446. 働き方改革 36(さぶろく)協定
2020年1月5日
『働き方改革』の第6回目は
働き方改革対応の前提となる「36(さぶろく)協定」について考えます。
第6回『36(さぶろく)協定』
1 36協定とは
そもそも「36協定」とは、労働基準法第36条に規定されていることから「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。
労働基準法では、法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間以内と定められており、さらに法定休日についても毎週1日は取る
ことが定められています。
例えば、1日の法定労働時間が9時~18時で、昼休み1時間の8時間の場合であれば、週休2日が必然となります。
週休2日制はもう当たり前のことなのです。
そして36協定では、法定労働時間や法定休日を超えて働く場合には、労使協定を結び、行政に届出することを求めています。
もし届けていなければ『法定違反』となります。
働き方改革関連法案が可決され、昨年4月から順次適用開始となり、いよいよ本丸の「時間外労働の上限規制」が
中小企業に対しても本年4月1日から適用開始となります。
これによって、これまで青天井だった「残業時間の上限規制」が、年間720時間までと規制され、さらに単月では100時間未満
(但し、複数月平均は80時間)と規制されます。
原則は月間残業時間45時間、年間残業時間360時間(月平均30時間)ですから、これを超えて上限規制内で残業する場合には、
「36協定」に基づいて届け出を提出する必要が生じてきます。
したがって「36協定」は原則、どの企業においても締結しておかなければならなことになります。
なお「36協定」の対象者は、常時使用する労働者となっており、正社員だけでなく、パート・アルバイトも含まれます。
2 36協定の締結状況等
では、企業の36協定締結状況はどのような状況なのでしょうか?
連合が2017年に実施した「36協定」の締結状況等によれば、次のとおりです。
大企業は94%の企業が36協定を締結していますが、中小企業では43.4%の企業しか、36協定を締結してしていません。
それに対し、66.3%の中小企業が「月間45時間以上」の残業をさせています。
さらに、年間360時間以上の残業をさせている中小企業は72.1%、大企業においてもナント81.8%の企業が年間360時間以上の
残業をさせているというのが実情です。
また、2023年4月からは中小企業に対して「時間外割増率猶予措置の廃止」も実施されますが、その「法定時間外労働」に
対する割増賃金率についても見てみましょう。
この表によれば、割増賃金を支払っていない中小企業は64.4%という驚くべき実態です。
さらに、支払いがある35.6%の中小企業における「平均割増賃金率」は27.7%という状況であり、大企業と比較して
大きく見劣りします。
3 10人未満の中小企業でも「36協定」の締結は必要か?
「36協定」は従業員数の多少に関係はありませんので、締結及び届出は必要です。
労働基準法第36条には、従業員数に関わる定めがありません。
定めがないということは「適用」されるということです。
もちろん、法定時間外労働及び休日労働等が一切ないということであれば、36協定を締結する義務はありません。
しかし、現実問題として、残業も休日出勤も絶対ないということはありえないとも言えますので、やはり36協定の締結は
すべて企業において必要と言えます。
なお、就業規則は労働基準法第89条で「常時10人以上の労働者を使用する使用者」と限定されていますので、
10人未満の事業所には作成義務はありません。 但し、必要ないということではありませんので、誤解しないようにしましょう。
4 「36協定」の違反と罰則
「36協定」を締結しないで残業をさせることはもちろん、協定を結んでいても限度時間を超えると、労働基準法違反です。
さらに今回の働き方改革関連法で「時間外労働に上限」が設けられましたので、各経営者にはこれまで以上に厳格な労働管理が
求められるようになると考えられます。
罰則は、6カ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金となります。
これからは、上限時間を超える残業、残業・休日出勤の際の明確な理由、労働環境の整備(インターバルや産業医など)などに
これまで以上に気を配る必要があると思われます。
いかがでしょうか、『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?
いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元深くでマグマのように渦巻いています。
それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切だと思います。
そうは思われませんか?