382.財務諸表10 PLの見方

2018年9月29日

前回の「損益計算書の構造」について復習しましょう。

 1.売上高とは「事業資金の源泉」であり、お客様の「支持のバロメーター」です。
  ですから、少しずつでも増やしていきましょう!

 2.売上原価とは「資金の使途」であり、できる限り無駄を無くすことが大切です。

 3.売上総利益とは「自社事業の魅力度」であり、魅力度が高ければ売上総利益は高くなります。

 4.販管費は「資金の使途」であり、使うべきところには使い、抑えるべきところは抑えるというメリハリが大事です。

 5.営業利益は「本業の利益」であり、社長・従業員全員による経営努力の成果です。

 6.営業外収益は金融費用とも言い換えられ、社長の重要な経営マネジメントのひとつです。

 7.経常利益は最終的な社長マネジメントの成果です。

 8.経常利益から法人税などを引いた「当期純利益」が繰越利益剰余金となり、自己資本を厚くする元となります。

経理とは「経営を管理する」ことです。正しい経理は、事業の状況をありのままに伝えてくれますので、早期に対策を講じることが可能になります。だから会計で強い会社が作れ、「会計は会社を強くする」と言われるのです。

経理は決して、会計事務所などに丸投げすればよい業務ではありません。自社でしっかり行いましょう。

 

では、第10回目の今回は「P/L(損益計算書)の見方」です。

 

 

10 P/L(損益計算書)の見方

P/Lの見方は大きく分けて次の3通りあります。
 1. 売上高との比率で見る
 2. B/Sと比べて見る
 3. 損益分岐点で見る
なお、大切なことは「分析値名を覚える」とか「計算式を覚える」ということではなく、「理屈を知る」ということです。
理屈さえ分かってしまえば、あなた独自の意味のある見方ができます。そして、それがあたなたの「経営マネジメント力」に
繋がっていきます。 では、一つ一つ見ていきましょう。

 

(1)売上高との比率で見る -自社の収益構造が確認できます!-

①売上原価率(%)  売上原価÷売上高 ×100
この見方は、自社で付けた価値である付加価値力を見る方法です。
①は、付加価値を付けるにあたって要した費用の割合です。当然のことながらそれで価値を損なわければ、「低ければ低いほど」 良いことになります。前年値や同業他社と比較して評価します。
改善していくためには、売上原価の明細である、仕入高・材料費・労務費・外注加工費・製造経費にわけて確認していきます。

②売上総利益率(%) 売上総利益÷売上高 ×100
これは自社の付加価値率です。売上原価率の裏返しですが、売上高に影響がでない限り「高ければ高いほど」良いことになります。
この売上総利益率を上げるためには、既存の売価見直しや新商品・新サービス・新製品の投入などを考えます。

③売上経費率(%)  販管費÷売上高 ×100
これは売上に対して売上原価を除く、販売費と管理費がどのくらいかかっているのかを見る方法です。
これも「低ければ低いほど」良いことになりますが、それによる社内士気の影響を考えなければなりません。
実は付加価値値を上げる最大の原動力は原価などのモノではなく、「従業員」です。いくら良い商品・サービス・製品であっても、それだけでは売れません。説明力や優れた接客や従業員の熱意やアフターフォローなどがあって、初めて良い商品・サービス・製品とシナジー効果が発揮され、市場に受け入れらるのです。

④売上人件費率(%) 人件費÷売上高 ×100
人件費とは、役員報酬を除いた従業員給与・労務費・法定福利費・福利厚生費など、従業員に関する人件費です。
やはり、極力、従業員が人生をかけて働ける職場、仕事にしていかなくてはなりません。そうでいないと、自社にとって有能な人材を雇用することや維持することはできません。この売上人件費比率は「従業員満足度」の一部を表す指標でもあります。
人件費と売上高人件費率のバランスを管理していくことが大事です。

⑤売上営業利益率(%) 営業利益÷売上高 ×100
営業利益は売上高から売上原価と販管費を引いた「本業の利益」ですので、「高ければ高いほど」良いことになります。
中小小規模企業は大企業とは違い小さな商いをしていますので、本来は大企業より高い営業利益率が確保できなければなりません。
ですから、10%は確保したいものです。

⑥経常利益率(%) 経常利益÷売上高 ×100
経常利益は営業利益から金融費用を引いた「事業の通常的な利益」なので、「高ければ高いほど」良いことになります。
したがって、経常利益率も営業利益と同様に、10%程度は確保したいものです。
もし、この経常利益率が営業利益率に比べて大きく下がっているのであれば、支払利息が負担になっていることを示しています。
その場合は、有利子負債をなんとしでも減らせ!とシグナルが発信されていると理解しましょう。

 

(2)B/Sと比べる -資産・資本の運用状況が確認できます!ー

①総資産(総資本)利益率(%) 経常利益÷総資産(総資本) ×100
事業は経営者から見ると「資本(おカネ)の投資」です。おカネを投資する以上、リターンがあってしかるべきです。
その状況をこの総資産利益率(又は総資本利益率)で見ます。したがって「高ければ高いほど」良いことになります。
一般的には、投資額の2倍の売上を上げて、その目標利益率は10%だと言われますので、総資産利益率の目標利益率は20%と
なります。事業を経営する以上は、総資産利益率が20%以上となるように経営をしたいものです。
経営者である社長には、その経営力が求められます。
ちなみに、総資産利益率は英語では「Return On Assets(資産の収益率)」といいますので、ROA(アールオーエー)とも
いわれています。
 

②総資産(総資本)回転率(回) 売上高÷総資産
総資産回転率(又は総資本回転率)は事業で運用している資産の何倍の売上を上げたかということですので、「高ければ高いほど」良いことになります。
大企業では2回転弱が多いですが、中小小規模企業の場合は小さな資産を運用していますので2回転以上はめざしたいところです。

③棚卸資産回転率(回)     売上高÷棚卸資産
棚卸資産回転率は、棚卸資産の何倍の売上高があるかということを示しています。
もし、在庫を1カ月分持つような事業の場合は12回転程度となります。1週間であれば52回転程度となります。
在庫商品は売れれば売れるほど良いわけですから、棚卸資産回転率も「高ければ高いほど」良いことになります。
棚卸資産回転率は業種で大きな違いがありますが、流通はどんどん発達していますので、時代とともに高くなる傾向があります。
また棚卸資産回転率が高いということは、売上に比べて在庫が少ないということですから、その分、資金繰りが楽になります。

④手元流動性比率(月)     手元流動資産÷平均月商
手元流動性とは、現金と預金のことです。これを平均月商と比較することで、自社の安全性を確かめることができます。
平均月商とは、家計で言えば「平均収入」にあたりますので、その何カ月分の手元流動性資産があるかによって事業経営の安心感は全く違います。「多ければ多いほど」良いわけですが、最低でも月商2~3カ月分程度の手元流動性は持ちたいものです。

 

(3)損益分岐点で見る -営業活動の採算点が確認できます!-

損益分岐点とは、損と益が分かれる点、つまり、収支トントンの売上高点、利益ゼロの売上高点という意味です。
それによって、現在の営業活動の採算点などが読み取れます。

①変動費 (円)        商品仕入+材料仕入
 変動費率(%)        変動費÷売上高 ×100
変動費とは「売上高の増減と比例する費用」という意味です。
いわゆる直接原価のことあり、商品仕入と材料仕入などが該当します。
※外注加工費は、本来内製すべきものを外注しているわけで、変動費とはしない考え方がシンプルです。

②粗利益 (付加価値額)(円) 売上高-変動費
 粗利益率(付加価値率)(%) 粗利益÷売上高 ×100 
売上高から変動費を引くと「粗利益」、つまり自社で付けた正味の「付加価値額」がわかります。
これを売上高で割ると粗利益率となり、これが自社の大まかな儲け率です。一部では限界利益率ともいいます。
粗利益率が高いと自社の取扱商品は競争力が高く、低ければ競争力が低いと判断できます。

③固定費(円)         総費用-変動費
 人件費(円)         労務費+給料+賞与+法定福利費+厚生費
 その他固定費(円)      固定費ー人件費
固定費とは「売上高の増減と比例しない費用」という意味です。
電気代や旅費など、一部増減することもあるかもわかりませんが、比例はしないので固定費となります。
また営業外損益も固定費です。
その中に、人件費に関するものとそれ以外のものがありますので区分しましょう。

④経常利益(円)        粗利益-固定費
 粗利益から固定費を引くと経常利益となります。

⑤損益分岐点売上高(円)    固定費÷粗利益率
損益分岐点売上高(略して損益分岐点)とは、収支トントン、利益ゼロの売上高です。
利益ゼロとは 固定費=粗利益 と固定費と粗利益が同額のことです。
黒字損益とは 固定費<粗利益 と固定費が粗利益よりも少ないことです。
赤字損益とは 固定費>粗利益 と固定費が粗利益よりも多いことです。
したがって、固定費を粗利益で割ると、自社の「損益分岐点売上高」が計算できます。

⑥損益分岐点比率(%)     損益分岐点売上高÷実売上高 ×100
 経営安全率(%)       100-損益分岐点比率
損益分岐点売上高を実際の売上高で割ると、「損益分岐点比率」(実際の売上高に対する割合)が計算できます。
利益セロ =100% 損益分岐点売上高と実際の売上高が同じですから、100%となります。
黒字損益 <100% 損益分岐点売上高より実際の売上高のほうが大きいので、100%未満となります。 
赤字損益 >100% 損益分岐点売上高が実際の売上高より大きいので、100%超となります。
さらに100%から引くと「経営安全率」となり、どの程度売上高が減っても収支トントンになるのかを表します。
経営安全率は20%以上(つまり、損益分岐点比率は80%以下)を常に保ちたいものです。

⑦労働分配率(%)       人件費÷粗利益 ×100
労働分配率とは、付加価値額に占める人件費の割合ですが、小規模ほど高くなる傾向にあります。
労働分配率が高くなれば、それだけ人件費以外の固定費を抑える必要があります。

 

 

今回は次のことを覚えておきましょう。

1.損益計算書の見方は、売上高との比率で見る方法、B/Sと比べて見る方法、損益分岐点を見る方法の3つがある。

2.売上高との比率で見れば自社の収益構造がわかる。

3.損益分岐点を見れば、自社の営業活動の採算点などがわかる。

4.P/Lも含めて、会計資料の見方で大切なことは、分析値名とか計算式を覚えることではなく、理屈を知ることである。
 理屈が分かれば、独自の意味ある見方ができる。

 

経理は経営を管理することですから、正しい経理処理は会計資料上にありのままの会社経営状況をハッキリ表します。
ですから、早期に対策を講じることが可能となり、だから会計で強い会社が作れ、「会計は会社を強くする」のです。

 

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