448. 働き方改革 その対応策
2020年1月26日
さて、これまで7回に渡って『働き方改革』について見てきましたが、今回がいよいよ最後となります。
最後は「働き方改革の対応策」です。
第8回『働き方改革 その対応策』
今回の「働き方改革」で変えていかなければならないことは、次の8点でした。
1.今年4月から 中小企業も残業時間を減らして、『時間外労働の上限』を守らなければなりません。
2.昨年4月から 『有給休暇』は最低でも年5日以上は取れるように努力しなければなりません。
3.昨年4月から 当日と翌日の勤務時間の『インターバル』をそれ相当の時間(10時間程度)取らせばなりません。
4.2023年4月から 中小企業もいよいよ『法定割増賃金率』を遵守する必要があります。
5.昨年4月から 従業員の健康を守るために『産業医』による健康管理をしなければなりません。
6.大企業は今年4月から、中小企業も来年4月から 『同一労働同一賃金制度』にしなくてはなりません。
7.昨年4月から 本人と労使委員会の承諾のもと『高度プロフェッショナル制度』を導入できるようになりました。
8.昨年4月から 『フレックスタイム制度』の清算期間が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。
1 働き方改革の目的
いま一度、働き方改革の目的を確認しましょう。
(1)経済力の低下を防ぐ
まず1点目は「経済力の低下を防ぐ」ということです。
いま、日本の人口は恐ろしいスピードで減少しています。経済力は『一人当たりGDP×人口』ですから、日本の経済力が低下して
いくことは確実です。それを少しでも防ぐには、人口は減るのですから、生産性(一人当たりGDP)を高めるしかないわけです。
そのために、働き方改革で従業員のモチベーションを上げて、生産性の高い職場に変えていこうということです。
モチベーションを上げて生産性を向上させるためには、同時に「賃金」を上げることが必要です。
この政策のウラには「生産性の高い企業に労働力を集約させる」という本音もあります。
したがって、企業として生き残っていくためには「生産性を上げて、賃金も上げる」ということを成し遂げる必要があります。
(2)労働人口の減少を食い止める
第2に、人口が激減していけば、当然「生産年齢人口」もすごい勢いで減少していきます。
それを少しでも食い止めるには、今まで以上に女性や高齢者にとって、働きやすい労働環境を作る必要があります。
例えば、長時間労働を無すとか、休みもきちんと取らせるとか、より柔軟なフレックスタイム制度やテレワーキングなどを
用意して多様な働き方ができるようにしていく必要があります。
(3)人口減少を食い止める
第3に、根本的には人口減少を食い止めていく必要があります。
安倍総理の「50年後でも1億人」という発言の主旨もそこにあります。
そのためには安心して子供が産める社会環境や労働環境を作り、さらに子育てもしやすい労働環境や社会環境も作らなければ
なりません。
つまり、働き方改革の目的は、
割増賃金率や給料を上げられる企業に人を集約し、生産性向上を図るとともに、多様な働き方の実現や正規・非正規の待遇差解消、
長期間労働の是正などによって、女性にとっても、高齢者にとっても、さらには男性にとっても働きやすい労働環境をつくること
にあります。
2 働き方改革の対応策
(1)管理の強化だけではダメ
一般的に言われる、残業時間を減らしたり、有休を取らせるための勤怠管理や残業管理、あるいはどうすれば人件費を増やさずに
済ませるかという消極的で内向きな観点からの対応策では、対応策とはなりません。
働くということは、スーパーの袋詰め競争ではありません。
袋詰め競争のように、できるだけ「基準内労働」という袋に多くの仕事を詰め込むという姿勢では、袋が伸びて、やがて破けて
しまうように、従業員の皆さんは息を抜くこともできず、疲れ果て生産性が向上するはずがありません。
そんなことだけをすれば逆にモチベーションは下がり、従業員の離脱を招き、生産性向上どころか、やがて廃業することになって
しまいます。
(2)働き方改革は生産性を上げて給料も増やしていく仕組みです!
働き方改革はもっと前向きなものであり、それは時短を実現して、多様な働き方も選択できて、その結果、生産性を向上させて、
給料も上げていく仕組みです。
そのためには、従業員のモチベーションが上がらなくてはなりません。 これが最大のポイントです。
そうしていくためには、まず管理職に「働き方改革」の正しい理解を促す必要があります。
そのためには次のことが重要です。
1.経営陣として「働き方改革」の正しい主旨を理解する
ます、経営に携わる者が率先垂範して、働き方改革を前向きに正しく理解する必要があります。
働き方改革の目的は、単に労働時間等の削減だけではなく、生産性の向上と従業員の待遇(拘束時間と給料)改善です。
そのことを経営に携わる経営陣が正しく認識する必要があります。
2.「働き方改革」の正しい主旨を管理職に周知徹底する
働き方改革を行っていくのは「現場」です。その現場を統括しているのは管理職の方々です。
その意味で、管理職が働き方改革の目的と内容を正しく、経営陣と共有することはとても大切なことです。
3.待遇が改善されていくことを中期経営計画で従業員に示す
そして従業員に一連の「働き方改革」でどのように待遇が改善されていくのか、中期経営計画で示す必要があります。
そのうえで、勤怠管理の強化などが必要なら、そのルールなどを説明をします。
4.単年度経営計画で「働き方改革」の成果を埋め込む
一人当たりの生産性向上や一人当たりの付加価値額向上、さらには給料引上げの目標の提示など、単年度経営計画に埋め込み、
全社員共通の目標として表明します。
特に給料については、最低でも残業が減っても支給総額は増えるようにし、それを実現するための粗利の設定、売上の設定など
をします。
働き方改革でやり甲斐があり、それぞれが活躍できる良い職場を作って行きましょう。
いかがでしょうか、『働き方改革』に対応するのは非常に大変だと感じられたのではないのでしょうか?
いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元の奥深くで、マグマのように渦巻いています。
それらに対処していくためには、ます会計による経営管理をしっかりさせることが大切です。
そうは思われませんか?