403.図解 事業戦略策定 19
2019年3月1日
事業戦略策定第19回は『ビジョナリー理論』です。
戦略論の5回目です。
ビジョナリー理論とは、1995年9月に日経BP出版センターから発刊された
「ビジョナリー・カンパニー ~時代を超える生存の原則」(ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス著)に収録された
『十二の崩れた神話』のことです。
ビジョナリー理論は、いわゆる戦略論ではありませんが、
経営環境の変化が激しい現代の経営において、とても示唆に富んだ語録であり、会社経営のコツともいえるものです。
ビジョナリー・カンパニー(未来志向企業・先見的企業)は、ビジョンを持っている企業であり、未来志向の企業であり、
先験的な企業であり、業界で卓越した企業であり、100年以上継続している企業群のことを指します。
そして重要な点は、「企業は組織活動である」ということです。そのことを脳裏においてお読みください。
≪「十二の崩れた神話」より≫
1 すばらしい会社をはじめるには素晴らしいアイデアが必要である
☞つまり、素晴らしいアイデアは必ずしも必要ではないということです。
素晴らしいアイデアを持って短期的な成功を得ることも大切なことですが、より大切なことは「長距離のレースで勝つ」とい
うことです。その意味では素晴らしいアイデアというのはあまり重要ではなく、もっと重要なことがあると言っています。
2 ビジョナリー・カンパニーにはビジョンを持った偉大なカリスマ的指導者が必要である
☞必ずしもカリスマ経営者は必要ではないということです。
カリスマ的な指導者になるよりも、長く続く組織をつくる指導者をめざすべきだと言っています。
3.特に成功している企業は利益の追求を最大の目的としている
☞成功している企業は利益の追求を最終の目的にはしていないということです。
利益は事業にとって、重要な目的ではありますが、それは経過的な目的に過ぎず、おカネ儲けを超えた基本的価値観の追求こそ
が、重要な目的だと言っています。
4 ビジョナリー・カンパニーには共通した正しい基本的価値観がある
☞成功する企業に共通した正しい基本的価値観というものはないということです。
企業に共通する正解の基本的価値観や理念はなく、何よりも大切なことは、それぞれの企業にとって何かを突き詰めることだと
言っています。
5 変わらない点は変わり続けることだけである
☞やはり、変えてはいけないものもあるということです。
何でもかんでも変えていくのではなく、変えてはいけないものもあるということです。
それは基本理念であり、基本理念をしっかり維持することが組織に変化を与え、環境に適応できる組織にさせて行くということ
です。
6 優良企業は危険を冒さない
☞ときには、無謀と思える冒険もしなければならないということです。
石橋を叩いて実現可能な目標設定ばかりしていては、組織は惰性的になります。
ときには社運を賭けるような大胆な目標(BHAG)にチャレンジすることが、社員を引きつけ、やる気になる組織にさせると
いうことです。
7 ビジョナリー・カンパニーは誰にとっても素晴らしい職場である
☞誰にとっても「素晴らしい」という職場はないということです。
会社の基本理念と合う人にとっては居心地のいい職場となるのでしょうが、そうでない人にとっては、必ずしもそうではないと
いうことです。誰にでもいい顔をして、大衆に流されるのではなく、理念を守り切るということも大切です。
8 大きく成功している企業は綿密で複雑な戦略を立てて最善の動きをとる
☞綿密な戦略よりも、それよりもまずやってみて、そしてその結果に学ぶということが、大きく成功している企業
の共通項だということです。
考えているばかりでなく、ともかくやってみる・・、その結果から最善のものが生まれてくるということです。
9 根本的な変化を促すためには社外からCEOを迎えるべきだ
☞社内の人材育成こそが大切だということです。
根本的な変化と斬新なアイデアは社内からだこそもたらされる。だから人材育成が大切なのだということです。
10 もっとも成功している企業は競争に勝つことを第一に考えている
☞他社に勝つことばかり考えるのではなく、むしろ自社を磨くことを考えることが大切だということです。
競い合うべきは他社ではなく、自社自身であり、つねに自らに勝つことを考え続ける。だからこそ、改善され続けられるという
ことです。
11 二つの相反することは同時に獲得することはできない
☞現実は、二兎を追う者は一兎も得ず、ではないということです。
「どちらかをやる」という二者択一の考えではなく、「同時に追求できる」(ANDの才能)という考え方をすることで、経営
にスピード感が出てきます。
12 ビジョナリー・カンパニーになるには主に経営者が先見的な発言をしているからだ
☞言うだけではなく、実行しているからこそ、ビジョナリー・カンパニーになれるのだということです。
先進的な発言を書にしたためたりすることも一歩にはなり得ますが、それよりも大切なことは、試行錯誤することです。
何か感じるものがありましたでしょうか・・。経営者たるもの、常にピュアな心でいたいものです。
ビジョナリー理論とは、アンチテーゼ的な経営指南ですが、すごい企業がやっていることはすごいことをやっているのではなく、
それぞれが当たり前のことをやり続けているということです。その底辺には経営者が考え抜いた「経営理念」があり、その経営
理念を浸透させるためにも人材育成に力を入れ、そして何よりもスピード感と実行を大切にしているということです。
これならビジョナリー・カンパニーとまではなれなくとも、私たちも出来そうです。
これまでの慣習や思い込みなどに囚われずに、常識という枠の外に出る! そのことがやはり大切なのではないのでしょうか。
戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。