420.図解 事業戦略策定 36

2019年7月6日

事業戦略策定第36回は『フェルミ推定』です。

『フェルミ推定』なんて用語、聞いたこともない方も多いでしょうし、また聞いた方は数学の話だと思われているかもしれません。

しかし、この『フェルミ推定』は、れっきとした経営に関係のある用語なのです。

たとえば、経営計画を作成するとき、マーケットシェアを意識して策定するが重要ですが、必ずしもマーケット規模がわかっている

とは限りません。そんなときにこの『フェルミ推定』を知っていれば、「あたらずと雖も遠からず」およその全体数値が掴めます。

また、この『フェルミ推定』は、思考を論理的する訓練にもなります。

したがって、経営そのものが非常に論理的になるという利点もあります。

 

1 フェルミ推定とは

『フェルミ推定』とは、実際に調査することがむずかしく捉えられない数値を、いくつかの推論のうえに論理的に展開し、

その数値を推し量る考え方です。

この名称は英国物理学者であり、1938年にノーベル物理学賞を受賞した、エンリコ・フェルミ博士に由来しています。

この考え方はコンサル企業や外資系企業の面接などで用いられることで有名ですが、欧米では、学校教育で科学的な思考を鍛える

ために用いられていることもあります。

経営とは確かに「感性」に基づくものでもありますが、私たち人間も社会心理学的に考えれば、一定のメカニズムに基づいて

行動しているところもありますので、「科学」的に判断してコントロールできる側面も多くあります。

この『フェルミ推定』はそんなトレーニングにも通じます。

 

2 フェルミ推定の具体例

何はともあれ、まずよく紹介される事例で『フェルミ推定』を理解しましょう。

(1)米国シカゴには何人のピアノ調律師がいるのか?

まず、この問いに対して次のような仮説を置きます。(これが論理的な思考を鍛えるトレーニングになります)

 仮説1.シカゴには300万人の人がいると推定する

 仮説2.シカゴの1世帯当たりの人数は平均3人であると推定する

 仮説3.10世帯に1台の割合でピアノがあると推定する

 仮説4.ピアノ調律は平均して1年に1回行うものと推定する

 仮説5.調律師が1日でできるピアノの調律は3台と推定する

 仮説6.調律師は週休二日で、年間250日は働くと推定する

すると、次のような推定ができます。

 1.シカゴの世帯数は1世帯平均3人なので・・  300万人÷3人=100万世帯

 2.シカゴのピアノ台数は10世帯に1台なので・・100万世帯÷10世帯=10万台

 3.ピアノの調律は年1回なので・・       年間10万件

 4.一人のピアノ調律師は1日3台行えるので・・ 1日3台×250日=年間750台

 5.よって、シカゴのピアノ調律師は・・     10万件÷750台≒130名  と推定できます。

(2)東京にマンホールはいくつあるのか?

まず、この問いに対する仮説を同様に考えましょう。

 仮説1.東京の人口は1300万人と推定する

 仮説2.1世帯当たりの平均人数は2.5人と推定する

 仮説3.上下水道の普及率は100%と推定する

 仮説4.マンホールは10世帯に1個必要と推定する

すると、次のような推定ができます。

 1.東京の世帯数は・・            1300万人÷2.5人=520万世帯

 2.東京で上下水道が普及している世帯数は・・ 520万世帯×100%=520万世帯

 3.よって、東京のマンホールの数は・・    520万世帯÷10世帯≒52万個  と推定できます。

ちなみに「東京都下水道2018」によれば、東京のマンホールの数は486,931個だそうです。

 

3 フェルミ推定の重要性

『フェルミ推定』は、確かに正しい解を導き出せる考え方ではありません。

しかし、漠然としていたマーケット規模などを、より明確できる考え方です。

生じる誤差は推定する人がすでに持っている「勘違い」や「論理的思考の矛盾」の大きさを示すものであり、

『フェルミ推定』の問題点を指摘するものではありません。

だからこそ、論理的な思考を鍛えるトレーニングになるわけです。

いずれにせよ、戦略・戦術といわれる方策を、より具体的に考えられるようになることに変わりありません。

 

事業戦略を考えるうえで、マーケット規模を推し量ることは重要です。それによって、戦略・戦術をより具体化できます。

環境変化が激しい中、すばやく、論理的に、戦略を展開できる能力は現代において重要です。

ぜひ、自社の経営に『フェルミ推定』を取り入れてみましょう。

必ず、経営はより論理的になり、これまでとは違う結果をもたらすことになるかもわかりません。

 

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

インプルーブ研究所は、ITウェブサイトとマーケティングおよび経営会計で貴社の発展に尽力します。

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今回で「図解 事業戦略策定」は終了です。このコラムが少しでも皆さまの日頃の経営にヒントになれば幸甚です。

次回からは10月から改正される消費税10%について、実務的でわかりやすく解説します。 お楽しみに!