445. 働き方改革 高度プロとフレックス
2019年12月27日
『働き方改革』の第5回目は
「高度プロフェッショナル制度の創設」と「フレックスタイム制の拡充」について考えます。
第5回『高度プロフェッショナル制度の創設とフレックスタイム制の拡充』
1 高度プロフェッショナル制度の創設
(1)高度プロフェショナル制度とは何か?
厚労省では、次のように解説しています。
「高度プロフェッショナル制度とは、
高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で、一定の年収要件を満たす労働者を対象として、
労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、
年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、
労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。」
つまり、
①高度な専門知識を有していること
②職務の範囲が明確であること
③一定の年収要件を満たしていること
④労使委員会と本人の同意を得ていること
⑤年間104日以上の休日確保と健康・福祉が確保されていること
これらを満たしていることを前提に、労働基準法の規定は適用しないでもよろしいという制度です。
通常の企業ではあまり関係がない法案だと思われます。
(2)対象業務
では、具体的にどのような業務が「高度プロフェショナル制度」を適用できるのでしょうか。
1.金融工学等の知識を用いて行う「金融商品の開発業務」
2.資産運用業務、又は有価証券売買その他の取引の業務のうち投資判断に基づく資産運用業務、
投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引業務、
又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引業務などの「資産運用業務全般」
3.有価証券市場における相場等の動向、又は有価証券の価値等の分析・評価、又はこれに基づく「投資に関する助言業務」
4.顧客の事業運営に関する重要な事項についての調査又は分析、及びこれに基づく当該事項に関する考案、
又は助言業務などの「アナリスト業務全般」
5.新たな技術・商品又は役務の「研究開発業務」
つまり、金融商品の開発業務やリーディング業務、アナリスト、資産運用業務、経営コンサルタント業務、研究開発業務などが
適用するということで、証券会社や経営コンサルタント会社あるいは何らかの研究職が対象ということになります。
(3)対象業務の要件
対象となる業務は、対象業務に従事する時間に関しては使用者から具体的な指示を受けて行うものは含まれないとなっています。
つまり、労働時間に関しては自由裁量権があるということです。
(4)対象労働者の要件
さらに対象聾者の要件として、次の2つが挙げられています
1.使用者との間の合意に基づき「職務が明確に定められている」こと
2.使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額(1075万円以上?)を相当程度上回る
水準として、厚生労働省令で定める額以上であること
(5)高度プロフェショナル制度導入の流れ
「高度プロフェッショナル制度」を導入するための流れとして、厚労省は次のように説明しています。
ステップ1.労使委員会を設置する
ステップ2.労使委員会で決議する
ステップ3.その決議を労働基準監督署に届ける
ステップ4.対象者の同意を書面で得る
ステップ5.対象者を対象業務に就かせる
ステップ6.決議の有効期間の満了
※継続する場合はステップ2.からの繰り返しとなります。
(5)解説
ここまでになると「高度プロフェッショナル制度」を活用できる中小企業は、やはりあまりないように思われます。
ただし「働き方改革は、働く人々がそれぞれの事情に応じて、多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための
改革である」ということは理解しておくことは大切です。
仕事を通じて「自己実現」したい人は、自分の判断で、制限なく思いっきり働けるということでしょうか。
この制度は大企業・中小企業を問わず、すでに本年(2019年)4月から施行されています。
2 フレックスタイム制の拡充
(1)概要
これまでフレックスタイム制による労働時間の清算期間は最大「1か月間」でした。
しかし、今回の法改正により最大「3か月間」となります。
例えば、今回の拡充により、4月1日から6月30日までの3か月間(91日)を清算期間として定められます。
そうすることで、労働者は清算期間の総労働時間520時間(=週40時間×91日÷7日)を、フレキシブルタイムやコアタイムを
守りさえすれば、自由に分配して働くことが可能となります。
(2)フレックスタイム制とは
そもそもフレックスタイム制とはルールの中で働く人が毎日の始業時間と終業時間を自ら決められる制度であり、
プライベートとワークタイムのバランスを図りながら、効率的に働くことを目指した制度です。
厚労省では、次のような図でフッレクスタイム制を説明しています。
このようにフレックスタイム制は働く人たちにとって、日々の都合に合わせて「時間という限られた資源」をプライベートと仕事に
自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなるというとです。
やはり「多様で柔軟な働き方」というのがキーワードのようです。
(3)清算期間の延長とは
清算期間の延長についても厚労省は次のような図で説明しています。
①これまでは、超過した勤務時間を、翌月なり翌々月に充当することはできませんでした。
②これからは、翌月または翌々月までに限り、充当できるようになります。
これによって来月あるいは再来月にはいろいろな予定があるので今月は余分に働いておこうなど、やはり「多様で柔軟な働き方」が
できるようになります。
(4)フレックスタイム制導入のための基本的ルール
要件は、就業規則等への規定と労使協定の締結の2つが必要です。
1.終業規定等への規定
就業規則等に始業ならびに終業の時間を労働者の決定に委ねる旨を定めます。
例えば、就業規則上の始業終業時刻等に「フレックスタイム制が適用される従業員の始業・終業時刻については
従業員の自主的決定に委ねる」と記載し、フレキシブルタイムやコアタイムなどを規定します。
2.労使協定の締結
労使協定で、対象労働者の範囲、清算期間における総労働時間、1日の労働時間やコアタイム・フレキシブルタイムなどを
規定します。但し、コアタイム・フレキシブルタイムは任意とされています。
(5)解説
フレックスタイム制はうまく活用できれば、社内士気を高め、生産性の向上や効率化アップなどメリットも大きい制度です。
一方、労働時間の配分を社員の裁量に委ねることになりますので、ときには軋轢なども生じるリスクがあります。
しかし、新しい制度導入には必ずそれなりのリスクはついて回るものですので、活用できるものであれば、積極的に活用すべきだと
思います。
なお、この制度は大企業・中小企業を問わず、すでに本年(2019年)4月から施行されています。
いかがでしょうか、『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?
いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元深くでマグマのように渦巻いています。
それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切だと思います。
そうは思われませんか?