428.消費税10% 業種別の課題
2019年9月1日
インプルリポート『消費税10%』の第8回目は「業種別の固有課題」です。
経営における消費税の影響は業種によって違います。 今回はそんな業種別の課題について考えます。
1 飲食業の場合
・高級割烹からレストラン、すし店、居酒屋、定食屋、ラーメン店などさまざまな業態がありますが
基本的にはファーストフードなどを除いては店内で食するわけですから、税率は標準税率10%となります。
・ただし、一部お持ち帰りサービスをしている場合は、軽減税率8%となります。
・B2C産業ですから、キャッシュレス・ポイント還元制度への対応や料金表示の対応なども考えなくてはなりません。
・料金表示の対応とは店内食と持ち帰りの場合の表示のことももちろん含みますが、
もう一つ考えておかねばならないことは2021年(令和3年)3月31日で「総額表示方式の特例措置」が終了することです。
したがって、料金表示は総額表示を基本に考えるべきかと思います。
・さらに大事なことは社用に対する対応です。4年後からはインボイス制度が始まりますので、インボイスが発行できないと、
つまり適格請求書発行事業者にならないと「仕入税額控除」が会社ではできなくなります。
とすると、適格請求書が発行できない飲食店からは社用需要が無くなる、あるいは減少する恐れがあります。
2 建設業やの場合
・10月から消費税が10%となりますから「駆け込み需要」が予測されますが、
経営的には駆け込み需要を「如何にして起こさせるか」ということです。
※このことは建設業のほか、家電販売店や高級商品小売業などにも当てはまります。
・またその駆け込み需要をいかにして9月中に納品するかが大事になります。10月に納品しては元も子もなくなります。
・駆け込み需要があれば、必ずその反動があります。だから「駆け込み需要」といわれるわけですが、具体的には10月以降に
予測される反動をどう対処するか、その反動対策を考えておくことが大事になります。
※このことは建設業のほか、家電販売店や高級商品小売業などにも当てはまります。
・売上に係る消費税「仮受消費税」には、10%と8%がしばらく混在することになります。
今年の3月31日までに契約した案件はたとえ10月以降に出来上がったとしても消費税は「8%」です。
4月以降契約した案件が10月以降に出来上がった場合には消費税は「10%」になります。
また今年の3月31日までに契約し、4月以降追加注文があった案件が10月以降に出来上がった場合は
4月以前に契約した部分は消費税「8%」、4月以降に契約した部分は消費税「10%」となります。
さらに仕入れや経費で軽減税率8%が発生する場合は、標準税率の10%・8%に加え、軽減税率の8%と3つに分けて
管理する必要があります。
・また外注として一人親方を使っているけれど形態的には常に同金額である場合は外注としては否認されていく傾向にあります。
そうなればいままでは外注費だったので仕入税額控除もできましたが、それが無くなるばかりか、社会保険料などの法定福利費も
発生することになりますので極めて経営を圧迫する状況になります。
3 小売業の場合
B2C型の小売業の場合はほぼ飲食業と同じ課題があります。
・一部商品をその場で食べられるサービスをしている場合は軽減税率8%が生じることとなります。
・B2Cが基本の小売業の場合はキャッシュレス・ポイント還元制度の対応や料金表示の対応なども考えなくてはなりません。
・例えば菓子店などで比較的社用の需要がある場合はインボイスに対する対応も考えなくてはなりません。
インボイスが発行できないと適格請求書が発行できる菓子店に需要が移ってしまうことも予想できるからです。
4 イートインスベースがある場合
ベーカリー店やお弁当屋さんなどではその場で食することができるイートインスペースを設けられているところもあります。
その場合、お持ち帰りは8%、店内飲食は10%と、いちいちその場で税率対応をするのも大変ですから、
共通料金で対応することも認められています。
たとえば、アンパンを持ち帰り、店内飲食かかわらずに170円にするなどです。
そうした場合売上時に発生する仮受消費税は次のようになります。
■持ち帰りの場合 本体売上高は170円÷110×100=155円 仮受消費税は170円÷110×10=15円
■店内飲食の場合 本体売上高は170円÷108×100=157円 仮受消費税は170円÷100× 8=13円
今回の消費税改正は、中小・小規模事業においては「過去の消費税改正とは違う」という認識を持つべきだと思います。
そうでないと4年後にはとんでもない状況になりかねません。よく考えましょう。