341.会計活用のエッセンス⑤
2017年12月8日
第5回 「営業資産」の読み方・見方
今回は「営業資産」の読み方です。
会計では、試算表でも決算書でも、流動資産は現預金と売上債権の「当座資産」、在庫である「棚卸資産」、そして「その他の流動
資産」の3つに分けています。
しかし、実務では、現預金である「手元資金」、売上債権・棚卸資産の「営業資産」、そして「その他の流動資産」の3つに分けて
考えた方が活きた試算表の読み方に繋がります。 ぜひ、まずこのことを覚えておいてください。
1 営業資産とは
営業資産とは、営業活動をするうえで発生する資産をいいます。受取手形、売掛金などの売上債権と棚卸資産です。
営業資産は売上高の増加に伴って増える傾向があります。
したがって、放置しておくと会社の資金繰りを圧迫する可能性がありますので、適切な管理が必要です。
2 営業資産は「資産」というより「資金使途」
(1)営業資産で陥る勘違い
受取手形や売掛金は、ともすれば会社の財産と考えがちですが、回収しないと原価をかけて売った商品やサービスを無償で提供して
いる状態です。また、棚卸資産も売れていない状況ですから、まだ買った状況です。
その意味ではこれらの営業資産は財産・資産というより、資金を使った、資金使途の状況です。
そして、売って期日回収して、初めて現預金となり、財産・資産となります。
ですから、棚卸資産も含めて営業資産は、販売活動の運転資金相当額とも言え、営業資産に相当する運転資金が必要となります。
このことは重要なことですから、よく覚えておいてください。
(2)運転資金の財源は仕入債務
では、運転資金の財源はどこにあるのでしょうか。資金の調達は総資本に示されていましたね。よく見てみましょう。
そうです、運転資金の財源は「仕入債務」です。
仕入債務とは商品や原材料など手元にあるにもかかわらず、まだ支払いをしていない状況のものです。
試算表には支払手形や買掛金として示されています。これらは流動負債に表示されていますから債務ですが、見方を変えると、
仕入を通じておカネを無利子で借りているとも言えます。したがって、仕入債務は「資金の調達」でもあるわけです。
3 営業資産と仕入債務を比べれば売買活動の要調達運転資金の額がわかる
(1)要調達運転資金
営業資産と仕入債務を比較すれば、売買活動のために用意しなければならない要調達運転資金額が掴めます。
営業資産(販売で使っている運転資金)-仕入債務(購買で得ている調達資金)=A(調達しないといけない運転資金)
理論的には、売買活動するために必要な要調達運転資金額はAとなります。
(2)要調達運転資金はどうやって集めている?
では、このAはどうやって集めているのでしょうか?
ひとつは売上債権の回収額で手当てしているとも考えられます。しかしこれでは「自転車操業」となってしまいます。
従って、基本的には手元資金(現金・預金)として、この程度の資金は余裕をもって持っておきたいものです。
手元資金÷A(運転資金要調達高)=X倍(手元資金対運転資金倍率)
このX倍が1倍じゃ、余裕はありません。余裕を持つためには一般的には数倍の手元資金は持ちたいものです。
実際のあなたの会社の「手元資金対運転資金倍率」は貴社の経験則によって決められるべきものです。
この経験則を持つためにも、月次試算表による経営管理は重要なのです。
(3)売上が増えればどの程度の要調達運転資金が必要なのか?
さらに、売上が増えればどのくらい運転資金を調達しなければならないのか?ということもわかります。
A(運転資金要達高)÷年商(万円)×100=X%(運転資金要調達率)
このX%は売上高100万円あたりの必要な運転資金要調達高を表しています。
たとえば30%であれば、年間で1000万円売上を伸ばしている場合、300万円の運転資金を用意しなければなりません。
そうでないと増収倒産になってしまいます。
平常の経営であれば、この運転資金要調達率は10%前後に収めたいところです。
4 営業資産の保有高を管理することが重要
営業資産に関して重要な管理事項は「保有高」です。営業資産(特に売上債権)は多ければいいというものではありません。
営業債権の保有高のチェックは、受取手形・売掛金・棚卸資産、それぞれに分けて管理する必要があります。
(1)受取手形の場合
もしあなたの会社では「手形は受取ってから3か月後に回収する」という規則であれば、3カ月分以上の受取手形残高があれば、
それは問題です。つまり、手形が期日とおりに回収できていないということです。
受取手形残高÷平均日商=Y日分
Y日が約定以内であればOKですが、以上であれば未回収があるということになり問題です。
(2)売掛金の場合
売掛金も同様です。もしあなたの会社の売掛金回収規則以上の売掛金があるのであれば、それは問題です。
売掛金が期日とおりに回収できていないことになり、不良債権化の温床となります。
(3)棚卸資産の場合
棚卸資産も同様ですが、より注意する必要があります。
というのは、この棚卸資産の保有高がの差が黒字企業と赤字企業の大きな違いとなっているからです。
過剰在庫は必ず原価アップにつながり、資金繰りや売上総利益を圧迫します。
具体的には次のようにチェックします。
棚卸資産残高÷平均日商=Z日分
業種によって違いはありますが、一般的には14日以内が妥当と思われます。
営業資産の管理は自社の資金繰りを良くするとともに、自社を黒字体質に改善してくれます。そのためには、毎月の試算表で経営を
コントロールすることが大切です。次回は事業設備である「固定資産の読み方・見方」をお送りします。
現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば事業が継続できる時代ではありません。
それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。
ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。
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