は3つの部分からなっている」と説明をし、それぞれの概要をご紹介しました。

今回からはその個々について、具体的に説明していきます。

最初の今回は「手元資金」です。

 

1 手元資金とは

手元資金とは、現金と預金のことですが、キャッシュともいいます。

会計では「手元流動性資金」とか、もう少し概念を広めて「現預金同等物」という難解な言い方をして有価証券なども含ませますが

実務的には、現金と預金であり、手元資金またはキャッシュといいます。

 

2 手元資金は「自社の資金有り高」を示している

資金といえば、すぐに「キャッシュフロー計算書などで確認!」と思われる方もいますが、結論は「現金と預金の合計」です。

キャッシュフロー計算書は、その現預金残高のプロセスも説明しているだけで、営業活動、投資活動、財務活動に分けて資金収支を

集計していますが、結果は同じ「現金と預金の合計」です。

資金管理表であれば、プロセスが経常収入・経常支出・財務等収入・財務等支出と変わりますが、結果は同じ「現金と預金の合計」

です。

キャッシュフロー計算書や資金管理表では過去の資金分析ができますが、中小企業にとって大事なことは、そういった過去分析では

なく、これからの未来分析、未来予想です。

 ●いまの現預金でこれからの資金繰りは大丈夫なのか?

 ●問題であれば、どのくらいの額を手元資金高として持たなくてはならないのか?

 ●そしてそのための処方箋はどのようなものかあり、具体的なプランはどうするのか?

ということです。

 

3 手元資金のチェックの仕方

現在の現預金残高である手元資金チェックの主な方法として、次の4つがあります。

(1)1カ月の企業生活費と比べる

企業にとって1カ月の生活費とは「1カ月の売上高」です。

会社経営は1カ月の売上高の中で生活することが大前提です。そうすれば赤字経営にはなりません。

但し、その残った利益の中から、借入れがあれば借入返済しなくてははなりません。

そのことさえ忘れなければ、いわゆる資金ショートによる黒字倒産にはなりません。

したがって手元資金が月次売上高以上あれば何とか資金繰りは回って行きますが、それではあまり余裕がある状況とは言えません。

できれば、月次売上高の2~3倍の手元資金は持てるようにしたいものです。

(2)1カ月の支払額と比べる

もう少し、手元資金と支払いをシビアに見る方法として、1カ月の支払額と比べる方法もあります。

では、1カ月の支払額はどこに表示されているのでしょうか?よく試算表なり、決算書を見てみましょう。

 ●まずは①支払手形 ②買掛金の仕入債務です。

 ●次に③未払金や ④未払費用の未払いですね。

 ●さらに社会保険料等の預かり金である⑤預り金。

 ●それからもうひとつ、⑥短期借入金 ⑦長期借入金の月次返済額。

この7つを加えた額がおおよその月次支払額となります。

この月次支払額と手元資金を比べれば、資金繰りの目処はわかります。

(3)売買活動の必要運転資金と比べる

3つめは売買活動に必要な「営業資金」と手元資金を比べましょう。

売買で必要な運用資金は「受取手形」「売掛金」の売上債権と「棚卸資産」です。

これらは「資産」とは呼んではいますが、見方を変えれば、資金を使っている資産です。

これだけ販売活動するために資金を使っていると言えます(だから在庫は少ない方が良いのです)。

それに対して、売買で得ている調達資金は仕入債務である「支払手形」「買掛金」です。

本来ではあれば、仕入した時点で支払わなければならないのに、一時的に業者さんに支払いを待ってもらっています。

つまり、資金調達をしているという見方ができます。

そしてこの2つの差額(売上債権+棚卸資産ー仕入債務)が、売買活動における「必要運転資金」なのです。

この必要運転資金以上に手元資金があれば、安心して売買活動ができます。

(4)借入金残高と比べる

最後に借入金残高と比べるということです。

借入金は今後の銀行関係のことを考えなくとも、きちんと返済しなければならない債務です。当たり前ですよね。

借入れ当初は借入目的に融資金額を使いますので、借入したお金は大きく減り、手元資金は減ります。

しかし、月日が経てば、徐々に借入金残高と手元資金のバランスがとれるようにしたいものです。

 

これら4つの指標の中で自社の管理に必要なものを選び出し、手元資金を管理すると安定した経営になっていきます。

管理とは、状況を知るということだけでなく、「状況を知って『行動する』」ということですから、それをお忘れなく。

 

 

 

現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば事業が継続できる時代ではありません。

それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。

ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。

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