406.図解 事業戦略策定 22

2019年3月22日

事業戦略策定第22回は『戦略サファリ』です。

戦略論の8回目です。

戦略サファリ(Strategy Safari)とは、

1998年、ヘンリー・ミンツバーグ、ブルース・アルストランド、ジョセフ・ランペル3名の経営学者による著作です。

これは戦略論というよりは、企業経営を成功させるための実務書といえます。

その分、私たちの仕事に対して、大きなヒントを与えてくれるかもわかりません。

 

1 まず、始めよ! ここに成功の要諦がある

ミンツバーグらは、戦略とは、実践を通じて徐々に出来上がってくるものであると言っています。

つまり、戦略は事前に計画できるものではなく、まずビジネスを始めてみて、そこから得られる顧客の反応や現場の声を見聞きし、

試行錯誤をするうちに湧き上がってくるものであると言っています。

 たとえば、グーグルは・・・創業者であるサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジは、当初、検索アルゴリズムをほかのインターネット・ポータルに売ることで収益化しようと考えていました。しかし、この仕組みでは儲からないとわかると、オーバーチュアの手法を取り入れることで、一気に収益化することに成功しました。 この収益モデルは、そもそも計画されたものではなかったわけです。

 たとえば、アップルは・・・よくご存知のスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは、コンピュータ技術とデザインは当初から重視していましたが、あくまでもコンピュータは専門家が使うものだと考えていました。しかし、あとで加わったマイク・マークラが一般の家庭で使ってもらうようにしようと主張し、方向転換して成功しました。

 たとえば、ウォルマートは・・・ウォルマートは世界最大の小売企業ですが、リテールリンクやEDIの巨大なITシステム導入を決断したのは創業者のサム・ウォルトンではなく、二代目CEOのデビット・グラスでした。

このように成功している多くの企業は、決して創業者があらかじめ現在のビジネスモデルを考えたわけではなく、マーケットやパートナーの声に耳を傾け、現在のビジネスモデルを構築したわけです。

 

2 ビジネスは二兎を追える! 経営戦略の常識を疑え

戦略サファリでは、企業は相反する二つの戦略を同時に実現できる可能性があると主張します。

また、杓子定規な戦略では成功できないとも言っています。

競争の戦略やPPMなどでは、どれか一方を選んだなら、あとの一方はあきらめなければならないと集中論を展開しますが、

ミンツバーグはその考え方を否定します。

 たとえば、サムスンは・・・半導体分野でコストリーダーシップと差別化の両方を図り、東芝やNEC、日立などの日本企業市場を奪いました。

このように、成功している企業は、ビジョナリー理論でもご紹介したように、二者択一・ORの抑圧をはねのけ、ANDの才能によって両極にあるものを同時に追求しています。

 

3 とりあえず行動してみる! その結果の学習と試行錯誤が強みを創る

周到な計画より、ある程度計画を立てたなら、行動に移す。行動すれば状況が見えてきて、それによる学習や試行錯誤が企業の強み

を創るということです。

 たとえば、米国におけるホンダは・・・ボストンコンサルティンググループでは、ホンダを「日本国内で大量生産を行ってスケールメリットを実現したうえで、コストリーダーシップ戦略を追求し米中産階級に低価格の小型オートバイという新しい市場セグメントを提供した」と分析していますが、実はホンダには「アメリカで売れるかどうか、やってみよう」という考えしかなかったということです。

成功している多くの企業は、考えることも大切なのですが、それよりも「考えたら行動してみる」ということを重要視しています。

 

4 企業に思考停止は許されない! 考え続けることで多様性のある文化を創る

大きな失敗が起きるときは、マネジメント層が一つの見解をまじめに捉えすぎてしまったときであると言います。

だから、創業者から二代目、三代目による経営移譲はむずかしいと言われます。

それは二代目、三代目経営者がそれぞれ先代のやり方を是として、思考停止したときから始まります。

 たとえば、ウォルマートでは・・・節約重視から大規模ITシステム投資へ転換したことから、再生が始まりました。

成功をし続ける企業は、それまでの慣習をただ踏襲し続けるのではなく、企業理念を踏まえて時には大きな方向転換をします。
ビジョナリー理論でいうところの「BHAG」です。

 

 

「戦略サファリ」と「ビジョナリーカンパニー」には、多くの共通点があることを気づかされます。

また、高尚な思考より、まず現場の声や市場の声をよく聞き、そしてこれだと思ったことを繰り返してやり続けることが大事で、

その中に、それそれの企業にとって大事なことが見つかったり、成功の要諦を掴むことができるということだと思います。

私たちが忘れてはいけないことだと思います。

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。