393.図解 事業戦略策定 9
2018年12月14日
事業戦略策定第9回は『会社の外部環境を分析する競合分析ファイブフォース』です。
前回は、外部環境のマクロ環境分析の手法として『PEST分析』を説明しましたが、
今回は外部環境の競合分析手法である『ファイブフォース分析(Five Forces Analysis)』を説明しましょう。
非常に参考になる競合分析方法なので、ぜひお読みください!
1 Five Forces分析
競争戦略の提唱者で有名なポーターは、事業を取り巻く環境要因には「5つ」あると考えました。
その一つは「業界内の競争」です。
そして、その業界内の競争をつくる要因として、
「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」、それに「買い手の交渉力」、「売り手の交渉力」の4つがあると説きました。
合計すると5つとなりますので、「Five Forces」と呼びます。
もともとは新規ビジネスを立ち上げる際の競合分析手法として考えられましたが、
既存ビジネスの分析ツールとしても充分活用でき、自社が属する業界の魅力度が判断できます。
では、その一つ一つについて見ていきましょう。
2.業界に影響を与える5つの要因
(1)業者間の敵対関係
「業界内の競争状況」という意味ですが、一般的に同業者が多い業界は、競争が激しく魅力はありません。
また、業界成長率が低い業界も、魅力があるといえません。やはり、成長著しい、これからの業界が魅力あるわけです。
さらに固定費の高い業界、在庫を多く持たねばならない業界も毎月のコストがかかりますので、あまり魅力がありません。
あるいは同業者がそれぞれいろいろな戦略を講じている業界も激しい競争が予想できますので、あまり魅力はありません。
たとえば、日本で一番多い小売業は何だと思いますか?
それは「菓子・パン小売業」だそうです。しかし、最盛期の昭和47年には19万軒あったのが、現在では8万軒に減っています。
確かに、同業者は多いし、パン離れもあったようだし、固定費・在庫も多そうですので、魅力はなさそうです。
このようにあらためて「5フォース」で見てみると、菓子・パン小売業界は、厳しい業界であることがわかります。
しかし最近では、その厳しさが業界をむしろ再活性化させ、さまざまなベーカリーが現れ成長率を上げており、
また新規参入が多くなっているようです。
また、固定費の高い業界とは、いわゆる売上高の割には、人手がかかる「労働集約型産業」のことを指します。
なぜなら、最大の固定費が、人件費だからです。
しかし、中小企業の場合は、全般的に労働集約型企業といわれています。それは生産性が低く、人件費割合が高いからです。
そこで、自社が労働集約型企業(体質)かどうか、判断するには、財務を調べれば、簡単にわかります。
試算表から『総人件費÷売上高』を計算し、60%を超えるようであれば、あなたの会社は「立派な労働集約型体質」です。
喩えてみれば、生活習慣病である“糖尿病”みたいなものです。従って、徐々に改善していく必要があります。
(2)新規参入の脅威
新規参入の多い業界は、あまり魅力がありません。
魅力があるから新規参入が増えているともいえますが、やはり競争が激しくなるわけですから、魅力ある業界とはいえません。
その新規参入は「参入障壁の高さ」によって決まります。参入障壁とは、参入するにあたっての障害です。
具体的には、大きな設備投資が必要だとか、経験がものをいう(経験曲線効果)とか、法令的な規制があるとか、などです。
そのような障壁があればあるほど、新規参入の脅威は低くなります。
例えば、お米屋さんの場合、昔は食管法の関係で許認可制でしたので、新規参入が少なく、良き時代がありました。
しかし現代はそうではありませんので、それに対応できない米穀店が多く倒産・廃業しています。
(3)代替品の脅威
代替品の脅威とは、自社の製品とは本来異なる商品だけれども、機能的には同等またはそれ以上の価値を提供する製品をいいます。
代替品があればあるほど、その業界の魅力は廃れていきます。
たとえば、日本酒とビール、ビールと焼酎、鉄道とバス、砂糖とシロップなど、意外に多いことに気づきます。
(4)買い手の交渉力
買い手とは、お客又は得意先企業のことです。
お客や得意先企業の影響力があまりに強い業界だと、やはり魅力はありません。
具体的には、買い手市場になっている業界(実は日用品業界などを始め、ほとんどの業界がそうです!)や提供価格が高額な業界、
さらには製品差別化ができない業界、製品が買い手にとってあまり重要でない業界、買い手が充分な情報を持つ場合など、
多くの業界で買い手の交渉力は上がって来ています。
もうとっくに成熟社会ですから、ほとんどの業界において、買い手の交渉力は高くなっているということです。
例えば、住宅メーカーなどの場合、住いは顧客にとって一生に一度の高額な買い物ですので、顧客に主導権があって、
なかなか厳しい業界となります。
また多くの場合、買い手が片寄っているということも挙げられます。
確かに、売上高の多くを占める買い手(上得意先企業)は有り難い存在ではあるのですが、見方を変えれば、
脅威になりうる存在でもあります。例えば、方向転換をされ取引が無くなった場合、倒産された場合など、目も当てられません。
したがって、感謝できるうちに、新しい得意先企業を創る努力、『顧客の創造』がたいへん重要な活動となります。
(5)売り手の交渉力
売り手とは、基本的に仕入先のことです。
仕入先の力があまりに強いと、やはり魅力ある業界とはいえません。
具体的には仕入れできる先が少ない場合、仕入先にとって自社が重要でない場合などが挙げられます。
例えば、原材料の仕入先が限られていれば、仕入先の交渉力が強くなります。
また仕入先にとって自社が重要でなければ、いつ取引停止などを求められるかもわかりません。
このように自社を取り巻く競合分析をして対策を講じることは、自社の競争力や存在力を高めることになります。
中小・小規模企業である私たちは大企業とは違って、残念ながら弱い存在です。
であるからこそ、このような分析を行なって自社を取り巻く環境を客観視し、できうる限りの対策を講じることが大切だと
思われませんか。
そんな姿勢が、自社の環境適応を促し、永続的な事業を実現させることにつながっていきます。
社長は経営者です。ぜひ、競合環境に対するアンテナを立てましょう。
戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。