367.マーケット戦略 ポーター基本戦略
2018年6月15日
マーケット戦略 ポーターの基本戦略
現代は売上を増やすことが難しい時代となっている・・。
いろいろなモノが溢れ、さまざまなモノも存在し、市場は高齢少子化、人口それ自体も減少し始めたからだ。
さらに、将来に対する不安感から消費は減退化しており、そして多様化し、経済格差も顕在化し出している。
非常に複雑な社会状況だ。
だから「頑張る」とか「まじめに働く」というだけでは、思いどおりに売上は増えなくなっている。
そこで従来からの企業経営に何かを加えなければならない。それは経営の工夫であり、販売の工夫だ。
そのことを『経営戦略』とか、『販売戦略』という。
このことは小さな企業・ビジネスほど、強く求められている。
そこでこれから、『マーケット戦略』というテーマでいろいろな収益拡大の考え方をご紹介し、
小さなビジネス企業の売上高拡大のヒントに供したい。
ポーターの基本戦略 -5つの力と3つの基本戦略-
今から約40年前の1980年マイケル・ポーターによって提唱された『ポーターの基本戦略』は、競争戦略とも呼ばれる。
いまや経営戦略論の古典でもあるが、中小・小規模ビジネスの事業戦略を考える際にはとても参考になる考え方だ。
具体的には『5つの力(ファイブフォース)』という業界分析を通じて「競争優位」がつくれる状況にあるかどうかを判断し、
そのうえで『3つの基本戦略』から適正な戦略を選ぶべきだと教えている。
では、具体的に見ていこう。
<5フォースと基本戦略のイメージ>
1 5フォース(Five forces)
(1)5フォースとは業界分析の切り口だ!
具体的には、新規参入の影響力、代替品の影響力、顧客・市場の影響力、仕入先の影響力、そして業界内の競合影響力を
切り口として、業界状況を分析する。
(2)この5つ切り口から業界を理解する
こうした切り口から業界を理解すれば、競争環境の緩やかな場所にポジショニングすることも可能となる。
そうすれば、資金調達コストを上回る利潤をあげることがより容易になる。
ポーターは「ポジショニングこそが、戦略だ」と提唱している。
ポジショニングとは自社の位置づけであり、自社戦略の方向付けだ。
5フォースをもう一度まとめると、参入・代替・顧客・仕入・業界競争、この5つが切り口だ。
(3)魅力ある業界とは
ポーターの枠組みに沿えば、
新規参入障壁は高くかつ撤退障壁は低くく、代替品との距離は遠く、川上や川下よりも業界の交渉力の方が高い状況にあることが
望ましいということになる。
つまり、新規参入はしにくく、撤退はしやすく、代替品がない顧客や仕入先よりも自社の交渉力の方が高くなる業界が望ましい。
そんな夢のような業界は無いのだろうが、そのような状況に近い業界でビジネスを選択することや認識することが大事であり、
そこを考えるのが戦略だ。
ちなみに、日本の場合は、市場規模や市場成長性だけで魅力度を判断する傾向が強いといわれている。
この『5フォース』について詳しくは、No.357のコラムを参照されたい。
2 3つの基本戦略 ・・複数を追うより一つを貫く
ポーターは競合に打ち勝つ方法は、次の3つのパターンに大別でき、各々に一貫した原理があるので、
複数を追うより、一つを貫くべきだと提唱している。
(1)コストリーダーシップ戦略
コスト面でリードできれば、競争が激しくなっても、自社の利益性は相対的に守ることができる。
ただし、技術の変化や新規参入など、環境変化に弱いという欠点を持つ。
なお、コストリーダーシップを採るには次のようなことが考えられる。
①生産規模拡大による設備投資の効率化を図る
②生産規模拡大による作業の効率化を図る
③間接コスト(固定費)を削減する
④ベテラン社員などによる経験曲線による効率化を図る
⑤技術力による独自性を持つ
さらに組織に関しては次のようなことが考えられる。
①報告回数の削減や単純化を図る
②本社・本部を少数化する
③経費予算管理を実行する
④チャレンジングなコスト数値目標を設定する
⑤在庫を削減する
⑥コスト削減に対する報奨制度を導入する
販売単価を下げざるを得ないので販売単価を下げようと考えている企業は多い。
しかし、裏側でこのようなコスト削減を考えている企業は少ない。だから収益悪化が避けられない。
(2)差別化戦略
製品の機能やイメージなどで特徴をもつことができれば、相対的な高価格が維持でき、同質化も回避できる。
ただし、そこだけに頼ると、極端な低価格攻勢や模倣された競合に優位を守れなくなる危険がある。
なお、差別化とは次のようなことをいう。
①顧客が認知できて、初めて差別化は成り立つ
自社が「いくらこれは差別化出来ている」といっても、顧客が認知出来なければ意味はない。
②差別化とは、顧客にとって価値が増加すること
単に「他社製品とは違う」は差別化ではない。顧客にとって価値が上がるかどうかということだ。
また、差別化にとって重要な要素は次の7つだ。
①特徴 その製品・商品・サービスには見える特徴があるか
②機能の連携 それぞれの機能にはつながりがあるか
③タイミング 季節、流行りなどとの時期はどうか
④ロケーション ターゲットロケーション、地域ロケーションなどとの関連性はあるか
⑤品揃え 製品・商品・サービス間とのつながりはどうか
⑥アライアンス トータル面でのサービスはどうか
⑦評判・ブランド 評判がやがてブランドに成長する
(3)集中戦略
特定の市場に経営資源を集中し、優位を達成すれば、その分野への新規参入は限定され、利益性は守れる。
ただし、市場を限定するので、全体的に大きなシェアは取れない。
また、ターゲットとする市場の特異性が薄まると、全体の市場で優位に立つ企業との競争に巻き込まれる危険性も持つ。
なお、集中戦略だけで、戦略は成り立たないと言われている。
「戦略とは集中である」とか、「戦略とは捨てることである」ともいわれることがあるように、
コストリーダーシップ戦略や差別化戦略の中で、集中戦略が必要であるといわれている。
かつての日本企業は「いいもの(=差別化)」を「安く(=コストリーダーシップ)」で海外市場を席巻した時代があったが、
現在は模倣した、より低コストのアジア企業の台頭によって苦戦を強いられている。
ポーターの基本戦略は基本的な戦略理論であり、幅広い事業に活用できる。
特にコストリーダーシップ戦略は低価格販売に悩んでいる中小・小規模企業経営者にとっては参考になる考え方だ。
低価格販売する裏側をもっと考えるべきではないだろうか。
現在は知価経営といわれている。 知恵を使って価値を上げる経営だ。
マーケット戦略はそんな知恵を授けてくれる考え方だ。
考えて商売、事業をする。そのこと自体が大事なような気がする。
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