451.会計で経営力を高めるシリーズ 売上債権
2020年2月15日
第2回会計で経営力を高めるシリーズ『売上債権』
1 売上債権とは受取手形と売掛金
小売業などの現金商売を除けば、販売すれば「売掛金」が発生することになります。
その売掛金を請求書にして取引先に送り、期日までに入金されれば、ここで初めて『資金』となります。
また、受取手形で回収しているのであれば、さらにそれから2~3か月後に入金され、ようやく『資金』となります。
相手方から見れば、手形支払のほうが資金繰りが楽になりますので、特に大きな運転資金が必要な企業ほど手形を使うことが
多くなります。
その代表的な業種が建設業であり、建設業を中心に手形で取引する企業が多いわけです。
その場合、回収までに4~6か月ほどかかることになりますので、資金繰りの関係から「割引」をする場合があります。
ただし、ここに注意が必要です。
手形割引はもし手形を発行した相手方が倒産すれば、その割引手形分は自社が返済しなけらばならないということです。
つまり、危険な資金調達方法である、ということです。
倒産理由にはいろいろありますが、直接の原因は「銀行取引停止」であることを知っておきましょう。
売上債権は「資金」ではなく「債権」、相手が支払わない限り、ただの紙きれです。
2 売上債権は100%回収できるとは限らない
(1) 売上債権は約定とおり回収することが重要
売上債権はその状態ではただの紙きれなので、約定とおりに回収することが重要です。
例えば、翌月25日支払という約定であれば、翌月の25日までに代金回収をするということです。
「支払が遅れる」ということは、2ヵ月分溜まれば支払額は2倍となります。
何かの事情で相手方の支払いが遅れているわけですから、溜まれば溜まるほど、相手先はますます支払うことが
困難になるかもわかりません。
だから、約定とおりお支払いいただくことが大切なのです。
(2) 不良債権の始まりは”回収遅れ”
実は「回収遅れ」が不良債権化の始まりであり、統計では6ヵ月分溜まるとその回収可能性は40%に下がり、
1年分ともなれば30%を切ると言われています。
ですから、入金がない場合には直ちに得意先に連絡を取り、支払日を確認して回収しましょう。
回収期日に入金がない場合、得意先に確認連絡することは「失礼な行為」ではなく、自社の信用度を上げる行為である
ということです。
期日に入金がないので確認させていただくことは、相手方に「しっかり管理されている会社だな」と伝えることであり、
さらには支払優先順位を上げていただく行為でもあります。
また、期日までに入金がない場合、事務的にメールや督促状を出すことで済ませる企業も多いようですが、
それは「回収する行為」という意味ではあまり効果はありません。
なぜなら、書面で支払われるのであれば、請求書を送付することで支払われるはずだからです。
請求書を送付しても入金されないのですから、別の方法をとる必要があります。
別の方法とは、電話連絡または訪問です。
督促行為は会社の信用を上げる行為であり、効果ある回収活動とは電話連絡又は訪問です。
3 売掛金の消滅時効
決算書を見させていただくと、たまに、何年も前の売掛金が残っている場合があります。
しかし、売掛金にも「時効」があることをご存知でしょうか? 時効にさせないためには、定期的に督促することが必要です。
・1年で消滅する売掛金 宿泊料、運送料、飲食代
・2年で消滅する売掛金 教育代、売掛金
・3年で消滅する売掛金 医療代、建築代、自動車修理代、工事代金
・5年で消滅する売掛金 上記以外
売掛金には時効があるので、定期的に督促する必要があります。
4 適正な売上債権額とは
では、売上債権の適正な額とは、どの程度の額なのでしょうか? それは各企業の回収サイトで明確にわかります。
例えば、当月25日に締めて、当月末請求書発送、翌月末入金期限であれば、理論上は「当月末売上債権≒当月売上高」と
なります。
例えば、当月25日に締めて、当月末請求書発行、翌月末手形回収、手形はその後3ヵ月後入金であれば、
「当月末売上債権=(当月末売掛金≒当月売上高)+(当月末受取手形≒3カ月分売上高)≒4カ月分売上高」となります。
このようにして、自社のあるべき売上債権額を把握しておくことは重要です。
もしそれ以上あれば、どこかの得意先に未回収債権があることを示しています。
売上債権額には”あるべき額”が明確にあります。 売上債権が多すぎるのは安心材料ではなく、問題です。
5 会計上の売上債権管理
現代では多くの企業で、会計はパソコンで行われています。
それを前提に言えば、せっかくパソコンという情報機器で処理しているのですから、
会計上の受取手形と売掛金は得意先別に管理しましょう。 そうすることが「会計を経営に活かす」ためにも重要です。
売掛金を得意先別に管理すれば、回収が滞っている得意先は一目瞭然となります。
また前年同月と比べることによって、取引の増減もわかります。
受取手形も得意先別に管理することで回収状況が把握できます。
このようにすれば当然、会計入力の手間も増えますが、それは会計を通して経営を管理しているのですから、
当たり前と言えば、当たり前のことと言えます。
パソコンによる会計は経営力を高めるためのものであり、経理事務の効率化が目的ではありません。
このようなことを考えると、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものと思われませんか。
少しでもそのように思われてきたなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを示しています。
会計業務を楽しんで、荒波に強い会社になるように取り組みましょう!