477.主な戦略理論 ポーターの戦略モデル

2020年8月14日

「戦略」とは、事業をどのような方向へ進めていくのかというフレームワークです。

もちろん、いろいろな考え方があって然るべきですし、それを決めるのは会社の経営陣です。

しかし、小さな中小企業の場合は、それは社長であるといって過言ではありません。

そんなときに、経営者として少しでも戦略理論を知っておくと、非常に役に立ちます。

 そこで第二回目はアンゾフモデルに続く、押さえておきたい戦略理論である『ポーターの戦略モデル』です。

アンゾフモデルは「経営全体の戦略モデル」という言い方をすれば、ポーターの戦略モデルは領域を絞った「販売戦略モデル」です。

そのイメージ図は次のようなものです。

 

このように図示すると、よく理解できますが、販売戦略について「マーケットの広さ」と「基本的な考え方」から考えます。

  マーケットの広さとは、全国あるいは世界か、それとも地元か。

  基本的な考え方とは、価格か、それとも付加価値すなわち差別化なのか。

そうすると4つのマトリクスができますので、そのいずれの方向を取るのかによって、基本的な戦略理論が導けるということです。

 

基本戦略マトリクスは、今から約40年前の1980年にマイケル・ポーターという米国の経営学者が提唱した戦略理論です。

別名『競争戦略』とも呼ばれ、ポーターは競合に勝つ戦略には、コストリーダーシップ、差別化、集中の「3パターンしかない」と

言っています。

さらにそれぞれには一貫した原理があるので、「複数を追うより一つを貫くべきだ」とも言っています。

では、それぞれを紹介しましょう。

 

競争戦略はコスト、差別化、集中の3パターンしかない!

さらに二兎を追う者は一兎をも得ず、必ず一つを貫くべし!

 

1 コスト・リーダーシップ戦略

 『コスト・リーダーシップ戦略』とは、低コストを強みにして、「価格の安さ」で勝負する戦略です。

コスト面で他社をリードできれば、たとえ競争が激しくなっても、自社の利益は守れます。

ただし、競争のポイントを価格に置いているので、技術の変化や新規の参入などの「環境変化には弱い」という欠点を持ちます。

 コスト・リーダーシップ戦略を遂行していくためには、次のようなことが必要です。

1.生産規模を拡大するために、設備投資の効率化を図る。

2.生産規模を拡大するために、作業の効率化を図る。

3.間接費コスト(固定費)の削減を図る。

4.ベテラン社員の「経験曲線」を活用し、作業効率化を図る。

5.技術力に独自性を持つ。

 チョッと、私たちには厳しいですね。

 

 さらに、組織に関しては次のようなことが必要だと言われています。

1.報告の回数を減らす、または単純化を図る。

2.本社や本部などの間接部門の少人数化を図る。

3.経費予算の管理を徹底する。

4.挑戦的なコスト削減目標を設定する。

5.在庫の削減を図る。

6.コスト削減に対する報奨制度を導入する。

7.特定分野に特化する。

 つまり、ひと昔前に話題となったカルロス・ゴーン流の、徹底したコスト削減、コストカットを行うということです。

 

多くの中小企業では、販売価格を下げざるを得ない状況にありますので、販売価格を下げる場合が多いわけですが、

しかしその裏側では、販売価格を下げられる「コスト削減の努力」をしなければなりません。

このことは大いに学ぶべき点だと思われます。

 

 一般的にはこのような裏側での努力なしに低価格路線に進むので
収益悪化が避けられなくなるわけです!

 

2 差別化戦略

 『差別化戦略』とは、他社と比較して、機能やサービスなどで「違い」を設ける戦略です。

確かに、製品・サービスの機能や内容、イメージなどで特徴を保てれば、相対的に価格維持ができて同質化も避けられます。

ただしそこだけに頼ってしまうと、極端な低価格攻勢や模倣された場合には、競争優位が保てなくなるという弱点があります。

 なお、「差別化」とは、次のようなことをいいます。

1.顧客が認知して、初めて差別化は成り立つ

  つまり、手前味噌で「いくら差別化できている!」と主張しても、顧客が認識していなくては意味がないということです。

  この「顧客の認知」は差別化戦略の絶対条件です。

2.差別化とは、顧客にとって「利用価値」が増加することである

  つまり、単に「他社とは違う」というだけでは、差別化にならないということです。

  あくまでも、顧客にとって「利用価値」が上がるということが、差別化には必要です。

 

 また、「差別化」にとって重要な要素は、次のとおりです。

1.特徴を持つ  →その製品やサービスに、見える特徴があるか!?

2.機能の連携性 →むやみに機能があるだけではなく、それぞれの機能に繋がりがあるか!?

3.タイミング  →季節や流行りなどとの時期は合っているか!?

4.ロケーション →ターゲットの立ち位置や地域の特性などと関連性はあるか!?

5.品揃え    →製品やサービスのラインナップに切れ目はないか!?

6.アライアンス →自社だけでトータル的なサービスができないなら、他社の力を借りよう!

7.評判、ブランド→評判がやがて「ブランド」へと成長させる!

 

差別化は単なる違いだけでは成り立たない、顧客認知と顧客価値が必要!

 

3 集中戦略

 『集中戦略』とは、特定の客層や特定の地域などに経営資源を集中させて、「狭い範疇」で1位を勝ち取る戦略です。

小規模な事業でも、特定の市場に経営資源を集中して優位を獲得できれば、その分野への新規参入を限定し、利益は守れます。

ただし、市場を限定しているので、全体的な大きなシェアは取れません。

 

 また、ターゲット市場の特異性が無くなると、全体で優位に立つ企業との競争に巻き込まれる危険性が常にあります。

その意味で、「集中戦略だけでは戦略は成り立たない」といわれ、コストリーダーシップ戦略や差別化戦略の中での集中戦略が

必要であるといわれています。

したがって、『コスト集中戦略』と『差別化集中戦略』があります。

 

地域一番店を目指す、これが集中戦略!

 

 

中小企業は「対象市場は狭くせざるを得ない」というのはもう昔の話。

現代はITCを活用すれば、広い市場に対してでも、中小企業がチャレンジすることは可能になっています。

資金的にもさまざまな融資制度や、それこそクラウドファンディングなどもあります。

ですからひと昔前みたいに、中小企業だからといって規制するものは少なくなっています。

規制しているのは私たち自身ということです。

しかしならがら経営規模は小さいので、低コスト路線は極力避けるべきと思われます。

とするならば、おのずと「差別化戦略」が基本となります。

そこでポイントは、お客様に対して「鮮明な特徴」を打ち出すということです。

つまり、あなたの会社のお客様は誰ですか? そこが競争優位の第一歩となります。

 

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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