486.主な戦術論 戦術を如何に促進するか
2020年10月18日
ここまで次のようなことを紹介して来ました。
1.戦術の考え方は4つの要素である 商品・価格・流通経路・販売促進方法の4P は外せない。
※顧客の立場では 顧客価値・費用・便利さ・わかりやすさの4C となります。
2.顧客価値をあげるためには バリュー・プロポジション を見つけることが大事である。
3.そのバリュープロポジションは 戦略キャンパス によって明確する。
4.顧客価値を考えるヒントは 6つの経路 で見つけられる。
そして第5回目の戦術論のタイトルは「戦術をどのようにして促進させるのか」という実践段階のキモです。
『アンゾフモデル』では基本戦略は「市場浸透戦略だ」と言われていますが、実際にはなかなか浸透させ切れない
のではないのでしょうか。
今回はそんな課題に応える、大いにヒントとなるマーケティング理論です。
キャズム(Chasm)とは「割れ目」あるいは「溝」という意味です。
「導入期」ではうまく行った商品やサービスを、如何に「成長期」へ移行して市場浸透をさせていけばよいのか?
そこに立ちはだかるのが『キャムズ』と呼ばれる深い溝であり、それをどう乗り越えて行けば良いのかという
マーケティング理論が「キャムズ理論」です。
キャズム理論によれば「普及過程ごとにその攻め方は変わる」といいます。
自社の商品やサービスを市場浸透させるには大変興味深い理論ですので、知っておいて損はない考え方だと思います。
1 客層の5分類
キャムズ理論では、客層を次の5つに分類します。
(1)イノベーター:革新的採用者
イノベーターとはともかく新しいものをすぐ欲する好奇心旺盛な客層のことです。
新しいiphonやOSなどの販売開始日に朝早くから行列する人々の光景がよく報道されますが、そのような客層のことを
いいます。すぐ購入してくれるこの客層はおよそ「2.5パーセント」と言われます。
すぐ購入してくれる好奇心旺盛な客層は2.5%!
それをイノベーターという
(2)アーリー・アダプター:初期採用者
アーリー・アダプターとはイノベーターの様子や反応を見て判断し、購入を検討してくれる客層のことです。
つまり乗り遅れまいと積極的に検討してくれる客層のことです。
この客層はおよそ「13.5パーセント」いると言われます。
自発的に前向きに検討してくれる客層は13.5%!
それをアーリー・アダプターという
ここまでの16%が市場浸透のベースで、買ってくれて当たり前という客層です。
仮に自社の商品・サービスが顧客の16%程度も購入してくれないのであれば、それは商品・サービス自体をもう一度見直す必要が
あることを示しています。
(3)アーリーマジョリティー:初期多数派
アーリー・マジョリティーとは第2陣の利用者です。
つまり様子は見るけれど、比較的前向きに検討してくれる客層のことです。
この客層はおよそ「34パーセント」を占めると言われます。
しかしここに至るまでには『大きな溝(キャズム)』がありますので、それを乗り越えなければなりません。
以上ここまでが自社にとって比較的積極的な客層です。この3つを合わせると「50パーセント」となります。
肯定的に検討してくれる客層は34.0%!
それをアーリー・マジョリティーという
ここまでが「市場浸透戦略の対象」となります。大きなキャムズが存在しますが、それをどうやって乗り越えるが課題です。
これを乗り越えられれば大ヒット! ポイントは肯定的な姿勢を持っている客層なので、顧客の立場で考えることが大切です。
(4)レイト・マジョリティー:後期多数派
レイト・マジョリティーとは積極的に購入することはありませんが、周囲の状況や評価などを参考にして追随してくる
保守的な客層のことです。
発表当初はあまり興味を示しませんが、状況次第で検討します。
この客層も「34パーセント」いると言われます。
このレイト・マジョリティーとアーリー・マジョリティの間にも『キャズム』が存在すると言われます。
周囲を見て購入行動に移す客層は34.0%もある!
それをレイト・マジョリティーという
ここがメガヒットになるかどうかの分岐点です! ポイントは、小さな改善を積み重ね続けるということです。
(5)ラガード:採用遅滞者
最後の客層はラガードと呼ばれ世間の流行にはあまり関心がなくなかなか購入してくれない客層です。
この客層は「16パーセント」を占めると考えられています。
購入してくれば儲けものの客層は16.0%!
それをラガードという
2 普及促進の鍵は「アーリー・アダプターの克服」
この5つの客層の中で最も重要な客層は『13.5パーセントのアーリー・アダプター』です。
なぜならアーリー・アダプターは「普及の先導的役割」を担う客層だからです。
したがって多くの一般的な客層であるアーリー・マジョリティーとの橋渡しをしてくれるこのアーリー・アダプターを
掴むことが最も重要なこととなります。
市場浸透させるにはこのアーリー・アダプターからアーリー・マジョリティーへ移行させることが重要なのですが、
その間には大きくて深い溝『キャズム』があります。
商品やサービスが普及しない要因は、「この『キャズム』を乗り越えられないからだ」と言われており、
その原因は企業がアーリー・マジョリティーの特性を理解しないからだと指摘されています。
3 『キャズム』を乗り越える方法
ここからがポイントです。
この『キャムズ』を乗り越えるには、次の3点が重要です。
1.最初の実質的な客層である 13.5パーセントのアーリー・マジョリティー の実利的な評価に応える
ただし、ポイントはアーリー・マジョリティーを一塊のように捉えないことです。
一つ一つを相手に応える必要があります。
2.全力を1ヶ所に集中する
1ヶ所とはある特定のアーリー・マジョリティーに向けて完全な製品を作り上げることです。
そのためには
①小さくても早く手がかりを掴む
②特定のアーリー・マジョリティー市場を掴んだならそれを標準品として広く普及させる
この2つのことが大事です。
3.他のアーリー・マジョリティーを順次掴んでいくためにそのアーリー・マジョリティーに合わせて
カスタマイズを重ねていく
カスタマイズとは『付加価値』をつけていくことをいいます。
全体を対象として曖昧な付加価値では意味がありません。部分最適化の付加価値を付け続けることがポイントです。
今回のキャズム理論をまとめると、まず客層を絞り、そこに傾注して期待に応えられる商品やサービスを提供し、
それをもとに他の客層にも応えられる商品やサービスにカスタマイズを重ねて行くということです。
私たちはともすれば総花的に事業を進めがちです。
「貴社は一体どこに的を絞って商売をしているのですか?」と問われると答えに窮ずる場合がありませんか?
キャズム理論はそんな考え方を是正することを勧めているように思われます。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
-------------------------------------------------
インプルーブ研究所はITウェブサイト・マーケティング・経営会計で貴社の発展に尽力します。
ぜひ、一度お話いたしませんか? お問い合わせはお気軽に コチラ から
-------------------------------------------------