487.主な戦術論 如何に内部をまとめるか

2020年10月23日

多くの経営者の方々とお話をすると、何かが欠落していることを感じます。 それは内部の組織や組織風土のことです。

そこを触れないで、方針や新事業のことばかり語られる経営者が多いのですが、言うまでもなく、経営というものは一人で

行っているわけではありません。

経営者だけが納得して経営して行けば企業は動くかといえば、動かないことは多くの経営者が経験されてるとおりです。

また表面的に捉えて、従業員も納得していると思われている経営者も多いのですが、残念ながら従業員というものは経営者の前では

本当の姿は見せません。

特に中小企業はオーナー経営者である場合が多いので、経営者と従業員の間には大きな壁が立ちはだかっていると認識することから

始めるべきだと思います。 経営者がどう考えようが、従業員から見れば、経営者は「人事」と「給与」を握っています。

ですから、従業員が経営者によく思われたいと考えることはごく自然のことであり、誰も責めることはできません。

今回はそんなことに関するマーケティング理論を紹介します。それは『組織分析のためのフレームワーク7Sです。

この考え方は、組織改革を行う上で、とても役立つ考え方ですので、是非とも知っておきたいものです。

『組織分析フレームワーク7S(Seven“ S” Model)』とは、マッキンゼー社が開発した企業の組織フレームワークです。

組織を変えていくうえで重要な「7つの要素」を解説しており、それを『ハードのS』『ソフトのS』に分類しています

事業を進めていくうえで、どうしても組織を変えなければときが、どの企業にもあります。

「組織は戦略に従う」といいますが、しかしその組織を変えることには大変難しさが伴います。

困難な組織変更事項と安易な組織変更事項をあらかじめ知って組織変革に取り掛かるのと、ただやみくも取り掛かるのでは

大きな違いがあります。 あまり難しく、また大層に捉えず、その考え方を理解してください。

 

1 組織分析のフレームワーク Seven”S”Model とは

会社の組織は、次の7つの項目から成っているといいます。

1.共通の価値観や理念(Shared values)

1つめのSは、Shared Values 共有価値です。

共通価値とは、企業理念のことを指しますが、多くの場合は、長年事業が続くと自然と育まれてくる、オーナー経営者が持っている

「無意識の価値観」のことです。

特に、技術系や製造系の企業には培われることが多いといわれますが、現実的には多くのオーナー中小企業で見られます。

簡単にいえば「俺がルールだ!」ということです。

例えば、製造企業であれば「ただ言われる通りに作ればいい」とか、輸送企業であれば「安全運転さえしていればいい」という

暗黙の価値観です。

競争に勝てる組織にするためには、「ただ言われる通りに作ればいい」という、オーナーだけに目を向けた一方的で、身勝手な

製品志向の考え方ではなく、市場志向や顧客志向の価値観や理念を持つ必要があります。

過去、多くの企業が「オーナー志向の製品志向」だけの価値観を持ってしまっているために失敗している!

 

(2)経営スタイルや組織風土(Style)

2つめのSは、Style 様式・型です。

つまり、経営スタイルや組織風土のことですが、知らず知らずのうちに縛られている『暗黙知』ことをいいます。

「出る杭は打たれる」という組織では、いまや競争に勝つ残ることは難しくなっています。

このような傾向はオーナー中小企業に非常に多いわけですが、あまりにもオーナーの成功体験が強烈過ぎると、言いたいことも

言えず、物事を言うこと自体が逆らっているように受け取られるのではないかと従業員は思いますので、結果的にオーナーの器以上

に企業は伸びなくなります。さらにオーナーが「私の会社は自由にものがいえる風通しのよい組織だ」と思い込んでいる場合には、

問題をさらに難しくしています。

社員というのは、雇用者であるオーナーに対しては必ず”遠慮”というものがあるということを知ることが重要です。

そのうえで競争に勝てる組織にするためには、常にこれまでのことを「良し」とはしない批判的な思考、クリティカルシンキングが

大事です

現代でも多くの企業がこのような失敗を繰り返しています、健全な批判精神が重要!

 

(3)人材(Staff)

3つめのSは、Staff 人材・従業員です。

人材は基本的には社内の中にしかいません。だから人材育成が大切だと言われているわけです。

たとえヘッドハンティングをしても、その人材を活かすことは至難の業です。

では、それは何故なのでしょうか? その理由は至ってシンプルです。

それは、その人材がそれまでいた企業と、ヘッドハンティングされた現在の企業とでは、人材や組織風土が違うからです。

だから以前の手法である成功体験をもって、ヘッドハンティングされた人材が変革しようとしても、今度の会社では人はついて

来ません。誰だって、「前の会社ではこうだった」と言われても、素直に聞く気にはなれないものです。

だから、競争に勝てる組織にするためには、自前で人材を育成することが大切なのです。

なのに、多くの企業では人材育成なんか自社ではできないと思い込んでいる企業が数多くある!

 

(4)能力(Skills)

4つめのSは、Skill 技能・手腕・能力です。

ヒトの技能や能力、たとえば営業力であったり、技術力であったり、マーケティング力などは、一朝一夕には変わりません。

たとえ新しい手法や他社で成功した手法を導入したところで、その事例と自社では、すべての条件が違いますから成功しません。

したがって、競争に勝てる組織にするためには他社の事例に学ぶことは大切であっても、自社なりにカスタマイズした手法に直して

継続させることが大切です。それを「進化」といいます。

競争に勝てる組織にするためには担雪埋井、他社に学ぶとしても自社なりの手法で継続させることが大切!

 

(5)社内の仕組み(Systems)

5つめのSは、Systems 仕組みです。

社内の仕組みのひとつである、社内システムを変更することはカンタンです。

たとえば、評価システムや会計制度などは、入れ替えてしまえば何とかなるものです。

しかし、人が絡むシステム(報告などの情報の流れ)になると、変更することは容易ではありません。

最近では、RPA(Robotic Process Automation)の導入も増えていますが、なかなかそう簡単に行かないことが実例です。

何故でしょうか?

それは、社内の仕組みの多くがヒトが絡まって、成り立っているからです。このことをよく理解しておくすべきだです。

社内の仕組みを変えるには、内部統制などヒトの行動を担保する仕組みを同時に考える必要がある!

 

(6)組織構造(Structure)

6つめのSは、Structure 構造や体制です。

組織構造とは、組織体系などの変更のことを指しますが、変更さえすればなんとか機能しますので、比較的しやすいといえます。

ただ、指揮命令系統と責任の所在を明確にすることが、競争に勝てる組織にするためには好ましいと思われます。

組織構造は「ボスは一人」と「責任と権限」とのセットがポイント!

 

(7)戦略(Strategy)

7つめのSは、Strategy 戦略・作戦です。

戦略とは、会社が社会の中での競争に勝っていくための方策です。

戦略を立案することは難しいともいえますが、決定さえすれば、比較的周知徹底することはたやすいと思われます。

しかし、その絞り込みと実行は大変難しいものがあります。

そのためには、オーナー経営者の「真剣さ」と「本気度」が重要です。

戦略は総花的ではなく、経営者の選択と集中の意思決定と真にやり遂げるという強い決意が重要!

 

 

2 ハードの「S」とソフトの「S」

さて、7つのフレームワークには、モノとヒトで分類することができます。

モノのフレームワークは『ハードのS』といい、「戦略」「組織構造」「社内の仕組み」の3つのフレームワークをいいます。

一方、ヒトのフレームワークは『ソフトのS』といい、「共通の価値観や理念」「経営スタイルや組織風土」「人材」「能力」の

4つのフレームワークをいいます。

重要なことは、モノのフレームワークである『ハードのS』は努力によって比較的短期間に変えていくことができますが、

ヒトのフレームワークである『ソフトのS』はそうはいかないということです。

モノの仕組みは簡単に変えられても、ヒトが関わる仕組みを変えるのは難しい!

そこで、次のことを押さえておくと、比較的組織改善はうまく行くといわれています。

 

 

3 7Sのポイント

(1)共通の価値観や理念 Shared values (ソフトのS)

   製品や価格中心から、市場や顧客中心に考え方をシフトさせる。

(2)経営スタイルや組織風土 Style    (ソフトのS)

   社内事情より、顧客を起点とした行動規範に変更する。

(3)人材 Staff (ソフトのS)

   ただ売るだけの人材から、継続的に売れる人材を育成する。

(4)能力 Skills             (ソフトのS)

   コスト管理能力から、マーケティング能力の開発を重視する。

(5)社内の仕組み Systems       (ハードのS)

   管理・年功序列から、権限委譲と自ら考えることができる人材を評価するように変更する。

(6)組織構造 Structure         (ハードのS)

   縦割り組織から、顧客横断型組織へ組織を変更させる。

(7)戦略 Strategy           (ハードのS)

   製品志向から、市場志向やマーケティング志向に切り替える。

 

戦略とは、競争優位を常に保つための方策です。その戦略に、組織を最適化させる必要があります。

「こんなことうちの会社では」と自己限定されずに、一度、大会社の社長にでもなった気分で、この組織分析フレームワーク7S

自社を考えられたら、いかがでしょうか。 いまは変革が求められている時です。

優れた企業は、これら7つの要素を互いに補完させ合い、強め合いながら戦略を実行しています。

私たちも怯まずに、そんな意識を持って、戦略を遂行し始めましょう。

時代の進展とともに社会は複雑化しており、中小企業経営にもこれからはマーケティング思考をもって挑むことが大切です。

ぜひ、自分なりにマーケティング思考を経営に活かすという覚悟と意欲が大切だと思います。

常に経営革新し、永続的に続く企業経営を目指したいものです。

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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