498.会計の読み方 短期・長期借入金
2021年1月16日
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新型コロナ感染拡大、第2回目の緊急事態宣言と、経営環境の変化は大きく、そして厳しくなっています。
そんなときに必要になるのが、経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら経営の舵取りをすることです。
実務的な会計の読み方を習得しましょう。
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『借入金』とは、一般的には「融資」と呼ばれる銀行借入金のことです。
事業には常に事業資金が必要ですが、いつも自己資本だけでまかなえればよいのですが、現実的にはそうもいきません。
そのようなとき銀行借入をするわけですが、そんな借入金を有効にかつ安全に活用したいものです。
今回はそんな『借入金』について、実務的な読み方をお送りします。
第9回 短期・長期借入金の読み方
負債の中でも重要な資金の調達の一つが「借入金」です。
賞与支給や納税などで運転資金が足りないとき、設備投資を自己資金だけでできないときなど、大変重宝する資金調達の一つです。
しかし、借入金は長期間に渡って、元金と金利を毎月返済しなければなりませんので、その管理は経営において大変重要です。
また借入金は、大企業などが増資等で直接、市場から資金調達を行う「直接金融」に対して、「間接金融」と呼ばれます。
1.管理すべき借入金の種類
まず、管理すべき『借入金』の種類について理解しましょう。
借入金は一般的には金融機関からの融資ですが、会計では「ワン・イヤー・ルール」に則って、『短期借入金』と『長期借入金』に
分けて、管理するようになっています。
この「短期」「長期」という言葉は、一般的に使用する短期・長期という意味だけではなく、企業経営のマネジメントに資するため
に、次のように、返済期間で厳格に分けるようにルール化されています。
1.返済期間が1年以内であれば「短期借入金」に区分する
2.返済期間が1年超であれば「長期借入金」に区分する
したがって賞与支給や納税目的などの場合を除いて、借入金のほとんどは『長期借入金』に区分されることになるかと思います。
しかし、長期借入金であっても、必ず1年以内に返済する部分が含まれています。
最近では経営マネジメントに資する観点から、長期借入金のうち1年以内に返済する部分を『1年以内返済長期借入金』に区分け
するようにルール化されています。
*自社の試算表を見られて、長期借入金はあるのに1年以内返済長期借入金がない場合は、依頼している会計事務所に
問題があるかもわかりません。
借入金には『短期借入金』と『長期借入金』、それに『1年以内返済長期借入金』の3種類がある!
2 借入金の運用目的
上記の説明で、『借入金』には3種類あることはわかりましたが、ではそれぞれに標準的な運用目的の違いはあるのでしょうか?
それは、次の表示区分がヒントになります。
仮に、短期借入金が900万円、長期借入金が2000万円(うち1年以内返済分が400万円)だとすると、
次のように表示されています。
短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円+長期借入金1600万円=借入金総額2900万円
流動負債表示 短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円=1300万円
固定負債表示 長期借入金1600万円=1600万円
つまり、「ワン・イヤー・ルール」に則って、流動負債と固定負債に分けられて表示されています。
そうすると、『流動負債』は返済期間が短い他人資本なのですから、『短期借入金』は資金化が早い流動資産で運用することが
基本と考えるべきだということがわかります。
間違っても、短期借入金を固定資産に運用することがないようにマネジメントしなければならないということです。
一方、『長期借入金』は『固定負債』なのですから、設備投資に運用してもよいことになります。
しかし、それにも限度というものがありますので、要注意です。
つまり、限度を超えない範囲で、無理な設備投資とならないようにマネジメントしなければなりません。
短期借入は流動資産で、長期借入は固定資産で運用することが基本だ!
さて、そんな『借入金』ですが、それをどのように読めばよいのでしょうか。
読むといっても「いま借入が2900万円ある」とか、「昨年よりは減った・増えた」では読んだことになりません。
ただ計算しただけに過ぎません。
では、どのように読めばよいのでしょうか?
それは、多角的に『借入金』を比較することです。多角的に比較して会社の借入状況を読み、経営的な判断をすることです。
借入金を読むとは多角的に比較し、その運用の仕方・残高の良し悪しを判断することです!
では、どんなものと比較して、読めばよいのでしょうか?
3.借入総額の適正をチェックする
自社の借入金総額の適正度をチェックする尺度は、何だと思いますか?
それは、資金の源泉、大元であるは『売上高』です。この資金源泉の量と借入の量を比較すれば、適正度がわかりそうです。
借入金総額2900万円÷平均月商800万円=借入金月商倍率3.63カ月分
借入金が平均月商の「3.63カ月分ある」とはどういうことなのでしょうか?
たとえば、理想的な経常利益率が10%とします。
そして、その半分は納税と内部留保へ回すと考えれば「借入金返済に最大、毎月の売上高の5%を回せる」ということになります。
3.63カ月をこの5%で返済し続けると、(363÷5=)72.6カ月、約6年間、返済にかかると計算できます。
現在の長期借入金の最長返済期間は7年程度ですから、その枠内に入っています。
したがって、「なんとか適正の範疇内にある」と判断できます。
これまでは、3カ月分から4カ月分程度が「適正」と言われてきましたが、現在はコロナ禍で返済期限が伸びていますので、
12カ月程度でも適正と考えられます。
借入総額と平均月商を比べれば、借入総額の適正度が判断できる!
4.借入総額の返済期間を試算する
次に、自社の現状で、一体どのくらいで借入金は返済できるのかを考えてみましょう。
借入金の返済原資は何ですか?(考えてください・・)
それは「営業利益」です。 なぜなら、借入金返済は利益からするからです。
しかし、営業利益には「減価償却費」が差し引かれていますので、それを戻して返済原資を考えます。
理由は、減価償却費は現預金支出を伴わないからです。
したがって、最大の自社の返済原資は「営業利益+減価償却費」となります。
営業利益480万円+減価償却費100万円=償却前営業利益580万円
*営業利益ではなく、経常利益でもよいのですが、経常利益は支払利息を差引いていますので、正しくは営業利益となります。
それを極論ですが、「全額借入金返済に充てる」と考えるとどうなりますか?
借入金総額2900万円÷償却前営業利益580万円=債務償還年数5.0年
これは極論の試算ですが、「1年間の儲けた利益をすべて返済に充当する」と考えると、5年間で完済できることになります。
しかし実際は「1年間に儲けた利益の半分を充当する」と考えると、10年間となります。
現在、金融機関では極論の試算で債務償還年数を見てくれていますので、5年間であればまだ、借入の枠はあると判定されます。
しかしこれが10年を超えてしまうと、10年先はもう企業存続自体が不透明ですので、追加融資は厳しくなります。
現在はコロナ禍のため、その判断基準は緩んでいるように思われますが、しかし企業の健全性・安全性から考えれば、
債務償還年数は5年程度がMAXとして判断したほうが良いと思います。
5.借入金を改善する方法
最後に借り入れ状況を改善する方法について簡単に触れましょう。
(1)経営の黒字化、黒字化の拡大
やはり、ここでも経営の「黒字経営化」、あるいは「黒字幅の拡大」が最良の改善策となります。
黒字経営を続けていれば、そもそも借入をすることも少なくなり、また仮にしたとしても額が小さくなります。
そうすると、『月商倍率』や『債務償還年数』なども当然のことながら低くなります。
但し、同じ黒字経営でも、「適正な黒字経営」がこれからは大きな課題となってきます。
「適正な黒字経営」とは、従業員の人件費もしっかり上げて、それでもきちんとした営業利益率を確保するということです。
(2)リスケジュール
略して「リスケ」と呼ばれますが、現在の返済状況を改善(楽に)するには、金融機関に相談して、返済期間を延ばすことが
有効です。
6.まとめ
以上をまとめますと、次のようなイメージとなります。
ぜひ、借入金をコントロールし、経営の安全性を高めるとともに、荒波に強い経営をしましょう。
これまでも何度か申しあげてきましたが、会計は決算や税務申告のためだけにしている「事務」では、決してありません。
むしろ、会計は会社経営の判断をするために日々行っている「経営管理、マネージメント業務」なのです。
いまほど、経営者の『経営手腕』が問われているときはありません。
会計とそしてマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を目指しましょう。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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