410.図解 事業戦略策定 26

2019年4月19日

事業戦略策定第26回は『プロの経営者論プロフェッショナル・マネジャ』です。

戦略論の12回目です。

著者ハロルド・ジェニーンは、1960年代当時、アメリカ国際電話電信会社ITTで58四半期連続増益を記録した辣腕経営者です。

『プロフェッショナル・マネジャ』は、経営に対して強い「信念」と卓越した「実績」を持っているジェニーンの、

経営者に対する強烈なメッセージです。

したがって、この『プロフェッショナル・マネージャ』は、経営者にとって必読の書とも言われています。

では、その考え方をご紹介しましょう。

 

1 プロフェッショナル・マネージャ -経営者は自分を犠牲にする覚悟があるのか!-

文字どおり、プロの企業経営者として、「経営者は自分を犠牲にしてでも経営責任を負わなければならない」と強く問い掛けして

います。

 

2 経営は芸術・センスであり、科学や理論ではない

誤解を与える表現かもわかりませんが、経営力はある部分持って生まれた才能であり、「経営者自身の感性や信念に負うところが

大きく、決して方程式やマニュアルなどでは、経営はできない」ということです。

このことは、よく言われる「企業はその経営者の器以上に大きくならない」と相通じるものがあります。

たとえば、1970年代入ると、「日本的経営」が世界から称賛されるようなったわけですが、それは後付けで、そのように言われた

だけで、「当時の日本企業は日本の文化や時代的背景の中で懸命に努力していたにすぎない」とジェニーンは看破しています。

だから、そもそも『日本的経営論』なんてものはなく、個人の自由と機会の平等という伝統があるアメリカ企業が、真似てもうまく

行くはずがないと言っていました。

つまり、見よう見まねでは経営はできず、経営とは、自分の能力の範囲内で、経営環境や他人・社員のせいにしないで、経営者自身

責任を持って判断し、率先垂範していくものだということです。

 

3 経営は成果がすべてである

『プロフェッショナル・マネージャ』の原題は『マネージング(Managing)』ですが、「経営とは成果をもたらすこと」であり、

マネージャとは「成果を叩き出すことができる人である」と言っています。

たとえば、本は最初から読み始めて、終わりへと進みますが、経営はその逆だと言います。

つまり、終わりから始めて、そこへ到達するために、できる限りのことをすれば、最大の成果が挙げられるということです。

もし、ねらう成果が得られなければ、できる限りに挙げた施策に問題があったわけなので、その施策の変更を重ねればよいという

ことです。

つまり、ベストを尽くし、常に、プラン・ドゥ・チェック・アクションというPDCAマネジメントを回していけば、

たとえ思いどおりにならなくとも、その中で最大の成果が得られ、それが経営者の責任だと言っています。

 

3 経営者は超リアリストであるべきである

超リアリストとは、言い換えれば、現場主義あるいは実務主義ということです。

経営者は会社の奥で引きこもり、参謀本部のごとく、机上でものごとの判断や指示、あるいは批判ばかりをしているのではなく、

常に現場へ出て、わかりやすい指示や即断即決の判断をするべきだといいます。

たとえば、流行り言葉のような「起業家精神が大切だ」とか、「今こそイノベーションが重要だ」などの浮ついたかけ声というもの

を戒めています。

他社で成功した事例でも、自分たちの会社あるいは自分たちの仕事の中に落とし込まないと、現実の成果にはつながりません。

 

4 ヒトが主役

最後にジェニーンは「人こそが主役である」と温かい情感を示しています。ここが人を動かす情熱となる要です。

ただ、単なるリアリストでは、人を動かせる経営者にはなれません。強い信念と熱い情熱があってこそ、人が動く原動力になるのだ

と思います。 そこで次のような「経営についての個人的なすすめ」を挙げています。

①本来の自分でないことを振り回すな                 ☛カッコをつけるな、おのれを出せ

②事実と同じくらい重要なのは、事実を伝えてくれる人間である     ☛正直な人間、部下を排斥するな

③組織の優秀な人間は、マネージャからの質問を待ち受けている     ☛幹部になる人間には度量がある

④経営上の核心を突く質問を嫌がるのはインチキな人間に決まっている  ☛耳の痛い話も謙虚に聞け

⑤現場におけるきわどい判断はマネージャがすべきである        ☛任せると丸投げをハキ違えるな

このように逆から理解すると、ジェニーンの言わんとするところがよく理解できるのではないのでしょうか。

 

この『プロフェッショナル・マネージャ』は、孤独といわれる企業経営者に、勇気と活気を与えてくれる経営書です。

小規模な企業であればあるほど、経営者の重要性は増します。

経営者である社長の経営道を、社員に伝えて「いい会社」を作っていきましょう。

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。