480.主な戦略理論 ランチェスター戦略
2020年9月6日
「主な戦略理論」第5回目は『ランチェスター戦略』です。
ランチェスターの法則は、英国航空工学の研究者であったF.W.ランチェスターが第一次世界大戦のときに提唱した「空中戦の法則」
です。それを米国コロンビア大学の数学教授であったB.O.クープマンらが応用し、第二次世界大戦時に「戦争の法則」に発展させ
ました。
さらにそれを日本のコンサルタントである田岡信夫が、企業が営業あるいは販売競争に勝ち残るための理論としてまとめたものが、
この『ランチェスター戦略』です。
なお、このランチェスター戦略だけが、数多くある戦略理論の中で、唯一日本生まれの戦略理論です。
それはともかく、ランチェスター戦略は小さな企業でも厳しい企業間競争の中で勝つ残る戦略を提示しています。
今回はそんなランチェスター戦略を紹介します。
1 ランチェスター戦略が教える3つのこと
(1)経営資源が豊富な企業が絶対有利!
企業間競争においては、ヒト・モノ・カネ・情報の豊富な企業の方が断然有利となります。
だからこそ、小さな企業は、思い込みの打破や創意工夫、さらにはスピード感をもった経営が重要なわけです。
資源が少ない企業は局地戦・接近戦・一騎打ちを基本とせよ!
(2)強い企業とはシェア・ナンバーワン企業!
ランチェスター戦略では、強い企業とは「売上高ナンバーワン企業」ではなく、「占有率ナンバーワン企業」だと言っています。
地元・分野・客層などどんな小さな分野であれ占有率ナンバーワンを作れ!
(3)ナンバーワン以外の企業の基本戦略は差別化戦略!
差別化とは、狭い地域で顧客と接触し、競合店を絞り、これだけは負けないというものを作り、顧客の声で勝負することです。
市場戦略は局地戦、顧客戦略は接近戦、競合戦略は1対1の戦い、
戦略思考は1点集中主義、コミュニケーションは陽動作戦を取れ!
2 なぜ、シェア・ナンバーワンが重要なのか
日本の現在はいうまでもなく、「低成長・市場縮小の時代」に入っています。
したがって、中小・小規模企業は、小さな何かでナンバーワンというものがないと、存在価値を顧客に示すことができません。
ランチェスター戦略では、そのナンバーワンになるにことが原理原則であると言っています。
それが、再び今、ランチェスター戦略が注目され出している理由です。
3 差別化戦略とはどういうこと?
(1)局地戦とは
これはランチェスター差別化戦略「第1の戦略」といわれているのもです。
・広い地域ではなく、狭い地域で取りかかる。
・一度にやろうとするのではなく、一つずつ確実にやる。
そんなイメージです。
強者が手を出せない、”死角”や“ニッチ”を狙う戦略とも言い換えられます。
局地戦とは、限られた経営資源を集中して投下することである!
(2)接近戦とは
これはランチェスター差別化戦略「第2の戦略」といわれているものです。
・顧客の遠くにいるのではなく、近くにいるようにする。
・間接販売よりは直接販売を選択する。
・顧客は不特定多数よりは、継続性のあるひいき客や顔のわかる顧客に育成していく。
接近戦とはそんなイメージです。
顧客は個客であり、お客様という集団ではなく、一人一人なのです。
その一人一人のお客様と密に付き合う気持ちで接客することがポイントです。
顧客にとっては自分一人ひとりが顧客であり、個客なのです。
接近戦とは、顧客との親密性強化である!
(3)一騎打ちとは
これはランチェスター差別化戦略「第3の戦略」といわれているのものです。
一騎打ちとは、1対1の戦いに持っていくということです。
1対1とは、「どこの」、「だれに」、「なにを」を掘り下げていくことです。
・「どこ」とは、細分化した特定の地域
例えば、出店は半径1キロ以内で、同業者が1店しかない場所を選び、なるべく近い場所に出店する、などです。
・「だれ」とは、顧客を絞り込むこと
例えば、顧客内シェアの高い上得意先を大事にする営業活動をするなどです。
・「なに」とは、品数より品目を絞り込むこと
例えば、品数を多くすることよりも、バリエーション(ラインナップ)を増やすことを考えます。
つまり、深掘り・特徴を持つということです。
一騎打ちとは、規模の大小を消し去ることである!
(4)一点集中とは
一点集中とは、地域を絞る、顧客を絞る、商品を絞る、などのことです。
・「地域を絞る」とは、営業地域を30分以内の地域にするとか、広い場合には核となる顧客を中心点として
集中的にアポイントを取ることです。
・「顧客を絞る」とは、万人受けを狙わずに、一つの業種業態に特化する、ある客層に集中する、ということです。
・「商品を絞る」とは、売れている商品や流行の商品に絞ることです。
一点集中とは(逆説的にいえば)やらないことを決めることである!
(5)陽動作戦とは
陽動とは、「かく乱する」とか、「その気にさせる」ことをいいます。
顧客のプライドをくすぐるとか、口コミを活用するなどが考えられます。
陽動作戦とは、お客様をその気させることである!
ランチェスター戦略には「強者の戦略」と「弱者の戦略」がありますが、私たちが基本的に参考にすべき戦略は「弱者の戦略」です。
弱者の戦略の基本は「ニッチ(すき間)」と「差別化(違いの明確化)」です。
つまり「大企業ではできないことをやる!」、これがスモール企業にとっての命綱です。
大企業と同じことをやっても、勝てないことは容易に察しがつきます。
しかし現実には、私たちは大企業と同じことをやっていないでしょうか?
なぜなら、そのほうが ”安心” だからです。みんなが歩いている道を歩けば ”安心” という心理です。
しかし、それでは大企業には太刀打ちできません。
これまでの慣習や思い込みに囚われず、「常識という枠の外に出る!」そんなことが大切なのではないのでしょうか。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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